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<第23話>器が大きい

「高校生だって、ほぼ大人だろ? たいして変わんないし」


 拓途は、何でもないことのようにサラッと言う。


 うわーすごい人だ。


 なぜこんな風にサラッと、人を(ゆる)せる?


 わたしが正体を隠していたこと、いつから気づいていたの? 拓途はちっとも態度に出さなかった。


 何て、器が大きい人なの!


 高校生なんて、子どもだと軽く見ていた。拓途はいつもほんわか笑っていて、すれていない子。素直でかわいい、高1の男の子。そんな風に思っていたのに、ぜんぜん違った。 


 35年も生きているわたしの方が、よっぽど未熟じゃないの。わたしなんかが、あと100年も生きたって、追いつけない。


 ひどく恥ずかしかった。ホンモノの女子高生じゃないとバレたら、高校生の男の子が相手にしてくれない! なんて、自分を守ることばっかり考えて、オドオドしっぱなし。バカだよ。


 わたしの頬に、温かいものがつーっと伝う。


「別に泣かなくても」


 ちょっと困ったように、拓途が笑う。夕焼けを背にして、まぶしい彼の笑顔。公園のベンチで、すぐ隣に座っているのに、めちゃくちゃ遠い気がした。


 拓途は、優しいね。


 それに比べて、わたしは情けなさすぎる。さっき、自分の正体を明かしたときも、わたしはずるかった。自分が三十路の『おばさん』だって、ズバッと口にする勇気もなくて、『大人の女』なんて、気取ったこと言ってごまかしたんだ。


 バカで、底が浅くて、つまんない女。


「わたし、しょ……じょ……じゃない」


 涙がドッとあふれてきた。嗚咽で、のどがヒクついちゃう。上手くしゃべれないよ。『わたしって、しょうがない人だね!』っていうことが言いたいのに。


 拓途は伏し目がちに、チラチラと足のあたりばっかり見てくる。気まずそうな顔だ。わたしが言っていること、やっぱり伝わっていないよね。


 わたし、彼を困らせている? 鼻水がズルズルでちゃんと話せないって、説明しなくちゃ。


「は、だか……で……またを」


 うわっ、鼻声ひどいよ! 『鼻がつまったの』って言ったのに……。


「しゃべんな!」


 拓途の手が、わたしの口をふさぐ。後ろから腕を回して、ギュッと抱きしめられた。


「だいたいわかるから、もうしゃべんな」


 拓途の大きな手。あったかい。

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