第15話「テッつあんミサァ~~イルッ!!と見せかけて、サーーブインパクトオオオオオオオオォッ!!!!」
そこは樹海の中にしては木々が開け、地面が乾燥してるのか所々荒れた岩場ような地形になっていた。
その中央に建っている小屋は、周辺にあった木を切り出して頑丈そうな紐で繋ぎ合わせたのか手作り感丸出しで、あちこちデコボコしていた。
申し訳程度についた木窓も無理やりはめ込んだのか、ひび割れがある。
その小屋の玄関口には、見張り役に見える盗賊らしき男が数人たむろしていた。
「ダウトオオオオオオオオッ!!それダウトオオオオオオオウオオオッッ!!!!」
「かかったなあ!!フルハーーウスッ!!!」
「チキショーーーッ!おれのメロンちゃんがああああぁ!!?」
男達は周囲の警戒そっちのけで、カードゲームに興じている。
足元にある切り株をテーブル代わりに囲んで、それぞれが自分の手札を出し合っては勝った負けたと騒いでいた。
暫くして、森の散策に出掛けていた盗賊三人組が早足で戻ってきた。
三人の表情はどれも何かに怯えたようにこわばり、憔悴している。
「うおおぉぉ……やっと着いたぁ~…」
「やっべえぇぇ~…べらやっべえぇぇ~」
「ふぅ~~。戻ったぜぇ~っ!」
「おーう、早かったなぁ。収穫はどうだぁ?」
「…ああ、バッチリだぜぇ~…。今回もたんまり奪ってやったぜぇ。……はぁ」
「そのわりには元気ねぇなあ?どおした?」
「今日は妙に森が騒がしかったのよぉ…。お陰でずっとびびりっぱなしだぜぇ…」
「俺はびびって無かったけどなぁ~!」
「お前、足まだ震えてるぜぇ~」
盗賊三人組は見張り役の男達と暫く話した後、そそくさと小屋の中に入っていった。
「あそこがアジトか……。サブ、人数分かるか?」
「小ぢんまりしてるなぁー」
「今調べる」
盗賊の小屋から300m程少し離れた古木の頂上付近。リイダ達一行は枝葉の中に体を縮こませて身を潜め、盗賊達の様子を伺っていた。
サブは魔法眼【索的網眼】と、【力量計眼】を順に発動して盗賊達の様子を探り、リイダ達に伝えた。
「人数は13、レベルはだいたい100前後。全員体力型だな」
「…少し多いな。無策で突っ込んだら足元すくわれる可能性もある…。さてどうしたものか」
リイダは対人戦を前に盗賊達の人数と不確定の知能を警戒し、今までの無鉄砲な突撃を控え、なにか有用な作戦を練る事にした。
その途中、暇だったので枝に足をかけ逆さまの格好で小屋を眺めていたパワードが、作戦をふと思いつきぐるんと上体を起こしながらぽんと手を打った。
「ヨシ、わかった!テッつあんを投げ込もう!それで慌てて集まった隙に後ろから叩く!!どやっ!?」
「‥応よ!」
「いやあかんわっ!?」
パワードの提案と視線にコウテツは賛同するよう頷く。だがそれに対しサブは待ったをかけた。
「いくらなんでも無茶すぎんだろ!敵がそんな簡単に集まるとも思わんし、だいたいコウテツは戦闘力低いんだから多人数戦なんて絶対むーー」
「それでいこう!」
「ーーりいいのぉおっ!!?」
サブの待ったに割り込むようにリイダも賛成の意思を示し、枝の上で立ち上がった。
「テツなら大抵の危機は大丈夫だ。サブ、盗賊達が多く固まってる所を教えてくれ。パワード、その中心を狙え。いけるか?」
「任せな。どストレートを決めてやるぜ!」
「…ったく。どうなっても知らんぞ」
サブが改めて魔法眼で盗賊達の位置を確認し、パワードに正確な位置を伝えた。
パワードとコウテツは後方にあった足場が頑丈で、投げ飛ばしやすそうな太い枝に移動。パワードはその場所で片足を軸に踏ん張り、コウテツを両腕で抱え込むとぐるぐると回転を始める。
「行っくぞぉ~~~~っ!!」
「‥おれの屍を越えて行け!」
「「いや、死ぬなよ?」」
遠心力の力をどんどんと高めていき、靴底と枝木の接着面から煙が上がり始めた瞬間、狙いを定めて一気に振りかぶった。
「テッつあんミサァ~~イルッ!!と見せかけて、サーブインパクトオオオオオオオオォッ!!!!」
投げ飛ばされたコウテツは天高く上空へと舞い上がり豆粒となって消え、背後が隙だらけだったサブをパワードが勢いよく蹴り飛ばし小屋の方に吹っ飛ばした。
「‥行ってきま~~~ーーーー」
「ふざけんなああああぁぁぁぁぁぁーーーー」
ーードガシャアアアアアアアァァンッ!!!
「ぎゃああああ~っ!!?敵襲!?敵襲っ!!?敵襲ーーー!!!」「くせ者じゃあーー!!出会え出会えーーっ!!」「フゥーーッ!俺のソーセージが火を吹くぜぇ!フゥーーッ!」「イヤァ~~ンッ!」「…………っ!?」
「?おい、今なにか小屋に突っ込んでったぞ?」
「知るかっ!そんなことよりもうひと勝負だ!!」
「メロンちゃんの仇は必ずとる!このリンゴちゃんでなぁっ!!」
外にいた見張り役達は、小屋の以上事態総スルーでカードゲームの続きに戻った。
「……ねえ君達、チームワークって知ってる?」
サブが突撃した小屋の喧騒を静かに見守っていたメオナが、リイダとパワードに目を向けそっと問いただした。
「「チームワーク??なにそれ?」」
「…………そっか。……うん、まあ、いっか」
メオナは深く考えるのを止め、コウテツが散っていった空へと目線を移し、雲一つ無い青空をぼんやりと眺める事にした。
暫くして空に散ったコウテツが、悲鳴を上げる事も無くゆっくりと落ちてくる姿が視界に映った。