三話目 何もなかったらただの日常
この話もまた、部屋から始まる。
今度は窓を割れるのを意地でも食い止めてやる。
まるで、窓を割る強大な敵と戦ってるみたいだけど。
といっても今回は割られることはなかった。
部屋から始まっても部屋で何かあったわけじゃないからね。
そもそも今日は学校があるし、学校に行ってる間に窓が割られるとかはないからね、絶対に無いから!
だとすると、学校の窓が心配だけれど。
でも、そんなことがあっても全く問題がないけどね。
・・・嘘です、ごめんなさい。
嘘は誰でもつくものだから、許して。
世の中には嘘をつかないと言う人もいるらいしですけど。
というか、嘘をついていないと嘘をつくよね、まぁそのことが嘘っていうんだけど。
ややこしい。
まぁ、誰が嘘をついても関係ないことは関係ないから、嘘はついてもいいともうけどね。
自分の知らないところで誰かが嘘をついてようと知ったことではない。
他人のことなど知ったことではない。
でも自分に何か影響があるんだとしたら、何とかしなくちゃならないんだけど。
面倒事が嫌なんでね。
それでも短期間にずいぶん面倒なことがあったけれど。
いやーさあ、一か月間で得体のしれない吸血鬼に三体会ったんだぜ?
参るよ全く、しかも全員と戦ってるし。
滅入るって言ったほうがいいかな?
気が滅入る、消滅しているかもしれない。
はぁ、毎回落ち込んでいるな俺。
んじゃ、始めるって言ってから23行経ってるし、始めようか。
あ、まず日時から、いつも通りね。
11月◯日7時起床、ちゃんと起きれた!
幼児みたいな起床だね。
10月の時は寝るのも遅く、起きるのも遅かったからね。
ちなみにベッドが壊れたので、布団を敷いて寝ている、ベッドを壊す原因を作った過去の俺を止めに行きたい。
妹が起こしに来てくれないだろうか・・・。
んー、来てくれないよなぁ。
というか起きるのに誰かに頼っていたらいよいよ、幼児じみてくる。
・・・いやいや、早く学校に行く準備をしよう、窓に気を付けながら、大丈夫、まだ割れていない。
服を着てる途中とかに誰かに割られたらどうしようもないぞ、そのままの姿で外に出るわけにもいかないし。
本当にやめてくれよ・・・、窓って思ったより高いんだぞ・・・。
―――――。
良かった、良かった、窓を割られずに準備ができた。
さあ、何事もなかったから行こう、学校へ、帰ってきたら窓が割れていないことを願って。
家の扉を開け外に出た、妹は朝練とかそんな感じの事でもう学校に行っている。
・・・赤石沢が前を歩いていた。
ふへっ、この前の仕返しでもしてやろうか。
いや、普通に話かけるけれども、普通にごく普通に―――。
と思ったんだけれど、走って行ってしまった。
なんだろう、何か急ぎ用なんだろうな。
遅刻とかではないだろうけど、遅刻じゃないよね!?
時間は余裕をもって出てきたと思うけどなぁ。
まぁ、俺も学校に行くか。
着いた。
だって、赤石沢とのイベント消えちゃうんだもん。
俺に気付かせる前に走って行ったんだもん、学校で話せるけどね。
クラスが同じなんです、海月とは別のクラスだけど。
んー、クラスが違っても学校が同じだから話せるか、なんでクラスが違うと話せないと思ったんだろうか。
教室についたし、赤石沢に話しかけよう。
うーん、赤石沢はどこかなー、・・・居ない。
ああ、そうか、急いでいたんだし、どこかで何かしてるんだろうな。
休憩時間にでも聴こうかな、なんか話しかけようとした瞬間に目の前で走り去られたからか気になって仕方がない。
さすがにホームルーム時には戻ってきているだろう。
さて、それまで暇だな・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
本当に暇だ。
ちゃんと居るからね!友達!
でもだよ、居たとして、そんなに頻繁に話しかけるというわけでもないからね。
信じて!
早くホームルーム始まらねぇかな。
――始まった、――終わった。
文章に起こすとこういうことって本当に一瞬だよね。
休憩時間が終わるまでに赤石沢に話しかけよう。
「赤石沢ー」
「んー、なんだ春夏冬くんか」
「なんだとはなんだ、お前とは――言ってねぇ!」
「一人で何言ってるの・・・?」
なぜか寂しいです、いや、『なんだお前か』っていえよぅ。
ああ、でも赤石沢って『お前』って言うような奴じゃなかったな。
「ああ、春夏冬くんは独りだったね」
「酷い!」
「でも、独りと一人って英語で書くと only one だよね」
「そう・・・なのか?」
ちょっと違うような・・・いやでもあってるのかこれで。
日本語を英語にするのは難しい。
英語を日本語にすのも同じく。
「いや、そんなことはどうでもよくて」
「英語の勉強がどうでもいいの?」
「それはよくないけど・・・、あのさ、今日はなんで急いで学校に来たんだ?」
「んー、なんで?」
「今日、俺の家の前を通っただろ?話かける前に走って行っちゃったからさ、ちょっと気になって。」
「急いでいたのは忙しかったからだよ」
そうなのか、俺から逃げたわけじゃなかったんだな良かった。
「いや、そんなことはどうでもいいよ」
「俺がお前に話しかけ損ねたことがどうでもいいというのか」
「どうでもいいよ」
「それはよくないけどって言ってくれ頼むから」
「そうだねよくなかった、春夏冬くんは良くなかった!」
「何もしてない俺が悪いみたいじゃないか・・・」
仕返をしてやりたいところだけれど、言葉が頭に浮かんでこないな。
こんなに貶す必要ある!?
ギャグパートとは言えどさー。
「まぁ、そんな、独りの春夏冬くん事は置いといて訊きたいことがあるの」
黙ってやった、というか目を逸らして無視した、このまま続けられると色々俺がもたない。
「・・・えっと、あの、ごめんね」
ふざけてるのは解るんだけど、あまり続けられるとねー。
・・・謝ってくれたからいいとしよう。
「・・・ああ、うん、で、その質問は?」
「最近、海月さんと仲いいよね、春夏冬くん」
・・・。
そうなんです、仲がいいんです、あの吸血鬼と。
再会してから一か月間で徐々に。
俺はあいつと戦ったことを水に流しても良かったんだけれど、彼女のほうが自分で責任を負いたいと言ってきた。
それが、再会して直ぐに言われたこと、彼女は貸しとか恩って言ってたけど。
海月は俺が助けを求めれば、恐らくすぐに助けてくれるであろう、どんな状況であろうと。
でも、貸しとは言っても何でもかんでも言うことを聞いてくれる訳じゃないと思う。
そこで、貸しということで俺は友達になろう―――、って言った。
わけじゃない。
一応、和解みたいな感じにはなってるけど。
ただ、海月から学校で話しかけられた、一番話かけやすかったかどうかは知らないけれども。
まぁ、海月、独りだったしね。
それだけのこと、結局は必至に生き延びようとした元人間。
というか、海月が何をやっていたかは全部知っている。
何をしようとしてしていたかも。
あの時、吸血鬼になるのを拒否して殺すって言ってきたけれど、最終的には無理やり吸血鬼にされていただろうね、殺せるくらいの力があるなら。
だから、殺す気はなかったんだろうと思う、吸血鬼になっても生活に支障はないし。
それで、そのまま仲がよくなるのを受け入れてた。
この赤石沢の質問にyesと答えればきっと何があったか訊かれるんだろうなあ。
だから俺は――。
「いや・・・仲良くないよ?」
「嘘をつかないで」
ばれた、ウソがばれた、はぇよ。
エスパーなのかもしれない。
「それはないよ」
「心を読むな」
「ていうか分かるよ、仲いいんだもん、何があったの?」
「なにも・・・何もないよ?」
言えるか!
吸血鬼に殺されかけて、それがきっかけで仲が良くなったって。
こんな事経験したら、誰もが誰にも言えない経験になるよ。
「いや、だから嘘つかないで」
「嘘なんかついてないよ?」
「・・・」
「・・・、頼むから・・・詮索しないで・・・」
「はぁ、わかったよ」
良かった折れてくれた!
本当に良かったぁぁぁあああ!
赤石沢のジャーナリズムがそこまで活発にならなくてさ。
俺は何に感謝をすればいい?!
赤石沢以外にだったら何にでも、頭を下げるぞ。
「なんでそんなに嬉しそうなの・・・・?」
「何でもないよ」
本日三回目の嘘だった。
さっき、赤石沢との会話を垣間見せたので、海月との会話も垣間見せたい。
なので垣間見せましょう、結論が出るまですぐだったね。
と言っても赤石沢と同じくそんなに大した会話じゃないけれど。
「あっ春夏冬君」
昼の休み時間に後ろから話しかけてくれた。
なんか俺に会うのが珍しいみたいに驚くな。
一応言ってみるか
「なんだ、お前か」
「そうだよ、私だよ」
普通に返された。
海月は面倒くさい返しはしないんだな。
「で、どうしたんだよ」
「いや、何か話題ない?」
「話しかけて置いて話題が無いのはどうなんだ・・・?」
「んーじゃあ、あれから何かあった?」
「それをここで話すのは無理だ」
「えー」
「えー、じゃねぇ、そのことをここで話題にするのはやめてくれ・・・」
こんなところで話たら誰に聞かれるかわからねぇよ。
聞かれたあと何があるかわからないもん。
「んー、ほかに何か話すことある?」
「えっ、あー、ミスドの近くにマクドナルドできたね」
「ああ、そうだね」
「・・・」
「・・・」
「話広がらねぇ!」
なんという会話だ。
これは話かけた海月に責任があるんじゃないか?
「あっそうだ、マクドナルドの略しかたはマクドとマックの二通りあるけれど、ミスドは一つだよね」
「ああそうだな、関東と関西で呼び方が違うな」
確かにミスタードーナツはミスドだけれど。
「なんか、マクドとミスド、マックともう一つほしいよね」
「ミッス?」
「何それ?、新しい挨拶?」
「よっ、みたいなノリでとらえないでくれ」
「ていうか、ミスは女の人に使うものだよ」
「ミスタードーナツだもんな」
ミスとミスターじゃ違うよなぁ。
「んーいい略仕方、見つからないね」
「ミタツでいいんじゃないかな」
「・・・・・?」
「むやみやたらに略すもんじゃねぇな」
まぁ、オチみたいな事を言ったところで(その後も数分話していたけどね)、海月と別れた、と、ういか普通に休憩時間が終わった。
で、これからは放課後まで何もなかった、放課後にはあったけれど。
下校途中で赤石沢が前を歩いている。
ふふっ、朝のリベンジだ。
「赤石沢ーー」
「なんだお前か」
「なんだとはなんだ、お前とはなんだっ」
赤石沢が『お前』と言いなれない感じで言ってくれた。
やっと一か月前の逆パターンができた。
「どうしたの」
「いや、朝、話かけ損ねたから」
「えっ何もないのに話かけられたの?」
「寂しいこと言うなよ・・・」
なんでお前の後を無言でついて行かなきゃならないんだ。
因みに帰る方向は同じ。
「そういえば、ミスドの近くにマクドナルドできたね」
「ん、あー、そうだな」
「―――って海月さんと話してたよね」
「見てたのかよ・・・」
「聞いてたよ」
あー、ミスった、まさか聞いてるとは。
「仲がよくなかったんじゃなかったの?」
「ぁ・・・ぁ・・・っあ」
「んー?」
「・・・仲・・・・・・いいです・・・」
あーあ、言っちゃった。
言うつもりは一切なかったのに、あんなところで海月と話すんじゃなかった。
まずいってことはないけれど。
でも、一か月ちょっとで男女が仲良くなってるのは何かあったとしか考えれないよなぁ。
「何かあったでしょ?」
追い打ちがきました、でも言えない。
「あー、えっと、いや、まぁ、特に、何も」
「なんでそんなに途切れ途切れなの」
「何も無いから!自然にだから!」
だから、あいつが吸血鬼で俺が殺されかけたとか言えないんだって。
「ふーん」
「・・・」
引き下がってくれるかな?
「そうなんだ?」
「ちょっと話して徐々に仲良くなっただけだから」
嘘は言ってない。
色々話を省いてはいるけれど。
・・・・・・。
まぁ、保留くらいにしてくれたらいいな。
「んー、まあわかった、そういうことね」
「はぁ、良かった」
「なんで安堵してるの・・・?」
「安堵なんかして無いよ?」
こいつの前で何回嘘をつくんだろうか。
嘘をついたところで気づいてるかどうかは一切わからないけれど。
きっと気づいていないだろうな。
きっと気づいていないだろうね!
気づいてほしくない!
「あっじゃあこっちだから、じゃあね」
「ああ、じゃあね」
右の曲がり角を曲がって行ってしまった。
俺の家はこのまま真っすぐ。
ここからは誰にも会うことはなさそうだし、早く帰ろう。
そこまで物語が進むわけではないです