七十七話 パーティは無事に終了したようです
一言だけ……すいませんm(_ _)m
「ふぅ、疲れた」
みんなの元へと転移した俺は神剣デュランダらんだらなんとかを握りしめ小さく呟いた。
「セラフィー!」
「心配したっすよ!急に消えたから何かあったんじゃないかと心配したっす!」
「セラフィム、助かったありがとー」
「セラフィムのお陰なのじゃ!」
俺の元へ飛び込んできたルミリアをキャッチする、涙の跡があったが今は笑顔だ。
いやぁスッキリしたわ、大分頭にきてたけど今はいつも通りだしな……これが噂の賢者モードというやつか?
「よし、レティスさん?座れ」
「わ、私はここで」
忍び足で逃げ出そうとしたレティスの首根っこを掴み目の前に座らせる。
俺は忘れていなかった、重大な事を。
「なんで座らせられてるのか分かるか?」
「えぇと、お肉を食べさせたからでしょうか」
「へぇ、なんの?」
「そ、それは……」
レティスが目を逸らしながら小さい声で呟く。
あれ、なんか楽しくなってきた。申し訳なさそうなレティスが新鮮だからかな?
まぁとりあえずレティスさんのお陰で大変な目にあったから反省してもらわねば。
「邪神竜のお肉です」
「ったく、大変だったんだからな?全身溶ける様に痛いし竜になるし危うくみんなを助け損なうところだったんだから」
「竜?そういえばさっきまでいた黒い竜がいなくなってる……もしかしてあれって」
「あぁ、黒い竜?それ俺」
レティスはもちろん話を聞いていたルミリア達も驚いた表情で口を開けたまま動かなくなった。
そういえばそうだった、竜化の呪いといてくれたあの子にお礼言わないと。あの子がいなかったら今頃大変だと思うし。
「えぇっとリリィさんだっけ?さっきは助けてくれてありがとう、助けられていて言うのもなんだけど……なんで助けてくれたの?」
「助けて貰ったのは私もだし、放って置けなくて」
本当感謝しないとな、実際リリィさんがいなかったら助けられなかったかもしれないし……2度と竜化はゴメンだな、動きづらいし何より魔法使えないからな。
結果として助けることは出来たけどやっぱりルミリアが狙われてるんだな……これからどうするべきか。
「パーティの途中だったし一回戻ろうか、リリィさんも行く?」
「じ、じゃあお言葉に甘え……パーティ?」
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「というわけでいろいろ賢者の事を教えてくれる?」
「私は全然知らないの、会ったこともないしいつもは命令が人づてに来るだけだから」
「なるほど」
そうだよな、賢者がどのくらい凄いのかは分からないがそう簡単に姿は現さないよな。
よし、これからはルミリア達に被害が及ばないよう気を引き締めないと。辛い思いはさせたくないし。
パーティを再開し席に座った俺はリリィに話しかける、周りではレティスとアイリスが凄い勢いで目の前の食べ物を口の中へ放り込んでいた。
「話を聞いて思ったのじゃ、なんでセラフィムを助けたのじゃ?賢者の仲間なら助けてもメリットがないのじゃ」
「それは、助けてくれたのもあるけど……」
「あるけど?」
リリィは口をモゴモゴさせ少しだけ頬を赤らめ固まってしまった。
何か理由があるのか?助たからお返しで助けてくれたと思ってたんだけど……他に何が。
「か、かっこよかったから」
「かっこよかったからなのじゃ?」
「むむ、それは聞き捨てならない」
「そ、それはセラフィのこ……ことなの⁉︎」
へ?かっこいい……いやでもそれって竜の時の俺の事だよな。
あれ?そうだよな、なんか自信なくなってきた。
ということは何?俺の竜の姿がかっこよかったということ?
リリィはこちらをチラチラと見ながら両手で顔を隠していた。
レティスはリリィをジト目で睨み、ルミリアは驚いた表情で俺とリリィを交互に見渡していた。
「ぐ、具体的にどこがかっこよかったの?」
「目……それと肌」
「目⁉︎肌⁉︎」
肌というより鱗だな、それよりもしかして……ルミリア勘違いしてない?人としての俺の事だと思ってる?
ないない、ルミリアはそんなバカじゃ……。
「あとは翼もかっこよかった……かな」
「翼⁉︎翼なんてどこに生えて、セラフィのどこに翼があるの?」
ダメだこりゃ、ルミリア完全に勘違いしてるわ。
俺の方見て「やっぱりないよ!」なんて言ってるけどそんなルミリアもかわいいなんて思う俺はもっとバカなんだと思うけどな。
やっぱりルミリアかわいいな、驚いた表情もかわいいし。
「私ドラゴンとかそういうのに目がなくて、それで邪神竜なんて初めて見て興奮しちゃったたんです」
それを聞き数秒間、ルミリアの口は空いたまま塞がらなかった。
静止しているルミリアを気にもとめずリリィは話し続ける。
「で、ドラゴンが私を助けるなんてことありえませんし本来邪神竜には存在しない魔力が大量に見えましたし呪いの様な痕跡も見受けられました」
「さらっと言ってるけどそれ凄い事だからね?でもお陰で助かったからな、ありがと」
俺は軽く頭を下げ感謝を口にする。
リリィは慌てた様子で「顔をあげてください!」と何度も話す。だが周りでレティスとアイリスがカチャカチャと音を立てながら女の子とは思えないスピードでご飯を掻き込んでいたので聞き取りづらかった。
そんな事を考えているとレティスがもじもじしながらこちらへとてくてく歩いてきた。
両手を後ろに隠していて目は泳ぎ口はわなわなと動いている。
なんだ?レティスらしくないぞ?レティスの目が泳いだところなんて初めて見た。
「ん?どうしたレティス」
「私のせいで大変な目にあったから……お詫びの気持ち」
そう言うとレティスは後ろに隠し持っていたリンゴの様なものを差し出した。
美味しそうに熟れた真っ赤なリンゴからは甘い匂いが漂っていた。
「くれるのか?」
「食べて食べて」
一口かじると口いっぱいに甘みが広がり一噛みするたびに甘さが強くなっていく。
これなら何個でもいけるな。俺個人としてはもう少し甘さ控えめでもいいと思うがそれでもすごく美味しかった。
「これは、なんていう果物なんだ?」
「まだ名前はない、美味しかった?私が作った果物だからセラフィムの口に合うか心配」
「レティスが作ったのか、凄いなレティス。こんな美味しいもの作れるなんて思わなかった、ありがとなレティス。それと肉の事はもう怒ってないから気にしなくていい、いつも通りでいいから」
レティスは嬉しそうな表情を浮かべ俺の元へと駆け寄りいつものように膝枕を楽しんでいた。
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パーティが終わり各々が自室へと戻る中ルミリア、ユスティシー、アイリス、サナファルは広々とした部屋の中にいた。
ここは魔王城内部にある料理場、学校でいえば家庭科室である。そんな所で今4名の美少女達の目の前には山菜、肉、魚介類などがズラリと並んでいた。
「どうしてこんな所に連れてきたのじゃ?
何も教えられずに連れてこられたユスティシーは不思議そうにしていた。
「アイリスちゃん、サナファルちゃん……言うよ?」
「うん、ルミちゃんお願い」
「おっけーだよ!ルミリアちゃん!」
妙なのじゃ、ついてきてと言われてついてきたのじゃが厨房で何をする気なのじゃ?全くわからないのじゃ、少し嫌な予感がするのじゃ。
「「「料理を、教えてください!」」」
「…………任せるのじゃ!」
一瞬固まったユスティシーだったが3人の真剣な表情を見て快くそう返事したのだった。




