拓途視点【その8】 彼女ホイホイ大作戦☆パート1
風呂上がり、牛乳飲もうと思って台所へ行ったら、女がいた。
「うわ……ちょっ!」
俺はあせって、首にかけてたバスタオルを、腰に巻く。今はうちに誰もいないはずで、めっちゃ油断して、ボクサーパンツ一丁だったし。
「よっ! 拓途」
テーブルにひじついて座ってるのは、うちの親戚のオバさん。
「何だよ……カナちゃんか」
俺はホッとして言った。カナちゃんは、俺の父親の妹。年は……30過ぎてたかな。俺がオバさんって呼ぶとキレて返事しないし、しょうがないから名前で呼んでる。
「来る前に、連絡とかくれる? いきなりだとびっくりする」
俺は文句たれつつ、カナちゃんの向かいに座る。
うちはカナちゃんの実家なんだし、合い鍵だって持ってるし、来てもいいけど、アポなし突撃はやめてほしい。
「さっき、玄関の前でメールしたよ。『到着ぅ~、今から突入します(ハート)』って」
カナちゃんは、面白がってる感じでヘラヘラ笑ってる。
「風呂入ってたし、見てねえわ」
俺は脱力して、テーブルに突っ伏す。
「家の前からメールって、それじゃ服着るヒマねーし」
「あはは。隠すほど立派な身体じゃないから、いいじゃん!」
カナちゃんが、俺の肩をバシーンと叩く。
「拓途、あんたヒョロヒョロだね。そんなんで、よく彼女ができたもんだ」
カナちゃんは、感心したみたいに言う。
「はっ?」
俺はびっくりして、顔上げて、カナちゃんを見た。
俺に彼女できたって、なぜ知ってる?
「かわいい子なんだってねえ。お肉屋のおばちゃんに聞いたよ! ここ来る途中に、ばったり会っちゃって。ウフッ」
噂が大好物です! って書いてある、カナちゃんの顔。
「反応薄いなー。おばちゃんの店で、一緒にコロッケ買った子が、拓途の記念すべき初彼女なんでしょ? ほーらほら、もっと浮かれなさい! いいのよ。浮かれても。それがフツーだもん。だいたいみんな、初めての彼氏や彼女できると調子こいて、イタい人になるからね」
「う……ん」
俺はどう返していいか、わかんない。
なつは、俺とつきあえてホントに嬉しいのかな? どうでもいいんじゃないか? 俺みたいに、何も行動できない奴。
昨日は、もう5cm前へ出てたら、なつとキスできた。なつがリードしてくれてたのに、俺は踏み出せなかった。しょーもないヘタレだ。つきあおうって言えたのも、なつがRINEできっかけ振ってくれたおかげ。俺、自分で言い出せるほど、ハート強くない。
今日は、キスまでは無理かもしんないけど、手ぐらいつなぎたかった。つきあえてめっちゃ幸せだって、なつに言いたかったし、ずっとこのままでいれたらと思ってた。だけど、俺が学校でドジったせいで、なつとの待ち合わせに遅れちゃって、まったく会えず。
なつにはRINEで謝った。そのあと、ずっと“読んだ!”のマークがついたまま、返事来ない。勇気ギュッとしぼり出して電話もかけたけども、なつは出てくれない。完全に無視されてる。
「やだなあ。どうしてそんなに暗いの?」
カナちゃんが、呆れたみたいに訊く。
「まさか、彼女と喧嘩でもした?」
「うーん」
俺は、上手く答えらんない。
現状それよりひどい。なつがしゃべってくんなきゃ、喧嘩すらできないし。
「もしかして、彼女の前で、そういうハッキリしないしゃべり方した? そりゃまあ、あんたと話すのもイヤになるだろうね。あのね。たぶん、彼女がキレてんのは、拓途のそういうグダグダなところだよ!」
カナちゃんは、ドヤ顔で言い放つ。
「あーそーなんだー。彼女が冷たいんだねえ。あんたは黙ってても、表情見てたら全部わかるわ」
くそっ。完全に俺のこといじって楽しんでるな。カナちゃん。
「ふふーん。じゃあ、彼女から進んでホイホイ連絡してくる方法、教えてあげよっかな?」
カナちゃんは、えらそーに腕を組んでる。
「よーく聞きなさいよ! 題して、彼女ホイホイ大作戦」
「何だよ、それ」
なつをゴキブリみたいに言うな! と、俺は心の中でツッコんだ。




