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クラス一のクール美少女が放課後の教室でこっそりAV鑑賞してるところ見たら詰んだ  作者: せせら木
一章

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91話 想いを伝える場所

「さてと、月森さんの姿も見えなくなったね。話そうか、二人きりで」


 先に空き教室へ帰されたゆぅちゃんの姿が見えなくなり、大隅先輩は伸びをしながら俺へ語り掛けてくる。


 この状況、正直に言って訳がわからない。


 彼はゆぅちゃんのことをひそかに狙っていて、俺から引き離そうと画策しているのではないか、とずっと思い込んでいた。


 なのに呼び止めたのは俺だけで、ゆぅちゃんを空き教室に一人で帰した。


 どういうことだろう。


 俺を引き離し、結託している他の照明係メンバーにゆぅちゃんを篭絡させる作戦を託した、とも考えられるけど、あの場所には冴島さんや灰谷さんがいる。


 大隅先輩からしてもうかつな事はできないはずだが、この人は俺たち五人の仲を甘く見ているんだろうか。


 俺とゆぅちゃんさえ引き離せば、あとの冴島さんや灰谷さんは逆らえない、なんて考えていたりだとか……。


 その線はある。


 こういう人は何もかもが上手くいくって考えがちだからな。


 油断で足元をすくわれるタイプだ。この勝負、俺の勝ちに近付いたか……?


「ははっ。まあ、何だ。とりあえずそんな勝ち誇ったような顔で見るのはやめてくれないか? 宣戦布告なんてしたのは俺の方なんだけどさ」


「っ……」


「俺は君と仲良くやりたいとも思ってる。矛盾してるかもしれないけど、これはまごうことない本音だ」


 微笑を浮かべて言う大隅先輩。


 ただ、こっちとしてはそんなこと言われても、というところではあるし、頭上に疑問符が浮かぶ。


 本当にこの人は何を言ってるんだ、と。


 俺を油断させるための口上か何かかと、逆に警戒してしまう。


「ただ、今こんなことを言っても難しいね。俺は俺で見たいものがあるし、どこかで何かを諦めたい節がある。そもそもこんな悪趣味なことをする人間でもなかったし」


「……?」


「ああいや、悪い。今のは俺の独り言だ。気にしないでくれ」


 そう言われても、だ。


 訳のわからないことを言われれば気にしてしまう。


 どういうことだ、諦めたい節があるって。


「……その」


「ん?」


「これはもう……先輩が別に誰に言ってもいいんですが……俺の本音を喋っていいですか?」


「おぉ、いいよいいよ。全然歓迎。てか、本音で喋ってくださいって感じだ」


 本人もこう言ってる。


 だったらもういいだろう。


 俺は意を決して切り出した。


「俺は……大隅先輩のことを敵としか思ってません。月森さんは……ゆぅちゃんは俺の彼女だし、大好きなたった一人の恋人なんです。そんな女の子を狙ってくる人は、そうとしか認識できない。……申し訳ないんですが」


 少し間が生まれる。


 あまりにもストレートに言い過ぎて、大隅先輩も少し面食らっていた。


 が、すぐに彼はいつもの明るい調子に戻って笑い出す。


「はははっ。いやいや、それはそうだよ。俺も敵っぽい感じで宣戦布告だ、なんて言ったからね。てか、俺が君の立場でもそう思う。むしろ名和君は優しい方だ。俺だったら胸ぐら掴みに行ってるかもしれない。ふざけるな、って」


「っ……」


「ごめん。だからいいよ。わかってる。俺は俺のしてることのタチの悪さ、理解してるつもりだから」


「……だったらこんなこと……」


「でも、これもまた謝らせて欲しい」


 言いながら、先輩は俺の前で頭を下げた。


 突然だ。少し驚く。


「簡単に消せない思いってのを君の彼女に俺は抱いてしまった。どうしようもないくらいの想いを」


「………………」


「それはもう伝えることでしか晴らせないし、そうじゃないと俺がすっきりできない。何度も月森さんのことを目で追いかけてしまいそうなんだ」


「………………」


「だから、これはもうはっきりさせたい。自分の想いと、それから彼女の想いをぶつけさせてもらって」


「……やめてください、そんな言い方。俺の彼女なんですから。変なものぶつけないで欲しい」


 さえぎるように俺は言う。


 けれど、彼は「いや」と首を横に振った。


「ぶつけさせてもらうし、彼女の想いを聞く」


「告白するってことですよね?」


「ああ。そうなるだろう」


「いったいどこで? いつ?」


「それはあまり君に言いたくない」


「ふざけないでください」


「……つもりだった」


「……え?」


 つもりだった?


 何度目だろう。


 俺は首を傾げた。


 大隅先輩のことを睨み付けながら。


「君たちが今さっきここに居続けてた間だ。空き教室では軽いミーティングがスタートしてた。そこで一つの大きなイベントを今年も開催させることが決定したんだ」


「大きなイベント……?」


「ああ。腹を割って自分の言いたいことを屋上から大声で叫ぶイベント。正式名称は『叫び祭』って言うんだが」


「……もしかして」


 大隅先輩は頷いて続ける。


「そのもしかして、だよ。俺はそのイベントで君の彼女に想いを伝える」


 ズク、と心臓に汗をかいたような感覚がした。


 嫌な汗だ。


「だからね、君も考えてくるといい。僕が告白をするから、それに負けないような想いをね」


「……っ」


「逃げないでくれよ? 俺たちはそこで戦おう」


 どれだけ強引なんだ。


 俺がそういうイベント苦手なのを知ってて言ってきてるのかもしれない。


 唇を噛み締め、改めて先輩を見据える。


 覚悟は決まっていた。当然のごとく。


「……わかりました。やります、俺も」


 俺がそう言うと、大隅先輩はどこか気の抜けたような微笑を浮かべて頷く。


 やってやる。


 強くそう思った。


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