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クラス一のクール美少女が放課後の教室でこっそりAV鑑賞してるところ見たら詰んだ  作者: せせら木
一章

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42/100

42話 クラス一のクール美少女が

 それから、約一週間ほどあった期末テストの全日程を終え、俺たちはいつもの日常に戻った。


 結果の方は、予想通りというか、頑張った分、それなりに点数へ反映されたわけだが、俺は結局、総合で冴島さんに勝つことができなかった。


 俺→22位

 冴島さん→6位


 こんな感じだ。元々、挑む相手が違うと言われれば、確かに否定できない。今回のでわかったけど、一桁とか、ほんと壁を感じるレベル。頭の出来が違うのか、それとも尋常じゃない努力のたまものか。今回、俺もやれるだけやったつもりなんだけどな。凄いよ、冴島さん。


 ただまあ、そうは言っても、この結果で俺たちの関係が変わるなんてことは、冴島さんの言った通り無かった。


 灰谷さんや武藤さんは俺をからかったり、茶化したりしてきたけど、彼女らも色々わかってたんだろう。


 テストの点数で月森さんをどうこうとか、それはあくまでも落ち込む冴島さんを強引に外へ連れ出すためのものでしかない。


 それもそうだ。


人の想いとか、そういうのは、誰かが勝手に決めるものじゃないし、決められるようなものでもないから。


 だから、俺たちは伝え合った。


 自分の想いを。


 そして、これからの願いを。






「お、お邪魔します……つ、月森さん……」


「う、うんっ……。い、いらっしゃい。名和くん」


 テスト明けの休日。


 俺は少しばかりのブツをリュックに詰め、一人で月森さんの家を訪問。


 当然だが、何かを売りつけたり、営業しに来たわけじゃない。二人きりで遊ぶため……というか、お家デートをするためにやって来たのだ。


「え、えとっ、そ、そのっ、きょ、今日は……また……お父さんとお母さん……買い物に行ってていないから……」


「そ、そそ、そっか! う、うん! だ、だったら、いいい、色んなことができるね!」


 月森さんが固まる。


 固まって、かーっと顔を赤くさせた。




 い ろ ん な こ と 




 控えめに言って、俺はバカだ。


 いくらテンパってるとはいえ、もう少し言い方を考えて欲しい。


 付き合いたての恋人が二人きりで密室にいてできる色んなことなど、あれこれ考えずとも一つだ。


 もしかしたらそんな展開も……!? ドキドキ……!


 なんて考えてはいたが、今日ヤるつもりなのはそんなことではないから。


 ヤの字もカタカナにして意味深なようにしないでいいから。大バカすぎるぞ、俺。


「ごごご、ごめぇぇん! そそそ、そうじゃなくてねっ、い、色んなことっていうのは、つつつ、つまるところ色んなゲームってことで、俺からしたらエロゲはただの娯楽ではなく、『事』って言っちゃうくらい格調高いものであって、あのあの、ええっとぉ!」


 ヤバい。自分でも何言ってるのかわからなくなってきた。


 めまいがするぞ。落ち着かないと。こんなに可愛い女の子が彼女になってくれたっていうのに。


「……クスッ」


 ただ、だ。


 テンパりまくる俺を見てか、月森さんは顔を赤くさせたまま笑った。


 その表情に、またドキリとする。


「す、すいません……キモかったですよね。反省します」


「ううん。そうじゃないの。気持ち悪いなんてことないから、安心して?」


 天使ですか。


 思わずそう言いたくなった。


 今の俺、絶対気持ち悪いのに。


「名和くんが気持ち悪かったら、私なんてもっととんでもないよ。教室で一人でエッチな動画観てるし、男の子を家に誘ってエッチなゲーム一緒にするし、何なら今日だってまたそういうゲームするために誘ってるし、それに……」


「……?」


「そ……そ、そ、それに……ね?」


「は、はい」


 究極に恥ずかしそうにしながら、絞り出すように言葉をポツリと口にした。


「な、名和くんとしたいこと……も、もう、三十年後くらいまで……ノートに書いたりするような人だから……私……」


「――っぇ!?」


 さ、三十年……でございますか。


 冷静に考えて、えーっと? 今、十六だから、一、二、三……四十六かぁ。


 付き合ってるって仮定してだもんね? だったら、その間にさぞかし色んなことが起こるでしょうなぁ……結婚したり……子どももできたり……って、ちょっと待って欲しい。それを全部ノートに記した、と。おっほほぉ……な、なるほどなるほどぉ。


「と、というわけだからね……! 名和くんは気持ち悪くないの……! 私の方がもっと、もーっと気持ち悪いから、大丈夫……!」


 ヤケクソ気味に前のめりになり、俺の顔を覗き込んで言ってくる月森さん。


 が、俺は首を横に振り、


「いやいや! やっぱり俺の方が気持ち悪いですよ! 月森さんとの三十年って言われて、勝手に結婚とか、子どもが何人、とか妄想しちゃってましたから! 甘いです!」


「そ、それだったら、私だって当然したよ? 子どもは最低でも二人欲しくて、名前まで考えちゃってる……! 一人目が男の子だったらこういう名前で、女の子だったらこういう名前……! 二人目は一人目にこういう名前を付けちゃったから、私と名和くんの下の名前の文字を取って、とか……!」


「だ、だったら俺は五人目の名前まで考えちゃおっかなぁ!?」


「ふぇ……!? ご、ごにん……」


「そう! 五人! さすがにここまでだと名前も考え切れてないんでは!? そうだなぁ、二人目までが俺たちの名前を取ってたなら、今度はこういう風に育って欲しいっていう願い編に突入しても――……って、月森さん?」


「あぅ……」


「ど、どうかしました……?」


 俺をジッと見つめ、やがて目線を下へ。


 そして、顔どころか、彼女は耳まで真っ赤にし、胸の前で指をもにょもにょ動かしながら、


「わ、わたし……が、がんばるね……」


「……?」


「ごにん……ごにん……」


「――ッッッッッ!!!」


 だから俺は何を言ってるんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 もうダメだ! 余計なことをべらべら喋ってしまうこの口は縫い付けてしまおう! そうした方がいい! きっといい! うん!


「つ、月森さん、あの――」


 さすがに五人は多すぎでした! せめて三人にしましょう!


 そう言おうとしたのだが、俺は彼女に遮られるように手を握られ、


「しあわせなかぞく……つくろっ。名和くんっ」


 恥ずかしさと幸せさとそれから色々なポジティブパワーに満ちた月森さんにそう言われ、もう俺は大人しく頷くしかなかった。


 作りましょう、と。


「でも、そのためには、やっぱりこれからもたくさんそういう知識付けていかなきゃ、だよね?」


「そ、そういう知識ですか……?」


「エッチなゲーム……! 二人でたくさんしよ? そしたら、きっと知識も付けられるはずだよ」


 エロゲで知識を付けられても困るのだが……間違ってること多いし……。


 だけど、俺は……。


「何より、私たちはこうやって仲良くなっていったんだもんっ。ずっと、ずっとこれから先も、一緒にしていこうね?」


 幸せそうに言う彼女を否定できるはずもなく、また頷くのだった。


 ずっと、一緒にやりましょう、と。









「それで、今日はどんなゲームを? 俺、色々持ってきましたけど」


「えっとね……あ、これなんていいんじゃないかな?」


「……? どれです?」


「はい、これ。『クラス一のクール美少女が放課後の教室でこっそりAV鑑賞してるところ見たら詰んだ』」


「……ははっ」


「……? どうしたの?」


「いえ。その、なんか似たようなシチュだなって」


「へ?」


「まあ、俺は詰んでませんけど。むしろ、最高に幸せですけど」


「え? どういうこと?」


「何でもないです。よし、じゃあそれやりましょうか! げへへ、舐めまわすようにヒロインちゃんを攻略してやりますよ……!」


「……うぅ……どうしてだろ? なんか自分のことを言われてるような……」


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