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作り話と実話を混ぜた話

作者: 外郎

フィクションとノンフィクションが混じってます。

突然だが、人にはそれぞれ落ち着いて眠れる姿勢というものがあると思う。

俺はうつ伏せじゃないと落ち着かない。

うつ伏せで顔は横にして、腕を枕にして眠るのだ。

高校生の頃の話になるが、夏休みのある日、部活動もアルバイトもしていなかった俺は早く起きる必要もないので目覚ましなんかはセットせずに眠っていた。

その日も予定などないので目覚ましはセットせずに眠りについたのだが、突然、誰かに起こされた...ような気がした。

目を覚ますと、足が見えた。

母親が俺を起こしにくることなど普段ないのでどうかしたのかと思い声を出した。


「あ...ん...かよぉ...」


声が出ない。

いや、正確にいうとなんか口が動かしづらい。

不思議に思い体を起こそうとするが体が動かない。

なんだこれ?

夢でも見ているのかと思い、ボーっと目の前に映る足を見る。

裸足、脛くらいまでなら見える。

なぜ母親は何も言わないのだろう?

夢か?変な夢だと思い、目を閉じようとした。

その時、ふと、あることを思い出し急激に恐怖に襲われた。

俺の母親は眠る時に靴下を履く人だった。

夏でも履いていたと記憶している。

じゃあ、これは誰の足だ?

理由はわからないが男の足ではないと思った。

そもそも、最初に見た時からなぜか女性の足だと思っていた。

鼓動が早くなる。

家族ではない何者かが部屋にいる。

何かされたわけではないのにとにかく怖かった。

逃げ出したいし叫びたかったが声も出なければ体も動かない。

人間は恐怖すると色々な行動をするというが、どうやら俺は恐怖に陥ると謝るらしい。

きっと心のどこかで誰かに悪いことをしているという思いでもあるのだろう。

声がうまく出せていなかったので「ごえなさ」「ごんない」とかメチャクチャな発音だったがとにかく謝り続けた。

すると、足が動き始めた。

ゆっくりと視界から消えていく。

視界から消えると体が動き始めた。

バクバクと心臓が動き、汗が吹き出た。

夢ではない...と思う。

俺はすぐに母親の寝室に向かうと普通に寝ていた。

靴下は履いている。

母親に俺の部屋に来たか尋ねると来ていないと眠たげに答えてまた眠ってしまった。

俺はもうあの部屋で眠る気もしなかったので着替えて外に出る事にした。

10時ごろ、家に戻ると家事をする母親にその事を話した。

母親は薄気味悪そうな顔をしていたがどこか納得していた。


「この家、なんかあんの?」


「特にはないけど...あんた、私に似てるでしょ?

お父さんの家系はそんな事ないけどあたしの家系はみんな霊感が強いのよ」


アホみたいなことを言われたが手を見てみろと言われ見てみる。


「あんたの親指のところ、目みたいな手相になってるでしょ?仏眼っていって霊感が強い人にあるんだって」


あたしにもあると手を見せられた。

家族では俺と母親にしかついていなかった。


「......幽霊って足あるんだな」


そんな間抜けな感想しかなかったが、その日から幽霊を信じるようになった。

幽霊を信じると不思議な事によく金縛りに遭い、変なものを見るようになった。

日常生活では見えないので「まぁ、金縛りの特長だな」程度に気にはしなかった。

しかし、徐々に金縛りにも慣れてくると、またかと思い始めて、恐怖よりも苛立ちの方が勝るようになってきた。

あの足も毎回現れたが何かするわけでもなければ話しかけてもこない。

こちらも話せないのでただ変な時間に起こされるだけだ。

眼球だけは動かせたので顔を見ようとしたが見えなかったが腰や背中は見えた。

やはり女の人だった。

あまりにもベタで信じてもらえないと思うが白いワンピースを着ていた細い女の人だった。


「同じ奴なのかな?」


気になったので金縛りのメカニズムを調べたが改善するようなものが見当たらなかった。

病院に行くほど困っていたわけではないので結局は放っておく事にした。

そんなある日、久々に金縛りで怖い思いをした。

耳元で男が何かボソボソと喋っていた。

顔が見えたが無表情だった。

だが、それだけだ。

特にオチもないし何を言っていたかも覚えてない。

この時からわかった...いや、感じた事だが金縛りにも怖い時と怖くない時がある。

怖い時は目に見える人のようなものが黒や灰色に見え、なんだかモヤモヤして見えた。

怖くない時は白っぽい色をしてくっきりと見えていた。

あの、女の人は白っぽい感じだから怖くなくなってきたんだと思う。


初めて金縛りに遭い、幽霊を信じるようになってから2年ほど経ち、高校の卒業を控えたある日、変わった夢を見た。

俺は高校の制服を着て、階段を歩いていた。

横には女の子がいた。

同じ高校の制服を着た、茶髪のショートボブの女の子。

ただし、顔は赤く爛れていた。

火傷のように見えたが顔の判別がつかないほどの跡だった。

俺はその子と親しげに話していた。

何を話したかは覚えていない。

だけど、嫌な感じもなく、むしろ穏やかな気持ちだったと思う。

目が覚めた後も怖いという感情はなかった。

母親に話したら気味悪がっていたが俺はそんな気持ちは微塵もなかった。


「あの子なのかな?」


なんとなくだがそう思った。

夢を見た日から、あの子は見なくなった。

俺は短大に進学し、同じ家の同じ部屋で過ごしていたが一度も見かけなくなった。

これは一人暮らしを始めた後に父親から聞いた話だが、どうやら俺の部屋は鬼門に当たる箇所だったらしい。

そんな所を俺の部屋にするなと文句を言った。

今は三男が使っているらしいが特に何もないとのことだ。

三男がいるという事は次男もいる。

我が家は男三人兄弟で、1人部屋は長男の俺しか持っていなかった。

俺が仕事を始めた時、次男が大学に進学するとのことで俺は一人暮らしをすることを決め、部屋を次男に明け渡した。

一人暮らしを始めた時も金縛りに遭い、変なものを見た。

結局、部屋とか関係なく俺の体質かと苦笑いをした。

一人暮らしを始めて半年ほど経った頃、爺さんの法事で集まることがあった。

その時、次男から聞いた話だ。


「あのさ、あの部屋で初めて1人で寝た時、女の人が出たんだけど、兄貴なんか知らない?」


俺は少し青ざめた。

この話は家族が嫌がるからと言うことで俺と母親しか知らない話だったからだ。


「......どんな女だった?」


「いや、白っぽい服着た女の人でさ、なんか真上から見られてた」


次男は「初めて金縛りにあったからビビったわ」なんて言いながらヘラヘラしていた。


「怖くなかったのか?」


「うん、焦ったけど怖くはなかった」


「そ、それで?」


「何が?」


「その女どうしたんだよ?」


「なんかさぁ、ちがう...とか言われていなくなったよ」


「......か、顔は?どんな顔してた?」


「さぁ?」


「なんでわかんねぇんだよ!見られてたって事は目があったんだろ?顔を見たんだろ?」


「だって、赤く塗りつぶされたみたいにしか見えなかったんだもん。

目も口も鼻もなかったからわからん」


「......そうか、その話、母さんにした?」


「してないよ。

話した方がいい?」


「いや、話さなくていいよ。

そいつ、多分悪い奴じゃないから気にすんな」


「わかった...てか、気にすんなって言われても一回しか見た事ないしね。

金縛りも一回だけだし」


「そうなのか?」


「うん、なんなの?あれ?」


「俺にもわからん」


あの子は悪い奴じゃないと今でも思ってる。

なぜかは知らんが、俺の事を随分と気に入ってくれていたみたいだな。

引っ越すって言ってやればよかった。

これを読んでくれた皆様、もし、あの子を見たと言うのなら教えてください。

ちゃんとお別れを言ってあげたいから......

10年くらい経つけど今も悪い子じゃないと思うんだよね。

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