6. デートの報告
日曜日になり、二階堂さんとの初デートに行って来た。
お父さん以外の年上の男の人と二人きりで会うなんていままでなかったことなので緊張したが、同年代の男子にはない気配りを感じ、すっかり気分は舞い上がっていた。
家に到着し自分の部屋に帰ってくると、この嬉しさを話したくてベッドに腰掛けながら電話をかけた。
「もしもし、修平~」
『莉子か、はぁ、なんだよ』
電話口から聞こえる修平の声は低く、少し不機嫌そうだった。これは、先に向こうの話を聞いたほうがよさそうだろうか。
「千明とのデートはどうだったかと思ってさ。その調子だとなんかまずったの?」
『いや、お前にもらった映画のチケットで二人で見たところまでは良かったんだよ。ただ、そのあとで行った喫茶店でさ』
「おー、わたしが勧めたところいったんだ。千明もスイーツは好きなはずだけど、なにかまずかった?」
『あー、やっぱり気づいてなかったか。オレたちが行ったとき、おまえたちもいたんだよ』
「えっ、そうだったの。もしかして……、見た?」
『見た見た。一緒にいたやつ誰だよ? 千明もすごい気にしててさ』
まさか、同じ時間帯に店に来るとは思わなかった。二階堂さんがオススメの店があるといって連れていってくれたのだけど、かぶっちゃったか。
「えっとね、友達というか……、その、か、彼氏です」
『マジで!? 年上みたいだけど、どこで知り合ったんだよ!!』
照れながら答えた次の瞬間、急に大声が電話口から聞こえてきて、思わずスマホを耳から離した。
それから二階堂さんと出会ったときのことを修平と話した。
『一目ぼれねぇ。お前に恋人ができるとか信じられないな。その二階堂ってやつ、ほんとに大丈夫なのか? 相手のことほとんどしらないんだろ。ましてや、サラリーマンなのに制服姿の高校生に声かけてくるとか』
「大丈夫だよ、二階堂さんはそのへんのチャラいやつとは違うんだから」
修平に信じてもらうために今日のデートの様子を話すことにした。
お父さん以外の年上の男の人と二人きりで会うなんていままでなかったことなので、約束の場所で緊張しながら待っていた。
駅前で行きかう人たちの顔を見ていると、約束の10分前に軽く手を上げながら近づいてくる二階堂さんの姿が見えた。
サマージャケットを着て、無造作な感じに髪をセットしていて彼の雰囲気に合っていた。
「やあ、中里さん、またせちゃったかな」
「いえいえ、そんなことないでございます。わたしもさっききたばかりでいらっしゃいます」
修平たちと待ち合わせるとき、いつも遅刻しそうになるので今日は早起きしてかなり余裕を持って出発して正解だったようだ。
「うーん、中里さんってあまり敬語とか使い慣れてないでしょ。ボクとしては、普段のままの君のほうがいいな」
「えっと、うん、わかった」
「うんうん、そのほうが君らしくていいよ」
慣れない口調をやめて肩の力を抜いたわたしをみて微笑む二階堂さんのことを話したところで、修平が割って入ってきた。
『なんだ、そのキザなセリフは、オレだったら恥ずかしくて絶対いわんぞ』
「わたしの緊張をほぐそうとしてくれた気遣いってやつだよ」
修平の言葉にムッとしながらも、二階堂さんとのやりとりを話した。
緊張が抜けてきたところで、二階堂さんがわたしのほうをじっと見ていた。
なんだろうかと照れくささを感じながら上目遣いで見返した。
「その格好、かわいいね」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
二階堂さんの言葉を思い出すと、再び頬が熱くなってきてあのときの気分に浸っていると、修平が疑問の声をかけてきた。
『いきなり褒めてくるとか、妙に女の扱いになれてるな。やっぱり怪しいな』
「そんなことないよ!! ゲーセンにいったときわたしがほしいって言ったぬいぐるみ取ってくれたんだけど、渡すとき照れくさそうにしてて、かわいいところもあるんだよ」
あのときのはにかんだ表情を思い出しながら、修平の言葉に抗議した。
「そういう修平も、千明のことちゃんと褒めてあげたりしたの?」
『いや、だって、いまさらそんな女の子っぽく扱うとか不自然だろ』
「かー、わかっちゃいないなぁ。逆だよ逆ぅ、普段しないことをするからこそ、そのギャップが印象に残るんじゃないか」
修平に千明とのデートの様子を聞くと、いつも3人で遊んでいるような感じだったというのが分かり、 ひざをばしばし叩きながら修平に説教した。
「まったくもう、あんたが千明といい仲になりたいっていうから色々相談にも乗ってあげてるのに。いい、次こそビシッと決めなさいよ」
『……わかったよ』
修平はうめくようにつぶやくと、じゃあ明日学校でといって電話が切られた。
あいつは中学の頃から千明のことを意識しているくせに、いまだに弱腰だからな。
でも、もしも二人が付き合い始めたら、わたしたち3人の関係はどうなっていくんだろうな。




