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クラス一のクール美少女が放課後の教室でこっそりAV鑑賞してるところ見たら詰んだ  作者: せせら木
一章

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4話 一緒に……ヤろ?

 一応最初に断言しておく。


 俺と月森さんは、お付き合いをしてるわけじゃない。


 何なら、友達でもないような気がする。


ただの知り合いというか、クラスメイトであり、たまたま俺が彼女のとんでもないところを見てしまっただけであって、ほんと何でもない関係だ。……一応、LIMEでは友達になったけど。


 なんか変にベタベタするのも悪い気がする。


 俺なんかと一緒にいるところを見られるのも、彼女からしたら噂の対象でしかなく、嫌だと思うし。


 だから、だ。ほんと、こんなことがあっていいはずない。


 陰キャラの俺が、陽キャラグループに属してる月森さんの家で、一緒にエロゲをプレイするなんて……。


「それじゃ、名和くん。少し待ってて。私、一階からお菓子とか飲み物とか取ってくる。すぐだから」


「は……はひ……」


 言って、パタパタと部屋から出て行く月森さん。


 俺は、たった一人でその場に取り残された。




 こ の 状 況 は 何 ?




 いや、ほんと何なんだこの状況!? マジで何!? 何なの!? どうしてこんなことになってんだ!? クラスの隅っこにいるような根暗男だぞ俺は!? それが何がどうなったらたった一日とか二日で憧れの女の子の部屋に来ちゃうとかそんな展開になるんだよぉ、神ィ!?


 整理整頓されてて、白基調の女の子らしい部屋の中で、俺は半パニック状態に陥るのだが、なんとか深呼吸して自らを落ち着かせる。


 が、しかし。深呼吸した際に肺に入り込む月森さんルームの空気が、また俺の動悸をガンガン早くさせた。まるで意味がない。


もう呼吸を止めた方がいいかもしれない、とも思うものの、それはそれで死んじゃうし、俺なんかの死体をこんな神聖な場所に置いちゃいけないに決まってる。ダメだ。やっぱ呼吸はしないと。あぁ、でもそれはそれでヤバッ(以下無限ループ)! となる始末。


どうしていいのかわからない俺は、自分が毎日女の子の部屋に行って●●●しちゃうパリピ男子の気分でいることを決めた。すると、あら不思議。動悸が少しばかり緩やかなものになっていく。やっぱパリピしか勝たんYo卍


 そんなことを考えながら、ラッパーっぽいポーズを一人でしてると、扉がガチャリと開いてクールビューティーな女神様がお戻りになられた。


 両手で持ってるおぼんのトレーには、お菓子の並べられた紙皿と、2リットルのヘプシ。それから紙コップが乗せられてた。


「ごめん。お待たせ。名和くん、何が好きかなって考えてたら少し時間かかっちゃった」


「い、いや、そんなお構いなく! て、ていうか、俺も手伝いに行けばよかった……」


 立ち上がりながら俺が言うと、月森さんは軽く笑みを浮かべながら首を横に振った。


「そんな。お客さんだもん。全部私にさせて? 名和くんはそういうの気にしなくていいよ」


「で、でも……普通に2リットル重たそうだし、それ持ってだと階段も危なかっただろうし……」


「ふふっ。そこは大丈夫。私、これでもしっかり鍛えてるから」


 言って、半袖から伸びる綺麗な二の腕を見せてくれながら、マッスルポーズをする月森さん。


 華奢で、とても鍛えてるようには見えないけど、なんかもうそういう仕草も可愛く見えたので、俺は納得するように頷きつつ、心の中では「ありがとうございます」と土下座した。ほんと、ありがとうございます。光景を目に焼き付けようと思います。


「ほんとなんだよ? 絵里奈と美海みみかえでの合計四人でよくジム行ってるんだから」


「あぁ、お友達の」


「うん。私は帰宅部なんだけど、三人ともそれぞれ運動部に入ってるから凄いんだよね。ジム行っても体力の差が歴然。いつも劣等感感じてる」


「それはまあ……仕方ないと思います。運動部入ってると、毎日バリバリ体動かすだろうし」


「ほんとそうだよ。私も何かスポーツやればよかったかな。……すっごく運動音痴だけど(笑)」


 知ってる。四月の体力測定で見てたから。月森さんが色々苦戦してるとこ。


「だとしても、やっぱり色々やってみたいなって思うこと、大事だと思います。俺は……そんな気すら起こしてないんで」


「でも、名和くんは割と何でもそつなくこなすタイプだよね? 体育とかでたまに見るよ。活躍してるとこ」


「い、いや、活躍とまではいかないと思いますけど。……はは」


「体力測定でも、五十メートル走速かったの見た。六秒台とかじゃない?」


「ギリギリです。六秒九」


「ほらっ。やっぱり。いいなぁ、羨ましい。そんなに速く走れて」


 いやいや。そんなに羨ましがってくれるようなものでもないです、月森さん。


 五十メートル走が六秒台なのは、陰キャラではあるもののせめてモテてみたいという願望からトレーニングした結果で、中学の頃、モテ男子だったテニス部の沖口に走りで一度だけ勝ってしまい、クラスの女子から『空気読めよ』と総スカン食らったっていう暗い過去がありますんで……。


 陰キャラで非モテな男は何をしても非難される人権無し、というこの世の理不尽を教えられたきっかけでもあるから、全然誇れることじゃない。努力が無駄になった一幕でもあったしな。……はぁ……。


「ま、まあ、とにかくそんなすごい運動ができるって程でもないです。球技とかはからっきしなんで」


「そうなの?」


「はい。そりゃもう。前なんて体育の時間バレーしたんですけど、アタックしようとして腕振ったら空振りして、ボールが顔面に当たるくらいで」


「あははっ。それ、ほんと?」


「ほんとですよ。他には――」


 こんな感じで、楽しく会話する俺と月森さん。


 もういっそのこと、こうして楽しく会話するだけでいいんじゃないかとも思った。


 それが一番平和だし、俺もギリギリ冷静さを保てるだろう、と。


 だけど――


「はぁ。名和くんってなんか面白いね。こうして話すとすごくそれがわかった」


「そ、そう……ですか?」


「うん。もっと……色々話したいし、教えてもらいたいなって思ったよ」


 ギク。


 教えてもらいたい、ですか……。


「そろそろ……ね? 一緒に……ヤろ?」


 朱に染まった顔。わずかに潤んだ瞳。上目遣い。


 俺は月森さんにそう言われ、心臓を大きく跳ねさせた。


 もちろんヤるのは……ゲームだ。


 来てしまったらしい。この時が。


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