序章 プロローグ
※前作『黒き薬師と久遠の花』の過去エピソードになりますが、
こちらから読んでも楽しんで頂けるように執筆していきます。
前作も今作も、よろしくお願い致します(m0m)
あらゆる病を治す力を持つ、久遠の花と呼ばれし薬師の一族。
昔は不老不死の術を持っていると言われ、その力を狙う者もいた。
人を生かすことが久遠の花の使命。
たとえ己の命を犠牲にしてでも生かしてみせる、という誇り。
幼い頃からそう教えられ、自分もその一人なのだと嬉しく思っていた。
幅広い知識も、先人が築き上げてきた技術も、万能薬となる我が身の血も。
すべては苦しむ人々を、一人でも多く救うために存在する。
個人の利益のためだけに独占されることは許されない。
そんな輩から守るために生まれた、毒を極めし守り葉。
彼らが体を張って守ってくれるからこそ、安心して暮らすことができた。
けれど、もし守り切れず捕らわれることになるなら、悪用される前に自ら命を断てと教わった。
悪用され、人を傷つけるぐらいなら、自分が死んだほうがいい。
その覚悟は出来ていたつもりだった。
けれど、何の前触れもなくそれが現実になった時。
次々と倒れていく仲間たちに背を向け、気づけば妹の手を取って逃げていた。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
森の中を走っている最中、ずっとそのことが頭の中を巡っていた。