四十六話 仲間になる事を決めた様です
「ふぁ〜あぁ」
俺は両手を伸ばし欠伸をする。
「んっ…セラフィ?」
するとルミリアが目をこすりながら顔を出す。
「ちょっと行く所があってね」
「んっ…いってらっしゃい」
俺は着替えを済ませて部屋を出た。
今日は学校が休みなのでダンジョンに行こうと思う。
「とりあえず…腹ごしらえでも…」
途中、お店に寄ってタコスのようなものを買う。
むしゃむしゃ…うんおいしい…けど……
やっぱり白飯食いたいな…
そんなことを考えながらダンジョンへと足を運ぶ。
「疲れるんだよな…ふぁ〜あ」
口を押さえながら、ため息をつく。
でもまぁ、仕方ないか…
俺は最下層を目指してダンジョンへと
足を踏み入れる。
〜移動中〜
「ギャャャャス!」
「シュ!」
俺は面倒くさいので軽くかわして逃げる。
〜移動中〜
「ゴルバァァァ!」
「ほいっ!」
またもや華麗に避けて逃げる。
〜到着〜
「マジで遠いな…」
俺がボソッと愚痴を零すと、魔族の男が
こちらに歩いてくる。
「やぁ!随分と早かったね」
「まぁ…それじゃ魔王の所までよろしく」
「じゃあ早速…デモンズ ゲート!」
扉が現れ俺は躊躇なく扉を開ける。
「にしても、この魔法便利だよな…」
「逆にこの魔法なかったら、魔界まで行くの
面倒じゃん」
「確かに…」
この前気になって調べた所、シュバルツから
一番近い魔界までおよそ10,000キロメートルだとよ…
そんな話をしながら魔王城に入ろうとしたら
外に魔王 シナオール=ユスティシーさんがいた。
「何してるんですか?」
「花に水やりをな」
かわいいなおい…魔王が花愛でるとか聞いたことないぞ?もしかして魔王さん意外と乙女チック?
「かわいいだろ?」
魔王は一つの花を指差す
花は白色で、ゆりの花の様に綺麗だった。
「うん…かわいいな」
すると魔王は、笑顔で花の水やりを再開した。
花の水やりが終わり、ただいま魔王の部屋にいます。
「で?仲間になってくれるのか?」
「その前に一つ聞きたいことがある」
「なんだ?言ってみろ」
「俺が魔王の仲間に加わったとする、
そしたら俺は魔界で生活する事になるのか?」
「すまないが、そういう事になるな」
魔王は申し訳無さそうに言う。
「その間にルミリア達に何かあった場合は?」
「その点は安心していい、私の配下を付ける
万が一なんて起こさせやしない」
魔王は自信満々に言う。
「じゃあ、その点はいいとして…俺がやることってのは何かあるのか?」
「とりあえずは修行と他の魔王達に挨拶だな」
「挨拶⁉︎修行はわかるけど…ってか他にも
魔王いるの⁉︎」
「私を含めて5人いるな」
うわぁお…魔王ってそんなにいちゃいけない気がするんだけど…
「でもどうしよう…ルミリア達になんて話せば…学校だってあるし…」
「それなら記憶封印を使えばいい」
「なにそれ…」
「魔法だよ、相手の封印したい記憶だけを
封印する事ができる魔法」
「えっ…それってもうルミリア達から見たら
俺は知らない人ってこと?」
そんなの嫌だな…
「封印だから戻したい時に戻せばいい」
なるほど、封印があれば解放もあるのね…
「悲しいけど…それがルミリア達のために
なるんだからしかないか……なるよ俺、
ユスティシーの仲間に」
「おぉ!なってくれるか!じゃあ早速
記憶を封印に行こうか」
「えっ?一緒に行くの?」
「この魔法は相手の体に触れる必要があるからな」
「わかった、よろしく頼む」
「では、デモンズ ゲート」
目の前に現れた扉を開け、ダンジョンの最下層から上がり、自分の部屋の前まで来た。
扉を開けるとルミリアは机に座って勉強をしていた。
「おかえりセラフィ!」
「ルミリア…ちょっといいか?」
そう言って俺はルミリアを抱きしめる。
「どうしたの?今日のセラフィなんかおかしいよ?」
と言いながらもルミリアも抱きしめ返してくれた。
30秒くらいたっただろうか…そっとルミリアを抱きしめていた腕を離す。
「これからはちゃんと勉強して ご飯も食べて
楽しく笑って……」
そう言いかけたところで涙が溢れて来た。
「えぇっ!なんで泣いてるの⁉︎」
俺はゴシゴシと涙を手で拭い、再び話す。
「これからは楽しく笑って過ごせよ?
また会えるのはいつになるかわからないけど
絶対守れるようになって迎えにいくから…」
再び涙が流れてくる。
「なに言ってるか分かんないよ!」
ルミリアは混乱している様だ。
「じゃあ…頼む」
そう言うと扉から魔王が現れる。
「えっと…どちら様?」
魔王は無言でルミリアに近づき頭に手を当て魔法を
唱える。
「メモリー ピッチャーチ」
すると、魔王の手からルミリアの頭の中に
鎖の様なものが入っていく。
鎖が入りきった後、ルミリアは気絶して
倒れそうになるが魔王が受け止めて
ルミリアをベッドに寝かす。
「これで良かったのだな?」
「あぁ…今の俺じゃ守れない事くらいわかってるからな…」
「では、他の仲間の所へと行くとしよう」
部屋を出る前にルミリアの頬に軽くキスを
して部屋を出た。
「アンネロッタ?アイリスいる?」
俺はアンネロッタとアイリスの部屋の扉を
ノックしながら呼びかける。
「どうぞ」
アンネロッタのお許しが出たので、
扉を開け中に入る。
「どうかされましたか?」
「これからは俺なしでも楽しく頑張ってくれよな?」
「いきなりどうかなされたのですか?」
「セラフィムちょっと変」
「だよな…いきなりこんなこと言われても
ビックリするだけだよな…」
俺は無言でアンネロッタとアイリスに
近づいて、2人まとめて抱きしめる。
「どうされたんですか!セラフィム様!」
「……!」
どちらも驚いた表情だが、拒む事はしなかった。
抱きしめた後、魔王が部屋に入り2人に近づく。
「セラフィム様のお知り合いの方ですか?」
「誰?」
魔王は一言も喋る事は無く
ルミリアと同じ様に2人頭に手を当て魔法を唱える。
「メモリー ピッチャーチ」
そして、気絶した2人をベッドに寝かせて
部屋を出る。
次はルシウスか…
「おーいルシウスいるか?」
「はーい!」
扉が開かれ中にある入る。
「話があるんだ…」
空気を察したのかルシウスの表情がかたくなる。
「話ってなにっすか?」
「俺はとある事情で魔界に行くことになった」
「えぇっ!魔界っすか!みんなには話したんすか?」
「みんなには話してない、今さっき
ルミリアとアンネロッタとアイリスの俺に関する
記憶を全部封印してきたところだ。」
「記憶を封印…なんで」
「絶対に止められるからだよ」
「じゃあなんで俺っちには言うんっすか?」
「本当の事を言うと、ルミリアが悪い奴らに
狙われているんだ…でも俺じゃ守りきれない
しかも、俺がいる事によってルミリアが
傷つくかもしれない…それが怖くて、守りたくて
記憶を封印したんだ」
「なんとなく、事情は分かったっす
俺っちは何をすればいいっすか?」
「みんなには幸せになってほしい、
これからの学園生活は一生に一度のものだからいい思い出にしてほしい…だからルシウスお前がみんなを
笑顔にしてやってくれないか?」
「もちろんっすよ、なにせリーダーの
頼みっすからね」
「あぁ…あとルミリアにはくれぐれも男を
近づけるなよ?」
「了解っす!」
俺は、振り返り扉を開けようとする
すると
「帰ってくるっすよね?」
「当たり前だ、お前に任せっぱなしだと
心配だからな」
軽く笑いながら答える。
「なら安心したっす」
「じゃあな、ルシウス俺がいない間頼んだぞ」
そう言い残して俺は扉を開けた。
ダンジョンの前で止まった魔王が突然
「本当に良いんだな?」
「あぁ…頼む」
「ワールド オブ リレイリング」
この魔法は世界の書き換えという魔法で
俺の存在をこの世界から消したのだ。
「これで良かったんだな?」
「あぁ…ルミリア達を
余裕で守れるくらいにならなきゃ…
でも、俺は強いぞ?もっと強くするには
ちょっと難しいんじゃないか?」
「安心しろ私はスパルタだからな
覚悟しておくといい」
「そりゃ困ったな…程々にしてくれ」
「フフ、セラフィムは面白いやつじゃ」
そう言って俺と魔王はダンジョン最下層へ
向けて歩き出した。




