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門番は?



翌日、俺はいつも通りの退屈な学園生活を送り、帰宅した。


俺の部屋の前には、段ボール箱が置かれている。

予想はついている。

おそらく、『ブレインリンク』だろう。


とりあえず、段ボールにはまだ触らずに、カバンを部屋に置いた。


爆弾処理班のような丁寧さで段ボールを部屋に入れ、箱を開けると、中から新品の電化製品の香りと共にそれは出てきた。

ヘッドギア型コントローラー、『ブレインリンク』が艶やかな光を放っている。


考古学者が、地中から土器を取り出す時のような慎重さで、箱から出した。

そんなシーンは、一度も見た事はないが…。

だったら、こっちの方がいいか。

俺は、初めて彼女のおっぱいを触る時の慎重さで……

……慎重でいられる自信がないから、やめよう。


ベッドに横になり、頭を入れる部分に入っているプチプチを取り、少しだけ潰し、軽い快感を味わった後、

ブレインリンクを頭にかぶせてみる。

頭と、目、耳、鼻までが覆われる形となり、電源を入れていないのに、

「スウォーン…」

と、少しスペーシーな音がして、ゆっくりと視界がはっきりとしてきた。

ただ、俺は目を閉じている。

これは、画面に映ったり、スピーカーから音が出てるワケではない。

脳に直接送られているんだ。

もう繋がったんだろう。

イメージでは、細い針を脳みそに刺されているような感じだと思っていたが、そんなサイコな事はなかった。


不思議な感覚だった。

宇宙の真ん中にいるような、無重力の感覚だ。

それが過ぎると、地球が見えて、だんだん大きくなり、日本の地図が見えてから、ある島に降り立ち、

真っ暗闇になった。


そのあと、古いRPGのような白いドット文字で、


「チェイサーを作ります」

「選んでください」


と表示が出た。

オープニングは、無しパターンかな。


チェイサーは俺自身の分身だから、その基礎となる擬似肉体を選ばなければならない。

肉体は3パターンある。


日本製   :平均的な性能 操作しやすい、同調性が高い

アメリカ製 :パワー重視 操作しやすい 

イタリア製 :スピード重視 操作しやすい


なんか、車みたいだな…どこか国民性も出てる気がする。


見た目はどれも同じだから、まずは、基本の日本製にしよう。


いずれ、他のものも手に入れられるようになるんだろう。

ゲームとはそんなものだ。


選ぶのは、どうやらこれだけのようだ。

今から、キャラメイクだ。

キャラメイクは、ゲームの大きな楽しみのひとつだが、今は、時間が惜しいから、この楽しみは2キャラ目以降にとっておこう。

俺は、自分をコピーという項目を選び、すぐにスタートした、


目の前はまた、真っ暗になる。

あ…目が開けられるぞ。

それに何か匂う……海の香りだ。

波の音も聞こえる。

そうか、ここが始まりの場所なんだな。


辺りには、砂浜が広がっている。海には島も見えない。

振り向くと、西洋の城のようなものがある。

ここに行くんだな。

自分を見てみると、服は村人みたいだ。

防具などがないという事は、おそらくこの城で揃えるんだろう。

歩くと、しっかりと足には砂浜を歩いている感覚がある。

太陽の熱も感じる。肌をなでる風も…

すごい、本当に島にいるのと同じだ。

手足にも違和感はない。


あっそうだ、ゲームといえば……ふと思い浮かべる。

すると、出てきた。

ステータスだ。


Lv:1

HP:20

MP:5


これだけ?

そうか、得意技や、特殊能力も、もまだ何も覚えてないって事だな。


しかし、俯瞰の見慣れた戦闘のシーンは、動画サイトで何度も観たけれど、プレイヤーとしてのこの臨場感は、特別だな。


とりあえず、城に行こう。

門には門番がいる。

NPCかな?話しかけておこう。


「どーも」


「初めまして、イツキ様、ご当選おめでとうございます」


「あ、どうも…入っていいですか?」


「もちろん、どうぞ」


「じゃあ…」


俺は一度門の中に入ったが、少しきになる事を聞いてみることにした。


「…あの……門番さん、聞いてもいいですか?」


「ええ、なんでしょう?」


「あなたは……普通に話してますけど…コンピューターの方ですか?」


「あ、私は「ギル2」の職員です。NPCじゃなく、人間ですよ。

 ここのプレーヤー以外のキャラは全て、生の人間がやっていますので」


「ああ、そうなんですね…大変ですね」


「あはは、ありがとうございます。

 私も、まさか自分がこの時代に、門番の仕事をするとは夢にも思いませんでしたよ。

 まぁ、イツキ様も、しがない門番に関わらずに、最高のゲームライフを楽しんでください」


しがないのか……門番は。


「ありがとうございます。……あの、もし分からない事とかあったら、相談してもいいですか?」


「もちろんです」


「良かった、では、いってきます」


「いってらしゃいませ、イツキ様」


ああ、人間か…NPCと闘えるかどうか、いきなり殴りかかって試さないで良かった。


城の中に入ると、広い街があって、石やレンガ、木で出来た建物が立っている。

そして、大勢の人がいた。

チェイサーらしき人や、商人風の人、医者もいるみたいだ。

武器屋や防具屋、酒場もある。

どうやら、基本は中世の雰囲気のようだ。

動画サイトでは、街は見られないから、新鮮だ。


皆の服装は、結構バラバラだ。

騎士っぽいのもあれば、近未来っぽいのもいるし、侍や、亜人もいる。

なんでもありだ。

しかし、どこに行けばいいんだろう。

やっぱり、誰かに聞くしかないか…どの世界も、コミュ力は必要みたいだな。


誰に聞こうか………あれ……?…あそこの人……なにやってるんだ?

暗い路地の奥に、三人の人がもめてるみたいだ。


一人の女の子を、二人のチェイサーが囲んでいる。

おいおい、こっちは何年ゲームやってると思ってんだよ!

どうやらイベント発生だ。

俺は、急いで路地に飛び込んだ。


「おい、あんたら、そこで何してんだよ?」


「っち……人が来やがった。

 ……ん?…なんだよ、お前も初心者か…お前はいいから、あっち行ってろ」


二人の男のステータス見ると、Lv10だった。

でも、女の子はLv1だ。

なんだ?イベントじゃないのか?



「あの…はなしてください……私は……一人で」


「…」


はは〜ん……どうやら、この男どもは、女の子を無理やりパーティーに入れようとしてるんだな?

まぁイベントじゃないなら、はっきり言って無視したっていいんだけど、その前に……俺は男だからな。

ゲームの中だし、ちょっと大胆になっちゃおう!


「なぁ、その子嫌がってるように見えるけど?」


「おい、うるせぇよ、早く王様に会いに行ってこいよ、ペーペーが」


女の子の手を掴んでいる男の、後ろにいる男が、剣に手をかけている。


……ヤバい…もしかしたら、街中でもプレーヤー同士で戦えるようだ。

そうだ、ここはゲームでありながら、現実でもあるんだ。当たり前だな。

ただ、今の俺が戦ってもLv10の奴に勝てるワケないし……

うーん……どうしようかな………


そうだ!

よし!


俺は、路地を走って出た。

そして、入ってきた門に急ぐ。

いた!

「……門番さん!」


「どうも、イツキ様」


「助けてください、女の子が襲われてます!」


「え!? それは大変だ!わかりました、案内してください!」


俺は門番を連れて、路地裏に急いだ。

三人は、まだもめている。


「門番さん!あれです!」


「そこの二人!規則違反ですよ!」


門番は男達に駆け寄る。


「やっべ!行くぞ!」


「…あっ、待ちなさい!」


男達は、路地裏の奥に逃げていき、門番も追いかけて行った。


女の子は、疲れたようで壁にもたれかかる。

肩まで伸びたピンク色の髪、村娘の服も似合ってるな。

見た感じ、同い年くらいで小動物系の甘い顔だ。

左の口の上に、小さなホクロがある。

なんか、いいなぁ。


「あの、大丈夫ですか?」


「……ええ、あの…助けてくれてありがとうございます」


「いえ……あの、これ……イベントとか…」


「イベント?」


「あ…じゃないですね、あの初心者の方ですか?」


「そうです、私イノリって言います」


「俺は、イツキです、よろしく」


「こちらこそ……あの、もしかして来たばかりですか?」


「そうです、どこに行けば良いかわかんなくって…」


「あっ、おんなじですね…クスッ」


「あは…はは」


「わかんなくて、誰かに聞こうとモタモタしてたら、さっきの人たちに連れてかれちゃって…」


これは、チャンスですよね。

ロマンスの神様!


「そうなんですか……あの、イノリさん……良かったら初心者同士、一緒に探しませんか?初めに行くところ?」


「ええ、ぜひお願いします…イツキさん」


「やった」


「クスッ、なんか、敬語ってのも変な感じだから、イノリでいいですよ」


「じゃあ、俺も、イツキで……敬語もなしで、いい?」


「うん、イツキ」


「ハハ…なんか照れるね、じゃ行こうか、イノリ」


俺の滑り出し、エロゲー並みにいい感じだ。

どうか、ネカマじゃありませんよーに。



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