04話 彼女との出会い
月白色のカーテンのレースに朝日が差し込む。
小鳥の囀りがどこからともなく耳の入ってくる…
ピピピッピピピッ
「んあ、ねむぅ〜」
(お、起きたか。おはよう!)
(ん、おはよう)
ってか神も「おやすみ」とか「おはよう」とかって言うんだな。
(あぁ、そこはお前に合わせてんだよ。)
なるほど。意外と紳士だな。
(紳士じゃねぇよ。神だよ。)
いやそう言うことじゃないけどまぁいいや。
歯磨くか〜…
何も考えずにぼーっとしながら洗面台の方までいくと、
「うわ?!誰だよ!」
思わずそう叫んでしまった。
「あ、俺か。びっくりした〜。この体にも慣れないとなぁ…」
歯を磨き終わったあと、初めてオリスと一緒に朝食をとった。
といってもオリスは俺の頭の中で俺が食った時味わった味覚を共有してるだけだがな。
(なかなか美味かったぞ!)
本人はこう言ってるけど実際大したことのない朝食である。
焼き鮭に白米と味噌汁。まぁこんな普通の食事でもこいつは食ったことないんだな。
(新鮮だったぞ!特にあの土を混ぜ込んだような色の汁は美味だったぞ!)
あぁあれね。スーパーで売ってる味噌汁なんだよね。
一応自炊はできるが味噌汁はさすがにめんどくさいのだ。
だからいつも味噌汁はスーパーで売ってるのを使っている。
さて、そろそろ学校に行くかぁ…
ちなみに今の時間は朝の7時半。学校には8時20分までに着けばいいのだが、いかんせん学校が遠いので、通学時間が長いのだ。
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「はぁ、疲れた…」
(大して運動もしてなかったぞ?)
(いやそっちじゃなくて精神的な疲れが…)
(ふーんまぁいいや。)
今現在俺はさっきまで乗ってた電車を学校の最寄駅で降りて、駅のホームのベンチに座り、項垂れているところであえる。
なぜこんなに疲れてるかって?理由は簡単だ。
この外見のせいで、電車に乗ってる間10人以上の人にガン見され続けられたのだ。
電車に乗ってる人が予想以上に多かったのもびっくりだが、まさかここまで見られるとは思わなかった……
まぁそりゃそうだよな、俺以外にどこに白い髪の毛の高校生がいるんだって話だよ。
そんなこんなで電車内で盛大に視線を受けて俺の精神的ライフはもう0よ!!
まぁずっとここで落ち込み続けるわけにはいかないのでさっさと学校に登校しよう。
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学校までの道のりでも他人からめちゃくちゃ見られたけど、無事学校に辿り着くことができた。
結構疲れたがこれからが本番である。俺は入学式にすら出られなかったので当然自分のロッカー、クラスが分かるはずもない。さて、どうしようかと思いながら校門を潜り抜けようとしたら、突然校門の側に立っていた大人に声をかけられた。
「やぁ君が霧雨優希君だね?どうも僕は君の担任の戸倉悟史だよ。よろしくね。」
どうやら俺の担任だったようだ。
「あ、霧雨優希です。これからよろしくお願いします。」
一通り挨拶を交わした後、俺は革靴から上履きに履き替えて教えられた自分のロッカーの中に入れた。
その後先生に職員室に連れていかれ、
「ここが職員室で、僕の机はここだよ。なにか分からないことがあったら聞きに来てね。」
そして、今日やる授業について説明を受けた後、いよいよ教室に案内されることになった。ちなみに俺の髪の毛のことは病院の方がストレスのせいだとかって言って誤魔化したらしい。俺としては助かるんだが、なぜ病院の人がそんなことするんだろうと疑問に思った。もしかしたらあのー秘書っぽい女性と話してたのはこのことなのかな?まぁ今はそんなことについて悩んでも仕方がないので、とりあえずそれで誤魔化せたと思っておこう。
「君のクラスは1-E組だよ。全体で6クラスあるんだよ。」
階段で4回まで上ったところの廊下の左側にE組の教室はあった。
「どうやら皆揃ってるようだね。では中に入ろうか。」
まじか。もう皆いるって…それはそうか。もう8時30分だしな。
俺はものすごい緊張しながら先生の後ろに付いて教室の中に入っていった。
教室内はそこそこの喧騒だったが、先生と俺が入って来た途端水を打ったような静けさになった。「誰あの人、ちょっとカッコよくない?」という言葉も誰かが言ってたような気がするけど緊張してるから全然嬉しくない。
俺は先生についていくまま教壇上に上がった。
「じゃあ自己紹介してくれるかな?」
え、やっぱりするんですか?!そう言うの!緊張するけどここは頑張るしかない。
「き、霧雨優希です。よろしくお願いします。」
なんとかそう言って俺は小さく頭を下げた。
「霧雨君は入学式の日に交通事故に遭ってね、しばらく入院していたんだよ。少し出遅れてしまったけど今日からみんなのクラスメイトだ。だからみんなも彼と仲良くしてね。」
先生がそうフォローしてくれたおかげで少し肩の荷が下りた気分だ。
そう思った時、後ろの方で
「ねぇねぇ質問があるんだけどいいですかー?」
「え、な、何かな?」
「その髪の毛って染めてるの?」
おっと、やっぱりそう来るよねー。
さてどう答えようか…と、俺が悩んでると先生が
「霧雨君は交通事故のせいでストレスが溜まって髪の毛が白くなっちゃってるんだよ。染めてはないからからかっちゃダメだよ。」
「まじか、そりゃ大変だな…」
そう言って俺に質問して来た生徒は自分の席に座った。
どうやら今の質問がみんなの疑問を代表していたようだ。
みんなすんなりと納得したような顔になった。
「じゃあ霧雨君の席は窓側の一番後ろの席になるから自分の席に座ってくれるかい?」
「はい、分かりました。」
俺はクラス中の視線を集めながら席に着いた。
よっしゃラッキー!窓側の一番後ろだ!やっぱり神様は俺のことを見ていてくれたんだな!
(ん?中にいるけど?)
こいつ(オリス)雰囲気をぶち壊しやがった。
まぁいいや。
「それじゃあ少し遅れたけど朝のHRを始めるよー。」
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先生は朝のHRが終わったあと職員室に戻った。俺も疲れたので授業が始まるまで仮眠を取ろうと思ってたのだが…
「ねぇねぇ優希君はL○NEやってる?交換しよ!」
「あ!私も交換したい!」
「ずるい〜私も〜」
などなどHRが終わった瞬間大勢の女子が俺にL○NEの交換を要求して来たのだ。
いやまぁ嬉しいっちゃ嬉しいけど、こちとらめっちゃ疲れてるんで今はそっとしておいてくれませんかね??
とか思ってたら、
「おいおいお前らそこら辺にしとけ〜。授業始まんぞ。」
なんと助け舟を出してくれたやつが現れたのだ!いや、現れたと言っても俺の前の席の男子なんだが…
そこら辺は気にすることではないだろう。
すると、まるでその言葉を待っていたのかのようなタイミングで授業開始のチャイムが鳴り始めた。
「ちぇーまた後でね!優希君!」
「あ、私もね!」
「だからみんなずるいってば〜」
「あ、う、うん」
そう言うと女子たちは各々の席に戻っていった。
「お前も初日から大変だなぁ。さすがイケメンは格が違うってか?」
「はぁ…さっきはありがとう。助かった。」
「なぁに気にすんな。俺は近藤祐一だ。これからよろしくな!」
「あぁ、こちらこそよろしく。」
おぉ…前の席の人が優しい人でよかった!!!
まじで神様感謝っす!
(おう、もっと感謝しろ!)
(お前じゃねぇよ!!)
空気読め!はぁ、まったく、こいつは空気を読むと言うのを知らないのか?
まぁそんなことよりも授業が始まるから準備でもしときますか。
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昼休み
「うげー。全然わからん。たった10日でこんなに差が開くのか…」
「あはは、俺らのクラスは選抜クラスだからなぁ。他のクラスより進度が圧倒的に違うんだよ。」
「まじか、そうだったのか…ったく、ついてないな…」
「まぁそう言うなって、このクラスに入れるだけでもお前は十分頭いいからちゃんと勉強すればついていけるって!そんなことよりも昼飯はどうするんだ?」
「あ…………弁当作んの忘れた…………」
「あはは、それはドンマイだな。じゃあ今日は学食にすっか。」
そう言うと近藤は俺を食堂に連れて言ってくれた。
「B定食お願いします〜。」
「はいよ。お連れさんは?」
「えっとじゃあ僕も同じやつをお願いします。」
「はいよ。」
人の良さそうなおばさんが笑顔で快く注文を受けてくれた。
「お前もB定食にしたのか。結構美味いぞ。」
「そうなんだ。楽しみだな。」
しばらくしたらB定食をおばさんから受け取って二人で席に座った。
食堂は中庭(?)的なところに面していて、ガラス張りだったので眺めがとても良い。
そして、肝心のB定食なのだが、思ってた以上に美味しかった。
「ん、めちゃくちゃ美味しいな。想像以上だよ…」
「あはは、俺もこの学校に入ったばっかだけどB定食が一番のお気に入りだな!」
そうして俺は二人で駄弁りながら昼休みを過ごした。
そして、近藤と俺は昼飯を食べ終わって、教室に戻ったのだが、戻る途中の廊下で近藤と喋りながら歩いていたら運悪く向こう側から来た女生徒の肩にすれ違いざまに少しぶつかってしまった。
「あ、すいません。」
そう言いながら俺は相手の顔を見たが、不覚にも意識を一瞬奪われてしまった。
艶のある長い黒水晶の髪の毛に、凛とした顔立ち…
THE大和撫子だった。
俺がそうやって見惚れていたら彼女は驚いたように俺の顔を見て、それから思いっきり睨んで来た。
ヤベェめっちゃ怖い。怒らせちゃったのか??でも少ししかぶつけてないぞ…?
「あ、あの大丈夫…?」
そう声をかけてみたのだが、彼女は一際強く睨んだあと品のある足の運びで俺に何も言わず去っていった。
「あちゃー。やっちまったなお前。あいつを怒らせるとは…お前以前になんか彼女に変なことしたのか?あいつがあそこまで人を睨むところ俺は見たことないな。」
「いや、さっき軽くぶつけたのが初対面だと思うけど…それよりもあの子は?」
「あぁ、あいつはうちのクラスの隣のF組の夜霧アリスだ。家が財閥でな、しかもあの性格だからみんなから恐れられている存在だ。」
ま、まじか。なんか俺すごいヤッチまった感半端ないんですけど。
か、神様お助けを!
(んなもん俺にはどうしようもないな)
(お前には祈ってねーよ!!)
俺がそんな風に心の中で葛藤していると予鈴が鳴った。
「まぁそんな気にすんな!多分大丈夫だろ!」
「まぁそうだな。極力関わらないほうがいいかもな…」
そして俺たちは急いで教室に戻っていった。
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帰りのHR後
「はぁ疲れたぁ…」
「お疲れさん!一緒に帰ろうぜ!」
「あれ?お前って○△方面か?」
「おう!そうだぜ!」
「そんじゃあ一緒に帰るか…」
そして俺たちは荷物を整えて教室を出ようとしたのだが、
急に教室内の喧騒が収まった。まるで朝と同じような光景だ。
何事かと教室を見回すと、なんとSP(?)を後ろに控えさせた、あの夜霧アリスがうちの教室に入って来たのだ。
彼女は一通り教室内を見渡して、まっすぐ俺のところまで来た。
その瞬間周りの喧騒が再び戻って来た。
「え、なになに。まさかの?」
「いやだぁそんなベタな展開なわけないじゃない〜。」
などど勝手なことを言ってるがこっちは何がなんやらさっぱりである。
そして彼女は俺の横に立ちこう言い放ったのだ。
「あなたが霧雨優希ね。では早速だけど放課後私に付き合ってくれる?」
「え…?」
唐突にそう告げられた俺は頭の中が真っ白になった。ま、まさか昼のアレのことを怒ってるのか…?
それって結構やばくね?俺これからどうなんのおおおおおおおお?!
上手く日常に溶け込めたつもりだったが、現実はそんなに甘くないらしい。
この日、俺と彼女の運命の歯車が動き出す………
最近投稿時間が遅くなってすいません。統一したほうがいいのかな…?