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拓途視点【その18】 俺の人生終わりだ

【念のため、未成年の読者さまへ】


 未成年のみなさんは、ノンアルコールのチューハイを飲んじゃダメですよ! なつは正体が30代のおばさんなので、飲んだくれてもOKですが……。

 2階から階段下りてったら、俺のまん前に、女がバーン! っと立ちふさがった。


「うわ、何だ?」


「いよっ、拓途! ニクいね! この色男!」


 嘘だろ? また来たのか! うちの親戚のオバさん。カナちゃんだ。


 何で、いつも突然アポなしで俺ん家へ来る! それも今、来られたら一番やばい最悪のタイミングだろ!


 2階の俺の部屋には、あいつがいる。見た目は高校生なんだけど、正体は30代のおばさんのあいつ。


 カナちゃんに見つかったら、あいつのこと何て説明したらいいか、わかんねーし。


「ねえ。玄関に、女物のローファーあるよね。あれ誰の?」


 カナちゃんが、めっちゃ嬉しそうに訊いてきた。


 うわ、やばい。今いちばん突いて欲しくないポイントを、『お前スナイパーか!』っていうくらい正確に狙ってきやがったぞ。


 2階にあいつがいるの気づかれる。ごまかさなきゃ。


「いやっ、あれっ……は、サツキの」


 姉のサツキの靴って、ことにしよ。


「サツキ? あんたの姉さんは、あんなカチッとした靴、履くキャラじゃないよね」


 カナちゃん、腕を組んで斜め立ちした。俺の言い訳を、めっちゃ疑ってるっぽい。


 このままじゃ絶対、あいつの存在バレる。どうやってカナちゃんを追い返す?


 俺は脳みそフル回転して、作戦を立てようとした。でもそのとき、後ろから不吉な音が……。


 階段バタバタ下りて来る足音。まさか2階から、あいつが走ってきてる?


 うわあ! 止めてくれ!


 俺がそう思った瞬間、すぐ後ろであいつの声がした。


「拓途、ごめんなさい! ノンアルチューハイなんて飲んで、不良少女みたいだよね。わたしのこと嫌いになった?」


 俺が振り返ったら、あいつは、マンゴサワーの空き缶を持ってた。



「あははは」


 女ふたりで、めっちゃ話盛り上がってる。


 台所のテーブルに、アルミの空き缶がずらーっと並んでて、テーブル挟んだ俺の向かい側には、カナちゃんとあいつが座ってる。


「なつ、あんた面白い子だね」


 カナちゃんが、ケラケラ笑った。


 あいつとカナちゃんが顔合わしちゃったから、しょうがないし、俺はあいつのこと『俺の彼女』って紹介するしかなかったんだ。


 カナちゃんは、あいつが手に持ってるマンゴサワーの空き缶見て、『あっそれ! 新製品じゃん! いいなー、私も飲んじゃお!』って言い出して、うちの冷蔵庫を勝手に開けてさ。さっきから、ノンアルコールのチューハイで、酒盛り始めちゃった。


 俺はノリについてけなくて、テーブルに頬杖ついて、ボーッとしてる。


 しかしこいつら、さっき初めて会ったくせに、『なつ』『カナちゃん』って呼び合ってて、なんかもう『ウチら、昔っからずっと仲いいです』みたいな空気になってるんだけど!


「私と20才も年が離れてるなんて、信じらんないわ。あんた、ほんとに女子高生?」


「ふふふ。ご想像にお任せします」


 あいつは、手に持ったメロンサワーをぐびっと飲んだ。あの缶の中身、アルコール入ってないんだよな? ほんとは酒じゃないのか? あいつ、俺が今まで見たことないくらい、めっちゃご機嫌なんだけど。なんか酔っぱらってないかい?


「なつ、あんたって若いくせに、さっきは『不良少女』とか言ってたし、やたら死語にくわしいよね。『不良』とか、最近めっきり聞かなくなったもん。懐かしすぎて、涙ちょちょぎれるわ。超ウケるーーー!」


 カナちゃんが、手をパンパン叩いてウケまくってる。


 言ってることが、俺にはぜんぜんわかんないけど。『ふりょーしょーじょ?』『ちょちょぎれる?』

 

「あんた絶対、背中のチャック開けたら、中におばさん入ってるでしょ。女子高生の着ぐるみ着た、おばさんなんじゃないの? なつは、昭和何年生まれ?」


「ガビーン! 見破られたか! 53年どえーす」


 ケラケラ笑って、正体バラしてんじゃねーよ! あいつ、だんだん目がすわってきてるし、完全に酔ってんだろ!


「昭和53年? 嘘ぉ! マジぃ? 私と同い年? タメじゃん!」

 

 やばいよ。カナちゃんにあいつの正体バレちゃうぞ。


「ちょっ……何言ってんだ! 平成だろ。俺と同じ平成10年」


 俺はあせって、ごまかそうとした。


「でも、なつってさ、この写真の子とめちゃめちゃ似てるね」


 カナちゃんが、足下のトートバッグから出したのは、分厚い本みたいなもの。


 ん? なんか見たことあるぞ? 表紙に、『KEIAI 1997』って書いてあって……あれ、カナちゃんの高校の卒アルじゃねーか?


 やばっ、あの卒アルに、あいつの写真が載ってるんだ! あいつは、カナちゃんと同じ高校へ通ってたみたいで、クラスは違うけど、学年一緒だったらしいし。


「これ、私の卒業アルバムなんだよね。あっ、この子。ほら! なつにすごい似てるでしょ。下の名前も一緒だね。『神崎奈津さん』って人と」


 カナちゃんは、あいつの写真が載ってるページを、サッと開いた。


 どうすりゃいいんだ。あいつの正体バレたら。


 俺さっきカナちゃんに、あいつを『俺の彼女』って紹介しちゃったしさ。あいつの正体おばさんだってわかったら、不倫したって思われる!


 この前、あいつとキスしたの、不倫ってことになっちゃうよな。だけどあれって、向こうから無理矢理キスしてきたんだけど!


 それに俺、あいつが結婚してて、ケースケって旦那までいるとか、1時間くらい前まで気づいてなかったし。


「あああ、これ、私!」


 あいつが、叫んだ。


 うわあああ、俺の人生、終わりだ! おばさんと不倫したなんてバレたら。


 くっそ。カナちゃん、何でいきなり、卒アルなんて出してくんだよ!

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