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南風通信  作者: 南 晶
22/31

キン肉まん、食べた?

 恐らく冬の始めの頃だったろうか。

 職場の休憩時間にケータイでネットニュースをぼんやり眺めていた私は、とある記事に釘付けになった。

『ウォーズまん コンビニで発売』


 な、なんという事だ。

 肉まんで知られる大手食品メーカーととあるコンビニが競合して、この冬、ウォーズまんを発売するのだという。

 主役級のキン肉マンやテリーマンをさしおいて、いきなりウォーズマンを投入してきたのは、キン肉マンの古参ファンが多いであろうアラフォー世代をターゲットにしているに違いない。

 でなければ、ウォーズマンの顔が常時ヘルメットをつけている為、丸いフォームを保っていて物理的に商品化し易かったという便宜上の問題なのか・・・。

 とにかく、キン肉マンのキャラの中でも特に気に入っていたウォーズマンが、肉マンになってコンビニに登場するという事に私は歓喜した。


 キン肉マンを知らない日本人は恐らくいないだろう。

 言わずもがな、昭和50年代に少年ジャンプで連載され、テレビでも放映されていた国民的少年マンガである。

 そうは言っても、それから月日は30年以上経っているし、私自身もリアルタイムで見ていたのは『ミート君のボディ奪回編』くらいまでなので、今となってはうろ覚えの部分が多い。

 変な事を書いてしまうかもしれないが、指摘、ご意見は是非是非、この『南風通信』の感想欄にお寄せ下さい。


 それはさておき、キン肉マンを知らない人の為に端的に説明すると、まあ、ぶっちゃけプロレスマンガである。

 キン肉星の王子であるキン肉スグルが地球にやってきて、普通の人間よりもガタイが良くて身体能力に長けた超人と呼ばれるライバル達と戦うお話。

 ただ、どういう種類の人間が『超人』に進化できるのかは、子供心にも謎であった。


 最初はダメダメだったキン肉マンだが、リングの上で様々なライバル達と戦う内に、だんだん友情が芽生えて、仲間との絆ができてゆく。

 やがて、悪の軍団がキン肉マンを倒しにやって来ると、「ここはオレに任せて先に行け!」とばかりに仲間たちは順番に居残り、いつの間にかトーナメント戦になっているという、少年ジャンプの王道もキン肉マンが最初に確立した気がする。

 このトーナメント方式は古くは聖闘士星矢、るろうに剣心、最近ではワンピースなど、もはや伝説となったマンガの中に数多く使用されている点でも、キン肉マンの功績は大きい。

 

 ギャグマンガとしても格闘マンガとしても、レベルの高い作品であるのは間違いないのだけど、今、面白いと思うのは超人達のお国柄を重視したキャラだ。

 アメリカ人でイケメンのテリーマンは、実は実家がお金持ちで牧場を経営してたりする、最初はイケすかないキザ男。

 キン肉マンの事をバカにしていたテリーマンだったが、戦う内に仲間になるも、後半になるにつれて傍観者的な位置で実況中継をする事が多くなった。

 

 イギリス貴族のロビンマスクはいつも仮面着用で、キン肉マンがふざけても絡んでくれない英国紳士。

 得意技は、美しさに定評がある『ロンドン名物タワーブリッジ』

 旧東ドイツ出身のブロッケンJr.の得意技は『ベルリンの赤い雨』

 手刀でベルリンの壁を壊しちゃう程の威力を持つw

 この当時、ドイツはまだ西と東でベルリンの壁を境に国境断絶していたのだ。

 彼がどことなくナチスな感じの軍服でプロレスしちゃう所は、ゆでたまご先生も当時の世界情勢に注目していたからなのだろうか。

 

 そして、旧ソビエト連邦出身の我らがウォーズマンである。

 旧ソビエト連邦というのは現在のロシアで、連載当時はアメリカと冷戦状態だった。

 第三次世界大戦になるならソ連xアメリカだと思ってたのに、まさか、ソ連より怖い、自爆テロ常習国家が中東にこんなにいっぱいあったなんて、当時は誰も思ってなかっただろう。

 超人と言えども基本的に人間であるキン肉マン達に対し、彼だけはロボ超人だった。

 醜いその素顔の為、子供の頃は顔を紙袋で隠して荒んだ暮らしをしていたらしい。

 ウォーズマンは、キン肉マンに負けた時に初めてリング上で喋って、マスクを取ったのだが、それまではヘルメットとマスクの為に顔の表情も分からず、『コーホー』という機械音だけで会話した事もなかった。

 そんなウォーズマンを見て、「うわあ、ソ連ってめっちゃ怖い国だな」と子供だった私は多いに妄想を膨らませたものである。

 当時のソ連ってアメリカに勝つためなら何でもやっちゃうイメージがあって、国家機密のロボ超人が大量生産されてるって言われても「ああ、やっぱりね」って納得だった。

 必殺武器は手の甲から飛び出す鋼鉄の爪『ベアークロー』

 最近見たハリウッド映画で、これと激似の武器を持っているミュータントがいたが、使い方はあれと同じだと思って頂いていい。

 子供だった私が、謎の秘密国家・ソ連出身のウォーズマンに惹かれたのは、ネットもメールもなかったあの当時、全く内部の情報が入らないソ連という国がとてもミステリアスに思えて、興味を持っていたからかもしれない。


 そのウォーズマンが肉まんになって登場!のニュースを見たら、そりゃ、食べたくなるでしょ。

 表面は黒いだろうけど、中身はなんなんだ!?

 ウォーズマンが好物だと公式発表しているロシア名物『ボルシチ』なのか?

 はたまた、表面の黒さを考えれば、昔、流行った『イカスミマン』みたいなのか?

 意外にも、中身は普通の肉まんなのか?

 

 興味津々の私は早速、某コンビニに足を運んでみたが、そんなものはどこにもなかった。

 ド田舎のコンビニにネットのニュースで公表されたばかりの商品がこんなに迅速に発売される筈がないだろう。

 諦めた私は、何も買わずに帰り、そのままウォーズマンの事は忘れてしまった。


 そして、春も近づいてきたこの3月。

 友人が「昨日、キン肉まん食べましたよ」とサラリと言った。


 き、キン肉まん!?

 と、とうとう出たのか・・・!

 ならば、それはもちろん・・・


「牛丼味だった!?」


 開口一番、私はそう聞いた。

 そりゃ、キン肉まんが出たら、中身は牛丼であって欲しい。

 間違ってもあんことかいれないで欲しいって、誰でも思う筈だ。

 友人はおっ!という顔をして答えた。


「あ、やっぱり分かりました?本当に牛丼味でしたよ」

「うぉ、ウォーズマンは?一緒になかった?」

「ありませんでしたね。でも、ラーメンまんはあるらしいですよ」

「ら、ラーメンまん!?中身、まさかラーメン入ってる訳じゃないよね!?」

「噂では中華あんみたいなのらしいですよ。春雨の中身みたいな」


 な、なんという事だ・・・!

 私が知らない間に「キン肉まん」「ラーメンまん」まで発売されていたとは!

 でも、何故、そこまで出たなら「ミートまん」も発売しないんだ?

 ミート君の顔なら「ウォーズまん」より断然商品化し易い筈だ。

 円形のかわいい生地に、中身はもちろん、ナポリ風ミートソース味。

 いや、個人的には「テリーまん」を食べてみたい。

 顔はデフォルメ化してかわいい感じで、中身はもちろんアメリカ産照り焼きチキン!

 豚の角煮がゴロゴロ入った「バッファローまん」や、とんこつ風味のあんが入った「キン骨まん」も捨てがたい・・・!


 実際に購入したという友人に、そのコンビニの場所を教えてもらった私は、その日、仕事帰りに早速寄ってみたのだ。

 バイトの若いお兄ちゃんが立っているカウンターの前には、ホカホカ湯気を立てている肉まんケースが設置されている。

 そこを覗き込むと、あるではないか!

 これが噂のキン肉まん・・・!

 ちょっと温め過ぎて、顔がベタっとしているが、分厚い二重丸型の唇とウルトラマン的頭部突起物のお陰で容易に認識できた。

 こ、これは絶対買わねば・・・!


「キン肉まん一つと、肉まん2つ下さい」


 キン肉まんだけ単品で購入するのが恥ずかしかった私は、カムフラージュに何の関係もない肉まんも買った。

 エロ本だけ買うのもなんなので、新聞も一緒に買っちゃうオジサンと同じ心境だ。

 そして、私の後ろに人がいないのを確認して、お兄ちゃんにこっそり聞いてみた。


「ねえ、ウォーズまん、あるんでしょ?いつ来たらあるの?」

「ええっ!?多分、まだ在庫は探せばありますけど、今から温めてたら時間掛かりますよ?後で取りに来れますか?」

「え、いや、別にそんなんしてまで欲しい訳じゃないし、ちょっと友人に聞いたから、聞いてみただけなの」

「あー、そーなんスか?いつ出すかはオレもよく分かんないっす」


 テキトーな感じで答えたお兄ちゃんに、私もいかにもついでという感じで言ってみたのだが、本当はそんなんしてまで欲しかった。

 もう暦の上では春になってしまった。

 今年はもうウォーズまんに会えないかもしれない。

 でも、今年これだけ話題になっていたら、きっと来年は商品化のハードルが低くなっているだろう。

 「テリーまん」「ミートまん」にも会える日も近いかもしれない。


 その日、私は3つも買ってしまった肉まんを抱えて、懐かしいキン肉まん達の思い出に浸ったのだった。


 

味はどうだったかって?

へのつっぱりはいらんですよw

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