六十八話 レティスと勝負するようです
「あのさ……俺って戦うために呼ばれたんだよね?」
「そうだよ?」
「でさ、なんで俺の膝の上に乗ってのほほんとしてるの?」
「スリスリきもちぃ」
「俺の必要性……」
「スリスリ」
だぁもぉ!ほのぼのしてるじゃん!大変なんじゃなかったのかよ⁉︎えぇ⁉︎
みんな楽しそうに温泉入ったり魔界の料理に舌鼓を打ったり……旅行か!
「んー暇だな」
「じゃあ久しぶりにやる?」
「へっ?」
▼▼
やってきたのは俺がよく修行をしていた場所。周りには森とか野原とか湖がある。
「戦うの?」
「いや、魔法の強さで勝負」
「ほうほう……どんな?」
「使う魔法はなんでもあり。よりここら辺を破壊できた方の勝ち」
「俺が負けたらどうなんの?」
「一緒に温泉に入ってもらう」
「………………」
負けられない戦いだな……久しぶりに本気を出せそうだしおもしろそうだ!
「よし、じゃあ先にどうぞ。俺は上の方に行ってくるから」
「ん、私も」
レティスの本気か……どんくらいなんだろ。
「いっくよー……えいっ」
レティスは野球ボールくらいの真っ黒な球を投げた。放たれた球はゆるりゆるりと地面へ落下していく。
「ドゴォォォォン‼︎‼︎」
突如、真っ黒な球が爆発音と共に大きくなってこちらに向かってくる。
「あぶなっ!」
さらに上空へ向かう。
なんとか免れたようだ。
「おーいレティス!危ないじゃん!」
「セラフィムはあれくらいで死なない」
「なにはともあれ随分とやったな」
地面に降りて確認する。森は消滅し野原は抉れ湖は干からびていた。強っ!
「やりすぎじゃね?」
「このくらいしないとセラフィムは手を抜くから」
「過大評価しすぎだろ」
「次はセラフィムの番」
「はいよ」
どうすっかな……なにかいい魔法は……
『神絶魔法の使用をお勧めします』
『うぉ……久しぶり……これ話せてる?』
『はい、聞こえております』
『えっと神絶魔法だっけ?そんなの覚えてないけど』
『対象に手をかざして魔力を練ってください。後は私がやりますので』
『おぉ、なんかすいません。お願いします』
『はい』
ふぅ……えぇぇぇ⁉︎頭の中の人と喋れたぁ⁉︎
相棒に喋るみたいに話したらいけた!すげぇ!
「魔力を練って……ねぇ、レティス?あそこの山って壊していいの?」
「いいと思うよ?でも流石にセラフィムでもあの山は壊せない。あそこは貴重な資源があるから魔王全員で結界を張ってる」
「人とかいない?」
「誰もいない、まず壊れない」
よし、度肝を抜いてやろう。あとでユスに怒られそうだけど仕方ない!やってやるぜ!
右手を前に突き出し山に向ける。力を集中し
魔力を限界まで練る。
『使用可能です』
『じゃあお願い』
『はい、対象はあの山で大丈夫ですね?』
『そうそう』
『では、右手を上にあげてください』
『あっはい』
頭の中の人優しいな……
『術式実行…………完了。発射』
直後右手から何かが発射される。
練っていた魔力もなくなっている。
山の方を見てみると太陽ぐらいに輝く何かが
山に向けて落下していた。
「あれか……」
「無理だよ、もう少しで結界に弾かれる」
「まぁ見てなって」
輝く何かが山に落ちる瞬間、山を包む巨大な
魔法陣が浮かび上がり食い止める。
「ふふ、セラフィムのまけー」
しかし、魔法陣が食い止めたのもつかの間。
およそ5秒後に魔法陣が大きな音を立て砕け散った、その2秒後に山だけでなく辺りは一面焼け野原になった。
「…………あうぅ」
「どうしたのレティス」
「こ……殺される」
「誰に?」
「ユスティシー……」
確か貴重な資源が……魔王が全員で守るほどの資源が消滅したのか。なるほど、俺も殺されそうだな。
「私を呼んだのじゃ?」
「…………あぅぅ」
「ユス⁉︎」
「どうしたのじゃ?私はこれから山に行って資源を調達……ないのじゃ!山がないのじゃ!」
どうしよ……殺され……よし、危なくなったら最近相棒が開発した転移魔法で帰ろう。
そうしよう。
「レティスゥ……セラフィムゥ……」
「私はやってない!セラフィムがやった!」
「おいおいまてまて!俺は……」
「ほほぉ、セラフィムは死にたいようじゃな」
「…………さいなら!」
転移魔法を使い魔王城まで一瞬で戻る。
「危なかったぁ……」
「どうしたのセラフィ?」
「ユスティシーに殺される所だった」
「えぇ⁉︎」
なんとかまいたようだ……
「よかったぁ……怒ったユスは怖い……」
「誰が怖いのじゃ?」
突如、目の前に大きな扉が現れユスティシーがお怒りの表情でこちらを睨みつける。
「…………さいなら!」
再度、転移魔法を使い魔王城の遥か上空へ転移する。
「流石にここなら……」
「ここならなんなのじゃ?」
「うわぁ!」
目の前にまたもや大きな扉が現れ、ユスティシーがお怒りの表情でこちらを睨みつける。
「なんで分かるんだよ!」
「勘なのじゃ」
「…………さいなら」
これから数時間に及ぶ転移を使ってのリ○ル鬼ごっこは俺の勝ちで終了した。




