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騎士と魔女の誓約  作者: 泉伊織
学院の殺人鬼
17/20

剣の輝き

現れたのは、ここまで追いかけてきたドレイクだった。


「ほう。

あの数のガローを全て倒したのか、しかも学生の身分で、あのべへモードまでとは。

お見事だ」

「あんたのような犯罪者に褒められても嬉しくはないな」

「ハハハハハ。面白いやつだな全く」


ドレイクは何が面白いのか笑った。


「そういえば、逃げっていった他の五人はどうしたんだ?」

「そこらにウジャウジャいる害獣に食われて死にました。

確かに、彼らのことは殆ど知らなかった。

顔見知り程度の関係で、あったとしても、少し会話したくらいだった。

それでも、あんなふうに無惨に死ぬ必要はなかったはずだ」

「その割には、あまり心に響いてなさそうに見える」

「同情はしても悲しみはしません」

「ふん。実力に精神、どちらも一介の生徒の枠を超えているな」


言いながら、ジェイドの亡骸のそばにあった剣を拾い構える。

それで、俺とドレイクの会話は終わる。

俺も剣を構えーー


「ーーハッ!」


気合いと共にドレイクとの距離を詰め、斬り込む。

しかし、それをドレイクは悠々と受け止め、鍔迫り合いになる。

お互い相手を後退させようと刃を通して、力と力をぶつけ合う。

俺は精一杯の力を込めるも、なかなかドレイクを引き下がらせる事ができなかった。

むしろ俺の方が負けていた。

俺は一度立て直すために、一歩二歩と後退し、ドレイクから若干距離をとり、間を空ける。

そして、力を込めて袈裟斬りで斬り込む。


「ハァア!!」

「フン!」


ドレイクは気迫を込めて、剣で遮る。

そこからは剣の打ち合いが起こる。

キンッ、キンッ、キンッ、キンッ、キンッ、キンッ、キンッと、刃と刃、鉄と鉄が撃ちあう音が森に響く。

魔術だけでなく剣も扱えるドレイクは強い。

魔術師は魔術という性質故に、研究者よりの人間が多い。

そのため、魔術は扱えても、肉弾戦はからっきしという魔術師が殆どだ。

しかし、目の前にいるドレイク・フーシェという男は、肉体を鍛える事も怠っていなかった。

だから、強い。


「ーーー」


ドレイクは小声で何か呟く。

聞き取る事は出来なかったが、魔力の気配を感じた俺は即座にドレイクから距離をとった。

その判断は間違っていなかった。

先程まで俺がいた所に、不可視の弾丸が当てられクレーターが出来上がっていた。


「危ない」


呟きながら横合いから突然出現したガローを二分割し、剣先で串刺しにする。

そして、それをドレイクに投げる。

ドレイクが注意を引いている間に、俺は木々に潜み込む。


「現状の俺とドレイクの力量差は、大きく開いている。ちょっとしたことじゃ覆らない」


言いながら迫ってくる三頭のガローを脳天から肛門一閃する。


「それに加えて、こっちには眷獣避けの魔鉱石がない。

明らかに不利だ」


猿のような姿形をした眷獣が視界に立ち塞がる。

俺はそれを上半身と下半身に真っ二つに切り捨てる。


「ならば、圧倒的な力でねじ伏せる」


この状況なら、リミッターを外してもアイリスは怒らないはずだ。

絶対………多分……おそらく……大丈夫。

俺は自分の中で、結論づけるとーー


「『ソルブ』」


発する。

すると、身体の奥底に蓋をしていた魔力が一気に溢れ出す。

筋肉、内臓、手足に流れ、眼球、耳、鼻、舌、皮膚へと冴え渡り、脳と心臓を満たす。

全ての能力が格段に上昇したのを明確に理解する。

今なら空さえも飛べそうだ。

以前に戻っただけなのに、この万能感。


「魔とは素晴らしいな」


ちょっとした薬物を摂取した気になる程の快楽状態で走り出す。


「うわっと」


思わずスピードが出てしまい、軽く驚く。

これが本来のスピードなのだが、数週間、だいぶ制限をかけていた為、制限をかけた方に慣れてしまい、その落差から調整が効かない。

何度か、木に激突しそうになったが、それも数分で慣れる。


「ーーー」


ドレイクの背後に回り込み、左から首一直線に斬りつける。

先程までならば、余裕で止められていたであろう一撃だが、制限をかけていた時と外した時とのスピードの緩急についていけず、ドレイクは対応が遅れる。


「グッウ」


首の薄皮一枚で止められる。

すぐさま俺は回転し右側から、またもや斬りつける。


「うぐうう。

いきなり、なんだこの力は!どこから湧き出てくる!

お前は本当にアイト・フローラルハートかァア!」


ドレイクが驚いて、ぐちゃぐちゃ言っていたが無視する。

これも首の薄皮一枚で受け止められ拮抗する。


「ハアアアア!!」


さらに力を込めて一気に振り切る。

ドレイクは踏ん張りきれずに、百メートルほど吹っ飛ばされ、木に激突する。


「ここだッ!」


チャンスが来た。

ドレイクを倒すなら、ここで潰す。

俺は魔力を足に巡らせ走り出す。

初速で最速を叩き出し、ドレイクの前まで三秒で着く。


「なっ!?」


遠くで立っていた俺が、一瞬で目の前に現れ、困惑して目を見開く。

俺は剣を振り上げ、背中にある魔術痕に魔力を流す。

魔術痕は輝きだし、白熱する。

そしてーー


「『”これは只人の一振り__

しかし、幾星霜の時の果て__

太陽を割り月を斬り星を断つ一閃へと至る__

天体一閃(クインタス・アストロ) “』


魔術痕にある魔術を発動させる為に唱える。

刀身が星々のように煌めき、振り下ろす。

刀身はドレイクに掠る事はなかったが、しかしドレイクを中心に光の柱が宇宙を突くほどに立ち上る。

それは一分ほど続き、柱が消えた頃にはドレイクは跡形もなく消えていた。


「汚ったね」


ドレイクがいたところは炭だけが残った。

俺は炭を踏み潰し走った。

………………。

………………………………。

………………………………………………。

来た時は数時間かかった道もリミッターを外した状態ならば、数分で森を抜け平原に出た。

そして、平原の中心でポツンと立つ人間を見つけた。

とりあえず、速度を落として近づいてみる。

朧げだった人間の輪郭が、徐々に浮かび上がり認識する。


「グレイス」


その人物の名前を口にする。

グレイスは全身を真っ赤に染めて、空を見上げていたが名前を言うと、首がぐりんと曲がりギロリと見られる。


「他の人は?」


当然、疑問に思うだろう。

逃げ遅れた人たちを助ける為に残ったのに、その俺が一人で戻ってきたのだ。


「そう、あなたも………みんな死んだのね」


しかし、自ずと理解した。

そして、俺もグレイスが小さく呟いたことで気がついた。

全身を染め上げる真紅は、返り血だけではなく、死に行くクラスメイトたちの鮮血も含まれていたのだ。


「………………そう、か」


沈黙が二人の間を支配する。

しかし、グレイスが破り提案する。


「ここで、ウジウジ感傷に浸ってても意味はないわ。先を急ぎましょ」

「ああ」


正論に頷くき、俺たちは眷獣が追い付かれないように走った。

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