七十話 相手にとって不足はないようです
「あっ、サナの誕生日なんだ」
「そうなのじゃ!今回も盛大に祝うのじゃ」
「誕生日……ご飯たくさん」
「おぉ、ご飯たくさん」
レティスとアイリスは相変わらず飯の事しか頭に無いんだな……いや、別にいいんだけどね?
「それで?どういう風にお祝いするんだ?」
「それを決めるための会議なのじゃ!」
「100を超えた辺りからネタが無くなって来てね……今回はセラフィムたちもいるから手伝って貰おうと思ったんだよ」
「なるほど」
つまり、思い出に残るハッピーなサプライズを考えよう!みたいな会議なのか。
うーむ、サプライズか……誕生日といえば、思いつくのはケーキとかプレゼントかな?
「で?今回のお誕生日パーティーはどんなことすんの?」
「そこを考えるのじゃ」
「…………」
おぉう、大分適当だな。誕生日にされて嬉しい事……やっぱりパーリィなバーレルでしょう。
チキンだチキン!チキンが無けりゃはじまらねぇぜ!
「……チキンだ」
「ん?なんといったのじゃ」
「誕生日はチキンだぁぁ!」
「ちきん?聞いた事がないね」
「むっちゃ美味しいぞ……やっぱりパーリィバーレルは必要不可欠だぁ」
「「食べ物やったぁ!」」
レティスとアイリスの喜びの声だけが木霊した。
「ちきんだっけ?鳥料理の事だったんだね」
「そうそう、唐揚げとかフライドチキンとか甘い物も揃えたほうがよろしいと思われる」
「よく分からないけど……肉と甘い物でいいのかい?」
「ダメダメ、レティスやアイリスじゃないんだからさ。肉焼いときゃいいやみたいな考えダメぜったい」
「すごい失礼、その通りだけど」
「そうだよ、その通りだよ」
言いすぎたかな?事実だし許してくれ。
やる事も決まったし早速やりますかね。
「この中で料理が出来る者、速やかに挙手」
周りに目をやると手を挙げていたのは3名、
ユス、アンネロッタ、ルシウスの3名だ。
「その3人は厨房にいくぞー」
「私達は何をすればいいかな」
「そうだな、ルミリアとファミスタで盛り付けとか頼む。クラークはサナにバレないようにしてくれ」
「「はーい」」
「はいよ」
ファミスタって意外と手先器用だからな……
能力はフルに活かしてもらわないとね。
さて、残ったのはアイリスとレティスだな。
「「私達はー?」」
「味見係」
「「やったぁー!」」
適材適所だな、味見係は特に。
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「やっぱり魔界の素材すごいな」
「魔素が濃いからなのじゃな」
「おいしいね」
「うん、サクサクしてるー」
「なるほど、よし!どんどん作るぞ!」
「「「はい!(なのじゃ!)」」」
目の前にあるのはから揚げもどきとフライドチキンもどき。そんなに忠実に作っていないが素材のお陰で結構な完成度になっていた。
甘い物が欲しいな……
「アンネロッタとルシウスはそのまま作ってくれ。自分の好きな料理とかでもいいからじゃんじゃん作って」
「わかりましたわ」
「りょーかい」
流石にから揚げとフライドチキンだけじゃ飽きるもんね。美味しい料理とか分からないから後は任せよう。
「ユスは俺とデザート作りな」
「任せるのじゃ!」
とはいったものの……甘い物……甘い物。
何か良いものは無いかな。
果物……あるのかな。ケーキ……作り方分かんない。甘い物……甘い物。
「どうしたのじゃ?」
「いや、甘い物は何がいいのかなってさ」
「じゃあサナファルの好きなアレを作るのじゃ!」
「ん?サナの好きなアレ?」
「仕込みがあるからセラフィムには働いて貰うのじゃ」
「??」
「レティスー、サナファルの好きなアレを作るからセラフィムを案内して欲しいのじゃ」
「おーけー」
果物でも取りに行くのかな?
「セラフィムでも手こずるかもね」
「たまには痛い目に会うくらいがいいのじゃ」
あれ?穏やかじゃないぞ?
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「こっちこっちー」
「大分遠いな」
「当たり前、あんな奴が近くにいたら大変」
「そんなに強いの?サナの好きなアレって奴」
「いや?でもそこを守ってる魔物がすっごい強いの」
「あー、まじか」
そんなに強いの?神絶魔法ならワンパンだと思うんだけど……
「ついたよ、あそこにいる」
「え……見たことあるような」
目を凝らして奥を覗いてみると、漆黒の鱗を身にまとったドラゴン。
確か邪竜だったっけ?
「邪竜?」
「ん?惜しいね、邪神竜」
邪神の進化後的な?ランクどのくらいなんだろ……
『SSSランクです』
『…………ありがと』
『どういたしまして』
相手にとって不足なし!ボッコボコにしてやるぜぇ!




