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5. どっちを優先すればいいんだろうか

 店内にまさかの莉子の姿を発見し、思わず固まってしまった。

 莉子の格好は普段のパンツスタイルとは違って、ふんわりしたスカートを履きフェミニンな格好をしていて、にこにことやわらかな笑みを浮かべる莉子の雰囲気によく合っていた。

 

「なんでもない!! それよりもさ、楽しみだよねパンケーキ。小学校のとき莉子の家で一緒に食べたとき以来だよ」


 驚く私の目線を追って修平も店内を見ようとしていたので、慌てて修平の注意をこっちにそらした。

 もしも、修平に見られたらあまりいい結果になるとは思えなかった。


「オレも久しぶりだな。あのときは莉子がホットプレート全面つかって巨大パンケーキつくるっていったけど、結局ひっくり返すとき失敗してボロボロになってたっけな」


 無事に注意をそらすことができたけど、店内に入ったら結局ばれてしまうのでどうしようかと考えていたところで、店員に呼ばれた。


「次のお客様~」


「お、やっと、順番きたみたいだな。いこうか」


 幸いにも案内された席は丁度莉子から見えにく場所で、たぶんむこうからは気づかれてないだろう。


「いろいろ種類あるんだな、どれにする?」


 とりあえず一安心だと思いながら、修平と一緒にメニュー表を見た。


「えっと、私はストロベリーチーズってやつにしようかな。修平はきまった?」


「オレはどれにすっかな」


 メニュー表から視線を上げると、修平はメニュー表の上から下までながめて悩んでいる最中で、一生懸命考えてる姿がかわいくて口元がゆるんだ。


「莉子なら、こんなときは分けて食べようよとかいいそうだよね」


「たしかにいいそうだ。……オレたちもやってみるか?」


「え、う、うん、いいよ」


 3人でなら特に気にならないのに、修平と二人きりだと何故か気恥ずかしかったが、いつものことだからと自分に言い聞かせることにした。

 

「二階堂さん、これおいしいよ、ほら食べてみて」


 私の背後から莉子の声が聞こえてきた。

 修平にも聞こえていたようで、首を伸ばして私の背後をのぞこうとした。


「ん? 気のせいか、莉子の声が……」


「気のせいだよ、気のせい!! それよりも、ほら、これなんかいいんじゃないかな。オーソドックスだけどこの店の看板メニューらしいし」


 私は再び修平の注意をそらすために、メニュー表を指差してみた。

 

「いいな、んじゃそれにしよう」


 どうやら、回避成功したようで修平の注意はメニュー表の方に向いた。


 やがて、注文したパンケーキが運ばれてきて、甘い匂いがただよってきた。


「これはうまそうだな。家でつくったのとは全然ちがうな」


「う、うん、そうだね」


 修平は目をきらきらとさせながら、メープルシロップとホイップがかけられたふわふわのパンケーキをナイフで切り分けて口に運んでいった。

 私はうしろの方にいる莉子のほうが気になって、目の前のパンケーキにあまり集中できていなかった。


「二階堂さん、あーん……、なんちゃって」


 そこに再び莉子の声が聞こえてきて、たぶん修平にも届いていると思われた。


「修平!! そろそろ、交換してみない?」


「いいのか? おまえ、まだ一口もつけてねーじゃねえか」


 私は皿を交換して、修平が手をつけたパンケーキを食べた。メープルシロップの甘さとホイップの滑らかさがパンケーキに良く合っていて、おいしかった。おいしかったが、やはり後ろの席の様子が気になっていた。

 

 やがて、食べ終わったのか莉子たちが座席から立ち上がる音が聞こえた。

 莉子は私達に気づかなかったようで、会計をすませてそのまま外に出て行った。

 店の出口を通るときに修平に見られるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、修平からは特に反応もなかったので気づかなかったのだろうと、内心でホッと胸を撫で下ろしたのだが


「なあ、さっき店出て行ったのって莉子だよな。さっきから声聞こえるとおもってたけど、やっぱりいたんだな」


 何気ない感じで修平は莉子のことを口にして、私は驚きで口の中に入れていたパンケーキでむせそうになり、あわてて水で飲み込んだ。


「おい、だいじょうぶか?」


「だ、だいじょうぶ。なんとなく声が聞こえてたような気がしてたけど、やっぱり莉子だったかぁ。一緒にいた人ってけっこう年上っぽかったけど誰だったんだろうね。もしかして家庭教師の人とかかな?」


「まあ、いんじゃね。莉子のプライベートまで詮索するわけにはいかないだろうし」


 なんとかフォローしようとするが、修平は特に気にしてないような口調で返事をしてきた。

 しかし、修平の心情を察するに、穏やかなものじゃないだろうな。莉子と男が二人でデートみたいなことをしているところを目撃したのだから。


 それから、店を出た後も莉子のこと……というか、修平の気持ちを考えるといてもたってもいられなくなった。


「修平、ごめん!! 用事があるの思いだしちゃって」


「そっか……。まあ、それならしょうがないか。また学校でな」


 残念そうな顔をする修平に謝り、私は莉子たちのことを探しに駆け出した。

 探し回っていると、ゲーセンの中で莉子たちを発見した。

 走り回り肩で息をしながら、ゲームの筐体で体を隠して二人の様子を観察した。


 男が真剣な目つきでクレーンゲームを操作し、後ろで莉子が手をにぎりながら応援していた。

 男の人が千円分つぎこんだところで、ようやく取れたぬいぐるみを男の人が莉子に手渡した。


 すると、莉子は満面の笑みをうかべて嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめた。

 その表情をみた男の人は、照れくさそうに微笑んでいた。

 その初々しいやりとりの様子をみながら、二人がどんな関係か理解し、そっとこの場を離れた。


 精神的にも肉体的にも疲れ、足をひきづるように駅に向かって歩いていると、いつのまにか帰りの電車に乗っていた。


「はぁ……、なにやってるんだろ」


 せっかく修平と二人で遊びにでかけることができたのに、それを自分から無駄にして修平を放っぽって……。顔には出してなかったけど、修平怒ってるだろうなぁ。

 でも、莉子が会っていた相手がどんな人なのか知っておかないといけないし……。

 今日見たことを修平になんていえばいいのか、今の私にはわからなかった。

 

 来るときは電車のシートに二人で隣合って座っていたのに、帰るときは一人で座っていることが無性に寂しく感じた。

 

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