<第27話>ミニスカ女子高生、ピンチに陥る!
ううっ、どうしよう。
わたしは女子高生の姿で、途方にくれている。もおおお! わたしってば、どこまでドジなんだ!
娘のはるを母に預けて、うちのアパート帰ってきたとたん、自宅ドアの真ん前で、15才に変身しちゃったの。おかげで、部屋へ入れなくて、閉め出されちゃった。
家の鍵は、今朝、出がけにポーンと服のポケットへ放り込んだまま。だから、変身したときに、着ていた服と一緒に、鍵もどこかへ消えちゃったのかな? めちゃくちゃ探しても見つからないんだもん!
制服のスカートのポケットとか、通学カバンの中もひっかき回したのに、家の鍵なんてどこにもない。
まあでも、大丈夫さ! 元のおばさんの姿に戻っちゃえば、服も元通りになって、鍵も出てくる! と、軽ーいノリで、のんきに構えていたわたし。
そう。2時間前までは――
なぜだ? 今日は、なかなか35才に戻らない。いつもなら、娘のはるを保育園へ迎えに行く前、19時までには元へ戻るのに。
いつもは保育園の近くで、おばさんに戻るの。だから、試しに保育園のそばをうろうろしてみた。もちろん、人に見られないように注意しながらね。それでもダメ。35才には戻れなかったの。
はるを迎えに行けば、おばさんに戻れるのかもと思って、すっごい頑張って、母の家まで歩いて行ったの。車だと5分でちょいちょいっと行ける距離が、歩いたら30分くらいかかったんだよ! ヘトヘトだよ! なのに、元に戻らない。
それでそのまま、母の家に泊めてもらおうかと思ったの。不幸中の幸いというか、仕事は連休をもらっていて、明日もお休みだし。
母の家の玄関チャイムを押そうとして、めちゃくちゃ迷った。結局は、チャイムを押せないままで、引き返してきちゃったよ。女子高生の姿になったわたしを見て、それが自分の娘だと、母はわかってくれるかもしれない。でも、母の再婚相手、佐伯さんには、どう説明したらいいかわからないもん。
もし家に泊めてもらうにしても、佐伯さんにとっては、『この子、誰?』ってなるよね。見ず知らずの女子高生を、なぜ家に泊める? って不審に思うはず。
ぐー きゅるるる
やだ、お腹が鳴っちゃった! はあ、お腹が空いたな。
3時のおやつに苺ショートケーキを食べてから、そういえばもう6時間以上、何も食べていない。
なのに、お金が1円もない。通学カバンの中には、お財布が入っていなかったし。ああどうしよう。同居している弟のケースケも、泊まりがけの仕事で、今夜は帰ってこないはず。
もしも、このまま朝まで、元のおばさんに戻れないとなると、どこで寝たらいいのかな。
まさか、野宿?
こんなミニスカ女子高生の姿で、深夜にうろうろしていると、変態おじさんに襲われちゃうんじゃない? こっ、怖い! どどどど、どうしよう!
「もしもし、お嬢さん」
突然、低い声がして、後ろからポンポンと肩を叩かれる。
「イヤーーーーー、触んないで!!」
わたしはびっくりして、思わず悲鳴を上げちゃった。
「こらこら、お巡りさんは別に、捕まえにきたわけじゃないぞ」
その声に振り向くと、わたしのすぐ後ろに、制服姿のお巡りさんが立っている。40代くらいで、ポコンとお腹が出た、ベテラン警官っていう感じの人。
「こんな時間に、女の子ひとりでどうした? ちょっとお話、聞かせてくれるか?」
お巡りさん、のんびりした話し方で、ニコニコ笑っているけれど、その手は一瞬にして、がっちりとわたしの手首をつかんでいる。簡単には、ふりほどけない。
もしかしてこれって、テレビの警察24時とかでよくやっている、職務質問ってやつ? わたし、不良少女扱いで補導されちゃうの?
親に連絡するとか言われたら、どう言い訳しよう? 『わたし、天涯孤独なんです』って、嘘をつく? いやいや、無理。すぐバレるでしょ!
そこへ、キキーッと大きなブレーキ音をさせて、自転車が滑り込んできた。
「あの、何してるんすか?」
自転車にまたがったまま、ポカンとした顔でこっちを見ている、制服姿の少年。拓途だ!
なぜ、拓途がここに? どうして彼は、15才のわたしがピンチのとき、ヒーローみたいにかっこよく現れるの?
やだもう! 惚れ直しちゃうよ。




