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蒼黒の救宝士  作者: 柘榴 鉄犬
1/8

救宝士と水天の金字塔1

この物語はフィクションです。登場する地名、人名、団体名等の名称は実在のものとは一切関係ありません。

また、史跡破壊、殺人等の描写がありますがこれらを助長、推進するものでも無いということを予めご了承ください。

「よっ、よっ、よっと…!」

手甲から伸びるワイヤーを伝っての降下を終え、着地する人影が1つ。

左腕の手甲のスイッチを押し、ワイヤーを収めながら男は呟いた。

「お迎えに上がりましたよ、水天の巫女様よ」


ーーーーーー


ガーバルベイン公国、キネユッデ。


国土の1/3が広大な砂漠地帯であり、そのほぼ真ん中に位置しながら、豊かな地下水源と貿易の中継地として栄える都市。

この街には二つの名物がある。

一つは、べアートと呼ばれる古代民族。彼らは男女問わず容姿端麗な人物が多く、それらを目当てに各地から訪れる旅人が後を絶たない。

最近ではこのべアートを狙った拉致事件、並びに人身売買が増加し、国際問題となっているほどだ。

そしてもうひとつが、地元民すら誰も寄り付かない旧王家の墓ピラミッド

50年以上前にキネユッデの街から北東へ数kmにある窪地から発掘され、以降現地の有数の考古学者が調査を試みたものの、派遣された調査員全員が行方不明になっている、いわくつきの遺跡である。

その後も何度か国からの調査団、捜索隊が組まれたが、その度に構成員全員が行方不明になったという。

地元民はこれを『旧王の呪いだ』と噂し、現在では最早公国ですら詳細な調査を諦め、観光客用に外観を定期的に多少メンテナンスを行う程度に済ませている程度。

「もっとも、現地の人も寄り付かないのにツアー客なんかが来るかは疑問を呈するところですけどね」

「確かに。でもま、そのおかげで俺達の仕事はある程度楽なんだけどな」

件のピラミッドを、窪地の上に停めてあるジープ型の車両から双眼鏡で捉え、雑談を交わす人物が2人。

1人は帽子にバイク用のゴーグルを付けてかぶった、青みがかった黒髪の男。

もう1人は男の半分程の身の丈で、金髪を後ろ手に纏めた子ども。

凸凹コンビと呼ぶにふさわしい外見をしている。

「何にせよ今日はまず宿を探そう。本格的な仕事は明日からだ」

ナビゲーターとも会わなきゃだしな、と呟きながら男はポケットの中の葉巻に手を伸ばし、咥え込む。

「あ、ディーン!」

「んあ?!どうしたクロ!?」

突然大声を出した金髪に驚き、男ーーーディーン・フォードバーグはシートから飛び起きる。

「煙草はダメですよ!ここら一帯は禁煙区域なんですから!」

が、金髪ーーークロ・アントムの紛らわしい叫びに、力なくシートにへたり込むことになった。

「はぁ……知ってるよ。コイツは咥えてるだけだ。さあ行こう」

「街に入る迄にはしまっておいて下さいよ?」

へいへいと特に味のしない葉巻を動かしながら、ディーンは車のエンジンをかけ、ピラミッドを後にする。


『新たな獲物ですかな…?』

2人から数百メートルの位置。彼らを監視する複数の人影があった。

その内の1人、離れ行くバギーを見つめつつ、砂と同化するような色合いの外套に身を包んだ男が問い掛ける。

『如何なされますか、首領ドン?』

首領と呼ばれた人物ーーー他の者よりも遥かに大柄な体格で、顔には何か動物の頭蓋骨で出来た仮面を付けているーーーは、身を翻すと同時に唸るような低く、ドスの効いた声で命じた。

『始末しろ、やり方は任せる』

『…御意』

首領の一声を皮切りに、取り巻きの思しき人影が一斉に散開し、バギーの追跡を開始する。


『…奴らが何者であろうと…邪魔はさせん…!』

独り、首領が呟く。その強き意志を秘めた独白を聞いたのは、砂漠に吹く一陣の風のみ。


こうして、『救宝士』の異名を持つ男、ディーン・フォードバーグとその相棒であるクロ・アントムの、謎のピラミッドを巡る冒険の幕が開くのであった

次回更新は6月1日(木)です。

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