拓途視点【その7】 急げ!
今は、授業中なんだけど、終わるの待てずに、机の下へスマホを隠してチラ見してる。
もうすぐ学校が終わるから、ダッシュで駐輪場に行く。それで、自転車を限界までガンガン飛ばして、海へ行く。昨日は、なつの方が早く来て、俺を待っててくれたから、今日は、俺が先に着くんだ。そしたら、ちょっとでも長く、なつと一緒にいられるし。
俺が先に来てるのに気がついたら、なつは、どんな顔すんだろ。嬉しそうにしてくれるかな? こっち見てパアッって笑顔になってくれたら最高だな。俺、めっちゃ照れると思うけど。
第一声は、何て言う?
「これからよろしく。ずーっと、一緒にいような!」
とか、言いたい。めっちゃ言いたい。その流れで、握手なんかして、どさくさにまぎれて手つないだりしたい。
「YOー! 楽しそうだな」
あれ、何だ? この声は。ああ、そうか、俺の心の声だ。俺が何かしようとしたらいつも、ラップ調の合いの手でチャチャ入れてくるんだよな。
「タ・カ・ハ・シ。ニヤニヤ笑うて、コソコソ何をやっとるんや。早う、そ・れ・出・せ」
「えっ?」
なんか違う。心の声とちょっと違う。いつもより声がガラガラしてて、オッサンっぽいような……。
「高橋! スマホを隠しとるだろ。早う、机の上に出さんか!」
「はいっ! すいません!」
俺は、あせって立ち上がる。
やば。こっそりスマホいじってたのが、先生にバレた。
☆
やばやばやばいよ! 急げ、俺!
俺は、自分の限界なんか無視して、ガンガン自転車こぎまくってる。
あー、ホント俺、何してんだろ。授業中にスマホをいじってたのがバレたせいで、帰りがめっちゃ遅くなった。
【職員室に呼び出し】
【説教】
【反省文、書かされーの】
【急いでテキトーに仕上げたら、書き直し命じられ】
【反省してねえな! と、また説教】
ていう、こってりフルコース説教。いつもより1時間くらい、帰るの遅れた。
どうしよ? なつには『ごめん! 今から、学校出る!』って、LINEのメッセージ送ったけども、“読んだ!”ってマークがついてない。なつは読んでないのか? 遅れるって伝わってんのかもわかんない。とにかく、全力で急ぐしかないっしょ!
曇ってどんよりしてた空が、どんどん暗くなってく。日が暮れてきたんだ。
なつは19時までに、ちっちゃな妹を迎えに、保育園へ行くって言ってた。今から海へ行ったって、なつはもう、いないかもしんないな。今日は、なつに会うの無理か。何をやってんだ、クソバカ俺! ……いや、待てよ!
キキーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ。
俺は、自転車の急ブレーキかけた。
あれ? 俺、バカか? 海じゃなくて、保育園に行けば、なつに会えるかも! なぜそこに早く気がつかない!
クルッと自転車の向き変えて、俺は全力で、保育園へ急いだ。




