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西暦2068年10月4日午前10時04分のことだった。この時から、新たなる常識、世界に生まれ変わってしまったのである。
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白い白い部屋の中。何も何も聞こえない。見えるものは円卓と四人の天使、そして誰も座っていない質素な椅子が一つ。
「もう私たちでは無理なのですね」
白い豪華な法衣をまとった天使が言いました。
「オレタチノチカラデハナ。モウカラッポダゼ」
朱いボロボロのコートをまとった天使が言いました。
「世界を支えるって思ったよりキツかったね~」
薄い紫色の波打つようなドレスを着た天使が言いました。
「まあ、その役目も終わるっすけどね」
煌びやかなスーツの天使が言いました。
キリスト教の四大天使が集まっていました。神の姿はありません。この世界に顕現することが不可能になり、さらに上の次元に昇華してしまったのです。神のチカラは地上に降り注ぎ様々なものを進化させました。しかし、神がいなくなったことで世界を支える存在が減って《・・・》しまったのです。代わりに四大天使が支えていたのですが、時代が流れるに連れ、信仰者が減り、チカラも足りなくなってきました。
「おお、神よ。貴方様は何をお望みなのですか」
「シラネー。ッテイウカ、ハヤクヤルゾ」
四大天使は円卓に背を向けました。其々が光を放ち、その光が強くなるほど存在は薄くなってきました。
「キリスト教も終わりかぁ。結構、ほかより持ったほうだったねぇ」
「残っているものといえば、仏陀ぐらいじゃないっすか。新参者に負けちゃったっすね」
天国や地獄に逝くというより、輪廻転生のほうが科学的にも信じられ、まだ信者も細々といるのだ。
「俺っちは転生できるのが楽しみなんっすけどね」
「オレタチグライナラ、キオクモモッテイケルダロ。カラダハザコダガナ」
「やっぱり続きからより、はじめからのほうが燃えますね~」
「神はもういない。新たなる主を探すしかないのですね」
彼らは笑っています。次なる未来を夢見て。この世界の可能性を信じているのです。
「あなたも上に立つ力があるのにねぇ~」
「私は上に立つよりも、主を見つけそのために生きていたいのです」
「サスガ、イヌノヨウダナ」
「Mとも言えるっすね。ドン引きっす」
彼は主に仕えて生きることが至上の喜びです。
彼は自由に生きることが至上の喜びです。
彼女はゆっくりと生きることが至上の喜びです。
彼は刺激的に生きることが至上の喜びです。
「それではまたいつか。主の御加護があらんこと」
「ジャアナ」
「まったね~」
「さいならっすー」
白い白い部屋の中。何も何も聞こえない。見えるものは円卓と誰も座っていない質素な椅子が一つ。別に暑くもなく寒くもない。明るくもないし暗くもない。ただ、誰かが来ることを待っている。窓も、扉も、壁も、天井も、床もないのに。先ほど誰かいた気配もないのに、待っている。
side out
no side
四大天使が去った後、世界は自分を支えるための存在を探します。世界は考えました。そして、思いつきました。この世界に大量にいる人に任せてしまおうと。幸か不幸か神がいなくなったときのチカラを得ているものがいます。そのものの中でも一番の存在なら支えることができるのではないか。それまでなら、自分でも耐えられるだろう。世界にとっては短いでしょうが、人にとっては無限に近い時間です。長い長い物語になるでしょう。
世界を支えると言っても、世界とつながりを持ち、不老不死(見た目は自由に変えられます)になり、無限に近い時間を自由に生きるだけなので、とても魅力的です。
世界は殺し合いでは、ダメだとわかっています。競い合わせるのが目的です。そして、世界は伝えます。
今回の勝利条件は神の椅子に座ること。チカラで人を殺すことはできません。殺した者はチカラを奪われ、黄昏の園で世界に許されるまで囚われます。
こんなことを伝えれば、殺し合いは起きないだろうと世界は思っていました。しかし、人は醜いものです。誰しも光を持っていてもいなくても、闇は必ず持っています。世界は自分を支えることに集中して、気づきません。
物語が始まります。それは、楽しくて笑顔が溢れるものだとしても、暗い澱みは絶対にあります。
しかし、読者の皆様に楽しんでもらえるものになるでしょう。
どうも、ちゃんです。
二日遅れですが、新年明けましておめでとうございます。今年も読者の皆様が楽しく小説が読めることを願い、作家もより一層面白い作品をかけるように精進したいと思っております。
それではまたいつか。゜+.謹賀新年゜+.゜(○。_。)ペコッ