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南風通信  作者: 南 晶
12/31

パージャン!

『パーマン』をご存知だろうか?


 言わずもがな代表的藤子不二雄アニメであるが、それが私が小学校の低学年くらいの時に東海地方でテレビ放送が始まった。

 ざっと30年くらい前?

 月日の流れは恐ろしい。


 有名なアニメなので説明するまでもないだろうが、かいつまんで言えば、主人公は東京在住の普通の小学生の男の子(確か名前はミツオだった)。

 のび太ほどダメではないがキテレツほど賢くない、藤子不二雄マンガの中では中間層のIQレベルだと思われる。

 その彼の前に、ある日突然『バードマン』と名乗る『バード星からやってきた宇宙人』が現れた。

 バードマンはミツオに地球の平和を守るべくパトロールを行う為の変身アイテムを渡し、彼を正義のヒーロー「パーマン」に任命する。

 鳥がモチーフだと思われるヘルメットにマントをつけて「パーマン」に変身すると、空を自在に飛んだり怪力を発揮できるようになるのだ。

 斬新な設定だったのは、ミツオが「パーマン」になってパトロールしている間、彼の不在がバレないように、バードマンはコピーロボットを渡してくれた事だ。

 鼻のボタンを押すだけで、押した人間と全く同じ姿形に変わるコピーロボット。

 このコピーロボットは学校に行き、勉強し、その記憶を本人に後日コピーする事ができる。

 この機能によって、お互い不在時に何をしていたかを把握する事ができるのだ。

 この設定は非常に斬新で面白いと今でも思う。

「パーマン」本編よりこの設定でもっと面白い話がもう一つ書けそうだ。

 怠け者だった私が「パーマンセット」より「コピーロボット」の方が欲しかったのは言うまでもない。


 と、まあ、そんなワケで、パーマンになったミツオは時には真面目に、時には磯野カツオ的屁理屈をこねくり回して適当にサボりながらも基本的には人助けをしていく。


 だが、ミツオがパーマンとして活躍して調子に乗ってきた頃、同じくバードマンに任命されたという仲間が現れる。

 サルの「ブービー」、実生活はアイドルの「パー子」、そして大阪在住でお金大好き「パーやん」。

 大阪出身のキャラがいつも激しい関西弁で、ほぼ全員守銭奴、そして実家がお好み焼き屋かたこ焼き屋というベタっぷりはこの頃から健在だ。


 ここで、子供だった私はある問題に気がついた。

 このパーやんだけが西日本を担当していて、東京にはミツオを含めてヒーローが三人も常駐している事になる。

 人口密度の差はあるにしても、これでは余りにも仕事量に差があり過ぎるだろう。

 東京で三人任命するより、一人は北海道、一人は九州、最後の一人は四国、くらいの地区別担当制にするべきではなかったのか?

 もしあなたが大阪転勤になって大阪から沖縄までの顧客全部任されたのに、東京23区だけに3人も担当がいるなんて話を聞かされたらどうだろう?

 私は労働基準局に相談に行くと思う。

 そんな会社やってられっか!

 バードマンが宇宙人で日本の地理に詳しくなかった事を差し引いても、これではあまりに不公平だ。

 お金大好きパーやんがバードマンに特務手当を請求したって無理もない。

 私はこのパーやんが出てきた頃から、いつも考えていた。


「愛知県で事件が起きたら、東京のパーマンと大阪のパーヤン、どっちが来てくれるだろう?」


 絶対、どっちも来そうにない。

 これで日本の平和を守っていると言えるのか、バードマンよ?

 日本は東京と大阪だけじゃないのだ!

 子供の私が考えただけでも他の地域がめっちゃ手薄で、北海道で事件があったらどーすんのって話である。




 そんなある日、とうとう私の前にバードマンが現れた。


「君が南さんだね?」

 

 バードマンは驚いて立ち尽くす私の前にヒラリと着地すると、いつも通りの少し高い体育教師みたいな声で言った。


「はい、そうです」


 ドキドキしながら返事をする私をバードマンはフンフン、と観察するように見てからあのデカい口を開いてこう言ったのだ。


「うん、君ならピッタリだ!南さん、今日から君をパーマンに任命する」

「ええっ!!!!????」


 わ、私がパーマンに!?

 学校帰りでランドセルを背負っていた私は、彼の言葉にびっくりしてひっくり返りそうになった。

 バードマンはミツオが使っているのと同じパーマンセット(収納時は指くらいの大きさに丸まっている)と憧れのコピーロボットを私に手渡して言った。


「最近、中部地方が手薄なんじゃないかとクレームがあった。確かに今の4人体制じゃ日本全国網羅しているとは言い難い。よって愛知県を中心とした岐阜、静岡、三重を担当する新メンバーに君を任命する事になったんだ。これから中部地方のパトロールは君に任せる」

「ああ・・・やっぱりそうだったんですね」


 やはり私の不安は当たっていた。

 この中部地方を守るヒーローはもうひとり必要なのである。

 現時点で女性がパー子だけな点においても、次のメンバーは愛知県在住の小学生の女の子であるべきだ。

 条件を満たしている私に白羽の矢が立ったのも無理はない。


 妙に納得した私は、ランドセルを下ろしてパーマンセットを装着してみた。

 その途端に体が軽くなり、不思議な力が湧いてくる気がした。

 バードマンは満足そうにパーマンになった私を見てウンウンと頷いた。


「これで君もパーマンの仲間だ。中部地方の平和は君に任せたぞ!」

「はい!!!任せて下さい!」


 私は力強く頷き返し、スーパーマンのポーズを取って天を仰いだ。


「パワーーーッチ!!!!」


 パーマンが飛ぶ時のキメ言葉を叫んでジャンプすると、勢い良く空に向かって飛び立ったのだ。

 眼下に広がる人家の屋根を眺めながら、私は使命感に燃えて空を飛び続けた。


「この愛知、静岡、三重、岐阜は私が護ってみせる・・・!!そう、これから私は中部地区担当パージャン!」


 傾きかけた赤い夕陽に向かって、私は街の平和を願い飛び続けた。

 頑張れ!

 正義のヒロイン(東海地方限定)パージャン!




◇◇◇



 そこで私は目が覚めた。 

 

・・・い、今のって夢!?


 完全に寝ぼけていた私はまさかの夢オチが信じられず、布団の中をしばらく引っ掻き回し、貰った筈のパーマンセットを探した。 

 布団の中にはパーマンセットは勿論、コピーロボットも当然なかった。

 当たり前だ。




 これは私はパーヤンが登場した時に見た本当の夢の話である。

 小学生のくせに地元が手薄だってバードマンにクレーム入れようとしてたんだから、図々しいにも程がある。

 しかし、夢とは言え、あの使命に燃えた時の興奮と飛んだ時の臨場感はハンパないリアリティだったな。



 でも、地区別担当って要るよね、バードマン?

 因みに、今更だけど私を任命したいと言ってきたら、その準備はありますと言っておこう。

 たまには中部地方出身のヒロインがいてもいいじゃん?

<注>この辺に住んでる人間は、喋ると「じゃん」を連発しますw

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