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2. いつもの相談

 莉子に用事があるといって学校で別れてから、待ち合わせ場所であるハンバーガーのチェーン店に入った。

 あいつは部活で遅くなるといっていたので、先に図書館で宿題などをすませて時間をつぶして、あたりは夕暮れ時になっていた。

 クーラーの効いた涼しい店内で二人用の座席に座って待つことにした。


 小腹がすいていたので、ポテトをつまみながらアイスコーヒーを飲んでいると、店の入口にあいつの姿が見えた。


「よっ、千明。待たせて悪いな」


 そこには学校の制服を着て、部活の練習で日に焼けた顔をした修平が、気安い感じで手の平をあげていた。

 そのまま私の座っている席に近づき、向かい側に座った。


「いつものことでしょ。それでまた相談ってことでいいのよね」


 コイツからは相談があるといって、既に何度かこうして待ち合わせをしていたことがあった。

 つまんでいたポテトを「たべる?」とききながら差し出すと、ありがとうといってうれしそうにほおばった。

 よくなついたイヌにえさをあげている気分になり、ちょっと楽しかった。


「今度の週末だけどさ、いっしょに遊びにいかない?」


「いいけど、プランは立ててるの?」


「チアキなら、どこにいきたい?」


「質問に質問を返さないでよ、まったくもう。それじゃあ、あの子が好きそうな映画がいいんじゃないかな」


「それもいいんだけど、チアキの行きたい場所もきいておきたいからさ」


「私は別にいいよ。あなたがしっかり莉子を楽しませるのに付き合うだけなんだから」


 もどかしそうな顔をする修平にむかって、肩をすくませてみた。



 目の前の幼馴染、坂崎修平から相談を受けたのは、確か3ヶ月前ぐらいの春だったろうか。

 1年生のときは別々だったクラスが、2年になったときに莉子と修平と奇跡的に一緒になりお互いに喜んだ。

 中学のときも同じクラスになったことがなく、小学生以来だった。


 新しいクラスになじみ始めたころ、修平から一緒に遊びに行かないかと誘われた。

 いつも遊ぶときは莉子と修平の3人だったので、そのときも同じかと思っていたが


「チアキと二人でいきたいんだ」


といわれた。


 つまり、二人じゃないと話しにくい相談事があるのだろうと理解した。


「わかったわかった、相談があるなら聞くわよ」


 天然が入っている莉子に、なかなか修平の気持ちが伝えわらないので手伝いをしてほしいということなのだろう。

 それから、莉子を誘ってなんとか二人がくっつくように色々と橋渡しをしてきたが、いまだに二人がくっつく様子はなく今に至っている。

 

 週末のデートプランも決まり、店を出ると外は真っ暗だった。

 一緒に電車に乗り最寄り駅で降りて別れようとしたところで、修平に呼び止められた。


「もう暗いし家まで送るよ」


「いいよ、あんたのうち駅から逆方向でしょ。いざとなったら走って逃げるから大丈夫」


 そういうことは莉子にしてやりなさいと思いながら、手をひらひらと振って修平と別れた。

 少し歩いてから振り向くと、逆方向に進んでいく修平の背中が見えた。

 その背中が闇夜にまぎれて見えなくなるまで、じっと見続けた。


 修平と莉子に初めて会ったのは、小学校に私が転校してきたときだった。

 初めは莉子が興味津々な様子で私に声をかけてきて、莉子の幼馴染だった修平とも一緒に遊ぶようになり仲良くなっていった。

 すでにそのときには二人は幼馴染としての仲を築いていて、私は二人の世界の隅っこに住まわせてもらっているに過ぎなかった。

 それでも十分に楽しさを与えてもらっているのだから、そんな二人に恩返しがしたかった。


 もやもやする気分を引きづりながら家に到着し、夕飯やお風呂を済ませるとようやく気分も落ち着いてきた。

 時計を見ると夜の10時過ぎになっていて、まだ莉子も起きているだろうと思い、電話をかけてみることにした。


 数コール後、電話がつながりスマホから莉子の声が聞こえてきた。


 『もしもし……』

 

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