第4話
4日後 第一探偵社から連絡があった。「店の権利を8千万円で売りたいと言う方が見つかりました。」
「すぐに、伺います。」そう言うと、俺は第一探偵社へ急いだ。
事務所に到着すると、すぐに担当の女性が資料を見せながら説明してくれた。
「いかがでしょうか?ご希望にかなり近い物件だと思いますが。」いつも通り担当の女性は自信満々だった。
「なるほど、なかなか良いですね。それでスタッフもそのまま残ってくれるのでしょうか?」
「はい。ママとスタッフそれにキャストの女の子も残る予定です。」
(よーし、これで面倒くさい事が一気に片付く。)「それで、いつ頃引き渡し可能ですか?」
「契約出来次第、即日引き渡し可能だそうです。先方も早く借金を返済してしまいたいらしく、なるべく早い契約をご希望です。」
「分かりました。スケジュールは先方にお任せします。」
「お支払いの準備はもう出来ているんですか?」
「はい、現金で用意してあります。」悪魔は約束通り次の日に俺の口座に1億円を入れていたのだ。
「分かりました。では今、先方に連絡を取ってスケジュールを決めてしまいましょう。」そう言うと女性は奥の部屋に入った。先方と電話をしているようだ。
「では明日の午後1時 明和銀行で契約と決済を行います。よろしいでしょうか?」(しかし仕事の出来る女性だな。まあ助かるけど。)
「結構です。よろしくお願いします。」
「ではお支払いをお願いします。今回は専門外の仕事でしたので少々割高になっております。総額で300万円になります。よろしいでしょうか?」
「はい結構です。」
俺は現金300万円を支払い、第一探偵社を後にした。
翌日、俺は無事契約を済ませることが出来た。第一関門突破だ。これで、とりあえずは一安心だ。
俺は部屋に戻って一息ついた。しかし、のんびりはしてられない、やる事はまだまだ山ほどあるんだ。次はターゲットたちをこのクラブに誘い出す方法を考えなくては。
俺はもう一度リストに目を通してみた。
1 辺手四郎 へてしろう 72歳 男性
国会議員 総務大臣 当選6回 年収4千万円
配偶者あり 子供2人は既に独立
趣味 ゴルフ
2 矢後昭信 やごあきのぶ 56歳 男性
国会議員 デジタル大臣 当選2回 年収3千万円
配偶者あり 大学生の子供一人
趣味 ゴルフ 車 競馬
3 羽田小夜 はねださよ 50歳 女性
国会議員 当選2回 年収2千5百万円
配偶者あり 中学生の子供一人
趣味 読者 音楽鑑賞
4 安藤 流 あんどうながれ 46歳 男性
国会議員 当選1回 年収2千5百万円
配偶者あり 小学生の子供一人
趣味 ゴルフ キャンプ
まずは国会議員が4人。4人に特に共通点は無いな。やはり男性はクラブに招待して仲良くなってから接待ゴルフでもするのが良いんだろうな。女性議員はプレゼントやホストクラブだろうな。
5 堀江一歩 ほりえいっぽ 54歳 男性
三星大学 工学部 情報技術学科 教授 年収1千万円
配偶者あり 子供なし
趣味 読書
著書に「IT社会への警鐘」等がある
6 松下 愛 まつしたあい 45歳 女性
五稜大学 工学部 情報科学科 教授 45歳 年収8百万円
未婚 一人暮らし 彼氏あり
趣味 読書 ヨガ
著書に「生成AIとの付き合い方」等がある
7 丸井春人 まるいはると 43歳 男性
七倉大学 工学部 情報工学科 准教授 年収7百万円
未婚 一人暮らし 特定の彼女なし
趣味 キャンプ
著書に「AIの驚異」等がある
大学教授が3人。3人の共通点はコンピューターか。大学教授って何を喜ぶんだろうな。金か?女性か?とりあえずクラブに招待するしかないかな。
8 前田太一 まえだたいち 50歳 男性
日本コンピューター社 社長 年収推定5億円
配偶者あり 中学生の子供一人
趣味 ゴルフ ギャンブル(海外のカジノ)
仕事の成果 日本最大のコンピューター会社社長
10 多田一郎 ただいちろう 35歳 男性
日本コンピューター社 生成AI開発責任者 年収5000万円
配偶者あり 子供なし
趣味 車 バンド活動
仕事の成果 アメリカで生成AIの開発に成功、その後日本コンピューター社にヘッドハンティングされる。
9 戸増秀夫 とますひでお 39歳 男性
日本IT社 社長 推定年収2億円
未婚 一人暮らし 特定の彼女はいない
趣味 ゴルフ 車
仕事の成果 日本有数のIT会社の設立
11 四門正広 しもんまさひろ 29歳 男性
日本IT社 開発部部長 兼 開発総責任者 年収2000万円
未婚 一人暮らし 彼女有り
趣味 ゴルフ キャンプ
仕事の成果 生成AIの開発
この4人の共通点はIT企業という事だ。そして前田と多田、戸増と四門はそれぞれ同じ会社の社長とAI開発者という関係性だ。
あれ?デジタル大臣に工学部の大学教授、そしてIT会社の社長と社員。デジタル関係の人がやけに多いな?悪魔は彼らをどうするつもりなんだ。やっぱり、意味はありそうだな。
悪魔とコンピューター、悪魔とIT、悪魔とAI。うーん?さっぱり分からん。
まあ、とにかく、銀座にクラブを作ったんだから、招待して仲良くならないとな。
夜6時 俺は早速、銀座のお店に行ってみる事にした。ママとスタッフの皆に挨拶だけでもしておかないとな。
俺は手持ちの中で一番いいスーツを着て出かけた。しかし、このスーツじゃだめだな。すぐにでも高級スーツをオーダーしに行かないとな。高級時計もしておかないと舐められるんだろうな。
1時間後、俺は店に着くとまずママに挨拶をした。「初めまして結城大也と申します。私はこの業界は初めてなのでこれからママに迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」ママは丁寧に挨拶を返してくれた。まあ腹の中では面白く思ってないだろうが、それは仕方のない事だ。
「早速ですが、一つ相談があります。このクラブを会員制の高級クラブにしたいのですが、お願いできますか?」
「分かりました。ただ内装工事やスタッフの募集である程度の資金が必要になると思いますがよろしいのでしょうか?」
「私のスポンサーはかなりの資産家ですので、お金の面は心配はいりません。兎に角、そのスポンサーが気に入るようなお店にしていただきたいのです。キャストも美人で知性のある人材を集めてもらえますか?今後は国会議員の先生や大会社の社長を招待する予定ですので。」
「分かりました。では明日、早速手配します。」ママは少し驚いたようだった。俺は少しいい気分になっていた。その後、俺はスタッフを集合させて挨拶した。
「初めまして。本日よりこのお店のオーナーになりました結城大也と申します。急な話ですが、これから当店は会員制の高級クラブに代わります。ただし、お店の業務は今まで通りママの指示に従ってください。よろしくお願いします。簡単なあいさつですみませんが、これから所用がありますので、今日の所はこれで失礼します。」
そう言うと俺は店を後にして部屋に急いだ。午前0時になれば悪魔から連絡が来るからだ。
部屋に着くと時計は午後10時になっていた。
実は悪魔からの連絡を待つのはその通りなのだが、先ほどの疑問が頭の中で膨らんでしまっているのだ。
「悪魔とIT」「悪魔とAI」これが何を意味しているのか?よく分からないが、なにかしらの違和感を感じるのだ。
俺はしばらく考え込んでいた。
午前0時 プププッ、プププッ、プププッ、俺のスマホが鳴った。
つづく