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クラス一のクール美少女が放課後の教室でこっそりAV鑑賞してるところ見たら詰んだ  作者: せせら木
一章

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53話 実はですね……

 広々とした木造りの天井。そして、自然の柔らかさを感じさせてくれる、敷き詰められた畳。


 にぎやかだった昼食を終えた午後三時頃。


 俺は、大の字になって部屋のど真ん中で寝転がっていた。


「うっぷ……。た、食べ過ぎた……」


 強烈な満腹感と、上がった血糖値による眠気に襲われながら。


「さと君、大丈夫? 私、膝枕してあげるよ?」


 もちろん、一人で、ではない。


 傍にはゆぅちゃんがいてくれて、


「もう。ただでさえ眠そうにしてたのに、調子に乗ってドカ食いするから。気を付けてよ?」


 冴島さんもいてくれる。


 あと、向こうの方。部屋の隅っこで正座して、申し訳なさそうにする灰谷さんもいた。計四人。


 武藤さんと寧々さん、それから彼女のおじいちゃんは魚釣りをしに行った。


 俺たちも後で行くとは言ったのだが、少なくとも俺はこの調子じゃどうも無理そう。こいつはもうひと眠りしちゃうパターンだ。


「心配かけてごめん、冴島さん。それにゆぅちゃんも。ああいうの、俺断れないんだよ」


 仰向けのまま、俺は力なく苦笑しながら言った。


 ゆぅちゃんは下がり眉を作り、俺の顔を手でムニュムニュしてくる。


 冴島さんは呆れるようにため息をついた。


「確かに美海のおじいちゃんとおばあちゃん、名和くんが唯一の男の子だからってたくさん海の幸お皿によそってあげてたけどね。ある程度は断らないと。それで具合悪くなったら本末転倒なんだし」


「はは……ごめんごめん」


「……まあ、そういうお人好しなところがいいんだろうけど……」


「……ん? 今、何か言った?」


「ううん。何も。たくさん彼女に癒してもらったらって言ったの」


「え、えぇ……?」


 なんかちょっとヤケクソ感のある言い方。


 ゆぅちゃんは冴島さんの言葉を受けて、強引に俺の頭を自分の太ももの上へ乗っけた。首が痛いです、雪妃さん。


「にしても、ほんと今日は朝からどうしたの? 一人だけ寝不足だったし」


「船酔いしたってわけでもないんだよね?」


 真上からゆぅちゃんに問われる。


 こんな時だってのに、俺って男は彼女のお胸を凝視しちゃってた。


 うむ。ちょうどいい具合の綺麗なサイズ。美しいお山が俺を見下ろしてる。願わくばそれに触ってみたいが……今はそんなことできるわけがない。視線を逸らし、言葉を濁して誤魔化した。


「雪妃、今名和くん胸見てたよ」


 ……が、ジト目と共に冴島さんが的確な指摘。


 速攻でバレちまいましたよ……。


「へ? 誰の?」


「雪妃のに決まってるでしょ。真上にあるんだから」


 ぽぽぽ、と顔を赤くさせるゆぅちゃん。


 でも、それで俺のことを叩いたり、胸を隠したりなんてことはしない。


 俺の彼女さんだ。エッチな知識を教えてください、と乞うてきた、俺の彼女さん。


 ゆぅちゃんは恥ずかしそうにしたまま、俺から一瞬顔を逸らし、ゆっくりとまた目線をこっちに合わせ、


「……い、いいよ? 見ても。さと君なら……」


 ふるふると恥ずかしさに震えながらも、俺の視線をウェルカム。


 気付けば俺は返していた。「ありがとう」という言葉を。


「ちょっとちょっとちょっと……!? バカップルなのはわかるけど、さすがにここではやめな、雪妃!? アタシもいるし、美海もいるからね!?」


「あ……わ、私のことはお気になさらずー……」


 灰谷さんが控えめに手を挙げ、小さい声でそう言うのだが、そこはもう冴島さんが許さない。


「気にして!? 美海、気にしていいの、ここは! というか、気にしてもらわないと困る! アタシだけじゃ二人のラブラブ世界阻止できないから! 目の前で雪妃が暴漢に胸触られてるところ見るハメになっちゃうから!」


「いや、まさかの暴漢扱い!?」


 声を裏返らせて俺が反応すると、冴島さんは顔を赤くさせ、


「当然じゃん!? 処女雪のように綺麗で透き通った雪妃の肌、しかもそのおっぱいを欲望のままにわしわし揉もうとしてるんだよ!? そんなの暴漢に決まってるよ! 名和くんの変態! おっぱい魔人!」


「色々ツッコみたいけど、その呼び方やめて!? まるでおっぱいだけが好きみたいじゃん!」


「おっぱいだけ!? 何その『おっぱい以外も全然好きですけど!?』みたいな言い方! まだ他に雪妃の体で好きな部分があるっていうの!?」


「お尻と二の腕も大好きだよ!」


「究極の欲張りさんじゃん!?」


 おかしい。


 睡眠不足と満腹のせいで眠さ極限だってのに、意地と気合でツッコんでしまった。


 黙っていられなかった、というやつか……。


「も、もぉぉ……。名和くんがエッチな男の子ってことは知ってたけど、まさかここまでだったなんて……。ねぇ、雪妃? 大丈夫?」


 冴島さんが心配して問うのだが、


「っ~……」


 ゆぅちゃんは口元に指をやって、ひたすら顔を赤くさせるばかり。耳も真っ赤。そんで何かをブツブツと呟いてたけど、そこはもう何を言ってるのかは聞かない方向で行くことにした。深追いすれば俺もダメージを負いそうだ。恥ずかしさで。


「はぁ……。もう、ほんと付き合ってらんない。イチャイチャするならアタシたちのいないところでやってよね、名和くん」


「お、俺でございますか……」


「そう。君だよ。近頃はアタシの癒し担当の仕事もおざなりだし……」


「そ、それは面目ない。元気になったらご奉仕させていただきます」


 言って、チラッとゆぅちゃんの方を見上げるけど、俺の彼女は未だブツブツと一人で呟いてるままだった。よかった。癒し担当とか、傍から聞いたらなんかいかがわしいからな。


「で、色々話は逸れたけど、何で名和くんは今日寝不足だったのかな? 特別な理由があるっぽかったけど?」


「っ……」


 核心に触れる質問、遂に来ちゃいましたか。


「美海もなんかずっと元気ないし、怪しいんだよ。二人、繋がってる? 絶対何か隠してるよね?」


「い、いやー……その……」


「ほら、正直に話す」


 むぎゅっと頬をつねられる。助けて、ゆぅちゃん。


「わ、わかりまひた。わかりまひたはら、はなひへふらはい」


 何とか言葉になっていない言葉で返す俺。


「よろしい」と幸いなことにお許しが出て、頬をつねるのもやめてくれた。おー、痛い。


「実は、ですね……」


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