七十一話 邪神竜を倒すそうです
「…………ねぇレティスさん?一つ聞いてもいいかな?」
「ん?なに?」
「なんで俺がレティスを抱えて邪神竜から逃げにゃあならんのだぁぁ‼︎」
右腕と脇の間に挟まれて俺に運ばれるレティス。
後ろからは邪神竜が森を焼き尽くしながら追いかけてきていた。
「そりゃあ私も狙われるに決まってる」
「……それはいいとして、なんで魔法が使えないんだよぉ‼︎」
「それは……私も初めて知った。びっくり」
「びっくり。じゃねぇし!」
なんで魔法使えないんだよ!いくらなんでも強すぎじゃね⁉︎
『邪神竜が張った結界の外に出なければ魔法は発動出来ません』
『……はい、だいたい分かります。ありがとうございます』
どうするよ……魔法が使えないんだよな。
だとしたら純粋な力が……あっ!そうだ!。
相棒に任せよう。
『助けて相棒ー!』
『ん?あぁ、いいぞ』
『さっすが、相棒!』
『はいよ、変わるぞ』
「レティス?今から邪神竜倒すからちょっと降りて」
「ん?倒す?なに言って……」
「とりあえず降りる!」
意識がだんだんと遠のいていく。
次の瞬間、俺は草原の上にいた。
「ひっさしぶりに外に出たぜ」
「あれ?セラフィム?髪が赤いよ?」
「ちょっと待ってな嬢ちゃん」
「嬢ちゃん⁉︎」
ふふ……嬢ちゃんって。
『じゃあちゃっちゃとやるぜ?』
『……いける?』
『余裕だな』
『じゃあ頼んだ!』
どうやって倒すんだろ……それよりもレティスが驚き過ぎてヤバイな。
口が半開きだもん。
「んじゃまぁ、やりますか」
「えっ?ちょっとまっ」
「おりゃあ!」
相棒は突撃してくる邪神竜の背後に回り、尻尾を掴み力任せに投げとばす。
竜を投げとばすとか……流石相棒。
「そんな……邪神竜を投げた?」
「少し待ってな嬢ちゃん、すぐ片付けるからよ」
「え?」
投げられた邪神竜は、鋭い眼光でこちらを睨みつけていた。
確かに……投げ飛ばされたら警戒するわ、
ドラゴンだし。
「グルァァァァ‼︎‼︎」
思わず耳を塞ぎたくなるくらいの咆哮を上げた後、獄炎の炎を一直線に吐き出してきた。
『まてまてまてまて!なんで突っ込む!避け!あぶなぁぁぁぁ!』
『落ち着け、大丈夫だ』
あろう事か相棒は一直線に突っ込んでいく。
「セラフィムなにやっ」
「ドンッ‼︎」
相棒は炎が触れる寸前に拳を繰り出した。
すると、さっきまでの勢いが嘘のように無くなり向きを変え邪神竜を包み込んだ。
『今のなんだよ!なんであんなの打ち返せるんだよ!』
『だからいったろ?大丈夫って』
『そういう問題じゃなーい!』
魔法が使えたらなんとかなるかもだけど……素手で……無理だわ、死ぬわ。
「すごい……素手でなんて」
ほらもぉ!レティスが感動してるから!
まぁ……助かったからいいけどさ。
『とどめさすか』
『へ?』
相棒は自分の炎を受けてボロボロになっているマヌケな邪神竜に近づくとドラゴンの頭を引きちぎった。
引きちぎれるの?それ。
『戻るぞ?』
『あぁ、ありがと』
『おうよ』
目を開くと目の前には引きちぎられた邪神竜の顔があった。
「うわっ!」
「ドサッ!」
怖いし汚いしキモいし、何より重い!
相棒、こんなの持ってたのか。
「セラ……フィム?」
「あ、レティス大丈夫?」
「ん、大丈夫。それよりもセラフィムこそ大丈夫?」
「なんともないぞ?」
別に痛い所も無いし動きにくい訳でも疲れてる訳でもないしな。
とりあえず倒せたから良しとするか。
「じゃあサナの為のデザートを取りに行こうか」
「待って、セラフィムはこの邪神竜を魔王城に持って帰れる?」
「魔法使えば行けるだろうけど……持っていくの?」
「持っていく」
SSSランクの素材だし、そのままにしておくのは勿体無いか。
「じゃあちゃっちゃと運んでくる」
「うん、分かった」
テレポート使うか。この場所はもう覚えたし。
俺は邪神竜の身体と頭に手を触れたまま、テレポートをした。
▼▼
「おかえり」
「おう、ただいま」
「じゃあ行こ」
「だな」
レティスに連れられて歩くこと数分。
最初に邪神竜と対面した場所の奥に来ていた。
「…………なんだこれ」
「すごいでしょ?私も初めて見たときびっくりした」
「凄く綺麗だな」
辺りを見回すと色とりどりの花が所狭しと咲いていた。
見たところお花畑みたいだ。
「見つけた、ここ」
「ん?なにを見つけたんだ?」
「デザート」
「おぉ、ミッション達成だな」
「袋持って来たから詰めて帰る」
「おう!」
レティスの指差す方を見ると、イチゴ見たいな物、梨見たいな物、ぶどう見たいな物……えっ?あれ?見たことあるぞ?
その後、袋いっぱいに果物を敷き詰めテレポートで魔王城へ帰還した。




