第8話「じゃあ、大丈夫だな」
「村の仕事?」
「うん。どんなのがあんの?」
鶏一羽を丸々使った幾つもの料理を食べながらリイダ達はメオナに今後の方針を相談していた。
「しばらく村長の家に泊めてもらえる事になったんだけど、その間何もせずだらだらしてるのもあれだし。特に珍しいものもないから仕事でも、と」
「まあ確かに…」
リイダのスパッとした言い方にメオナは苦笑を漏らした。
ヨーレヨ村は数十人程が住む小さな村。
村長の家を中心にその周りを掘っ立て小屋があちらこちらに並んでいて、後は畑が村の大半を占領してるだけで他に本当に何も無い。
「そこがのんびりしてて良いと思うんだけどねぇ」
「我ら、歩みを止められぬ若人である」
「むぐっのんびりよりもお、もぐっハキハキとお!!うぐぐぐっこの手羽噛みきれねえぇぇ」
「食うか喋るかどっちかにしろ‥‥」
「…がぶっがぶっがぶっがぶっがぶっ」
「それ口で言ってない?」
「それじゃ、食べ終わったら畑仕事をしてみよっか。他に仕事らしい仕事も無いし」
リイダ達は早々に朝食を食べ終えると、メオナに案内されて小屋の裏手にある畑に向かった。
「これ、私の畑」
「「「「デェェェェェッカッ!!!!」」」」
メオナの持つ畑は約200m×300m位の大きさのものが八面ほど。そこでたくさんの野菜を綺麗に種類別に栽培していた。
中にはもう収穫出来そうな野菜を実らせた畑が幾つか有り、まだ芽も出てない二面には、蔓を幾重にも巻きつけた2~3メートルの蕾が一つずつ中央付近に鎮座している。
とてもメオナ一人で耕せる規模には見えなかった。
「割りと出来るものよ。ここら辺の土地は栄養が充実してて、種を植えてたまに水を撒くだけでもスクスクと成長していくし。もちろん毎日世話した方が美味しくなるけど」
そう言うとメオナは目の前に実っていたトマトをもぎ取った。
実は綺麗な赤に染まり、瑞々しい張りがある。
「朝食べたサラダに入ってたのか。どうりで美味しい訳だ」
「採れたて新鮮だぁ~なぁ~!」
「仕事って収穫の手伝いで良いのか?」
「そうね。ここのは赤く熟しているのだけ採っていって。あっちの畑は葉の隅々まで見て、虫がくっついてたら取って最後に水を撒いてくれる?」
「よし!トマトは任せろ!」
「んじゃ、虫は俺が」
メオナの指示に従い、リイダはトマトの収穫。サブは虫の除去作業を開始した。
「あれ?あとの二人は……?」
「ねーねー!これ何ー!?」
「…かかし?」
パワードとコウテツは端の方にある畑の大きな蕾に近づき、それに絡みついた蔦をペシペシと手で叩いていた。
「あ、それ危なーー」
「ギシャアアアアアアアアアアア!!」
「「ぎゃあああああああああああああ!!?」」
蕾は突然唸り声を上げて動き出すとパワードを蔦でグルグル巻きにし、コウテツを蕾を開いて出した大きな口で、頭から丸飲みにした。
その様子を他の三人は呆然として見ていた。
「あ~あ…」
「……あれは?」
「植物の魔物でタンクプラントって言うの。畑の土は使い続けていくと栄養が少なくなって野菜が育たなくなるから、少しの栄養で成長して数十倍の養分を生み出すあれを一つ植えて、枯れたら肥やしにしてるの」
「へぇ~、強いの?」
「村の人二、三人で倒せるけど…」
「じゃあ、大丈夫だな」
リイダとサブは焦った様子も無く、それぞれの手伝いに戻っていった。
メオナはまだ不安げな表情でリイダに聞く。
「あれほっといて良いの?」
パワードは蔦で簀巻きにされた状態で空中に振り回されており、コウテツは既に膝下まで飲み込まれていた。
「大丈夫、大丈夫。コウテツはあれくらいじゃびくともしないし。パワードが力ずくで何とかするさ」
そう答えたリイダは熟したトマトを一つ一つ丁寧に取り、メオナから借りた草かごに入れていった。
「そっか…。わかった」
メオナはその言葉を信じたのか、気持ちを切り替え畑の世話の準備を始める。
一応、パワード達の方にも声を掛けておいた。
「それ片付けたら私に声かけてねーー!」
「わかったあああああぁああああああああああぁミイイイイィィィーーヘェェルプゥゥゥッ!!!!」
ーーヘェェルプゥゥゥッーー
ーールプゥゥッー
パワードの悲鳴がこだました。