六十一話 モテ期が遅れてやってきたようです
「う……美味い!」
「そりゃそうっすよ!むっちゃ高いっすから」
「じゃあこの高〜い料理を人のお金で食べてる気分を聞かせてくれたまえ」
「最高っす!」
全く素直な奴だ……まぁそんな事しなくてもおいしいんだけどね。
「でもセラフィは騙されやすいね!」
「うんうん……ほっぺにキスした後にルミちゃんを見て焦ってた」
「いや……焦るだろ……彼女に浮気現場見られたって事だぜ?焦らない奴は余程のたらしか鈍感クソ野郎だけだよ」
「「「「?」」」」
4人とも顔を斜めにしていたが放っておこう。
やけ食いしなきゃいけないし。
その後もみんなと楽しく話をしながら最高の料理をお腹いっぱいになるまで食べお会計が8万コインとか大変な事になった。
その日は、夜遅くに帰り着きヘトヘトだったのでそのままベッドに倒れこんだ。
「起きて〜セラフィ!遅刻しちゃうよ〜」
「んぁ……」
「ほら起きて!」
「ん……」
「起きないと先に行っちゃうよ?」
「おはようルミリアいい朝だね」
「早く準備しなきゃ遅れちゃうよ?」
「すぐ準備する」
全く……置いていくとかひどい事言うなよ……
目が覚めちゃったじゃないか。
今日も学校、明日も学校、授業が魔法についてだから楽しいのが救いかな。
▼▼
「おはようルミちゃんにセラフィム」
「おはようございますわルミリアさんセラフィム様」
「おはよっすよセルリアスさんにセラフィム」
「うん!おはよう!」
「朝から元気だな」
教室では、もうほとんど席が埋まっていた。
遅刻気味だから当たり前か。
おっと……急いで自分の席に着かなきゃな。
「ガラガラ」
「起立!」
担任の先生が扉を開けて教壇に立ちそう言った。
先生からの連絡が終わり、今から授業だ。
確か今日は……そうそう魔法基礎だったっけ?魔法基礎ってのは、文字通り魔法の基礎。
詠唱を覚えたり初級魔法の応用をしてみたりみたいな感じだったな。はっきりいって退屈ですね。
「では!初級魔法大全を出してください」
初級魔法大全とは、いわゆる教科書といったところかな……その名の通り初級魔法に大切な事がびっしり書いてある。
「ん?」
机の中に手を入れると違和感を感じた。
あれ?ちゃんと持って帰ってなかったっけ忘れ物してたのかな……
取り出してみるとそれは手紙のようにキチンと折られている紙だった。
あ〜女子が手紙回す時こんな感じの折り方してたなぁじゃなくて!こんなの知らないぞ!誰か入れ間違ったのかな……
「あれ?」
手紙を凝視していると、「カサッ」とGの這い寄る音がした。
えっ……まだ何か……意を決して手を再び突っ込むとまた手紙らしきものが入っていた。
しかも今回は3枚。
なに……俺の机郵便局にでもされちゃったのか?にしては宛先も住所も書いてないし……あと郵便番号も。
ん?そこで俺は不可解な文字を見つけた。
『ハルバート セラフィム様へ』
「…………」
これっていわゆる……青春を送る中学生や高校生に起こると言われている……リア充への道のりを案内してくれると言われる魔法のアイテム『ラブレタァ』
じゃあないですか?違いますか?
自惚れるな俺!脅迫とか悪口かもしれないぞ!最初に悪く思っておけばダメージが少ないとか誰かが言ってたぞ!
恐る恐る手紙を開いて読んでみる。
『ハルバード セラフィム様へ
この度は勝手ながら手紙を送らさせて頂き
誠に申し訳ありません。
私は、貴方の事をお慕い申しております。
もしよろしければ、今日の午後私の部屋に
来ていただけると嬉しいです。
エルランド ルルシュ』
紙の裏には部屋の番号が書いてあった。
おい待て待て待て待て……そこはちゃんとさ?
空気読んで脅迫とか脅迫とか脅迫とかにしてくれよ。まぁルミリアがいるから断るんだけどね!あ〜もったいね!
次行くか!
先生にバレないようにコソコソしながら俺は2枚目の紙を取り出した。
「ふぅ……やっと読み終えた」
他の手紙には、『貴方が好きです!』とか
『私と付き合って欲しい!』とか終いには、
『貴方に財産を相続しますので……』とか
メールアドレス流失しそうなラブレターまで来た。
結果全部ラブレターでした。はい。ルミリアと付き合った途端にコレですよ。モテ期ですか?モテ期は日本で寂しく非リア充していた時に来てほしかった。
全部嬉しいけど全部断る。当たり前だ俺は
ルミリアが好きだからな!二股なんてしないぜ!
今の言葉がフラグにならないように祈っとこ。
なんにせよ授業が終わってからだな!
断るのって告るのと同じくらい勇気いるんじゃね?
それはないか。
手紙をくれた人たちも勇気を振り絞ってくれたんだと思うし全力で断らせていただこう。
▼▼
今日の授業がようやく終わった。
「セラフィ!帰ろ!」
「あっごめん!ちょっと行かなきゃいけない所あるから先に行ってて」
「うん分かった」
「ごめんね」
「ううん!全然いいよ!でも早く終わらせてくれたら嬉しい……なんて」
「おう!愛しの我が君のため早く終わらせてくるよ」
「ありがと!」
ほらな、ルミリア可愛いルミリアマジ天使。
そういうわけで!早速手紙に書かれていた
部屋へと直行だ!急げ急げ!
「えーっと?ここでいいのかな?」
目の前の扉と手元の紙を交互に見回して確認する。
すげぇ緊張するな……
「すいませんハルバートですけど」
「どうぞお入りください」
「ガチャ」
お許しが出たため俺は扉を開け中に入る。
ふふん。確認したから漫画みたいなラッキースケベは起きないぜ!舐めるなよ!
「失礼しまっ……」
そこには、まるで吸い込まれそうに鮮やかな藍色の腰まで垂れ下がる長い髪。整った顔。
不意に視界に映った細っそりとしたくびれ。
ここまでならまさに美少女、絶世の美少女なのに
下着姿でこちらに向けにこやかに笑っていた。
ラッキースケベ不可避……その言葉が突然、
脳裏に浮かんだ。




