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エピローグ
「…そんな事があったんだよ。」
父が言った。話し始めたのが昼なのに、もう夕方だ。しかし息子は訊ねる。
「でも、分からないよ。どうして父さんはここにいるの?」
「あ、そうだな。言い忘れた。僕は世界の外に放り出された。それ以来独りぼっち。やがて僕は自分自身の平和を望むようになった。そして、僕は一つの世界になった。」
「どんな世界?」
「以前は得られなかった、平和な家庭の世界だよ。」
父=相田は家の外に出た。日は沈みかかっていて空は濃い青色になっている。
相田は、空の向こうを見た。相変わらず彼処から誰かに見られている気がする。一つは、あの時計塔の世界の創り主からだ。おそらく相田の世界にもう関心を持たなくなるだろう。これから相田は自分だけで独立して生きるのだ。
もう一つ自分を見ている存在に気づいた。それは恐らく次の瞬間強制的に自分を見ることができなくなるだろう。相田は分かっていた。誰が見ているか。それは今これを読んでいる読者であろう。そんな気がした。




