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恐竜の召喚師  作者: 南雲一途
第三章 雷霆
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第31話 無法地帯

 マーロン王国で着ていた服より少し生地は薄いが、見慣れない刺繍や、装飾が施された服に着替え終えてから部屋を出た。

 高い天井に長い廊下。

 多分ここはお城の中で、さっきまでいた部屋は客室だろう。

 ただ、マーロン王国のお城と比べると彫刻などによる飾り付けが少なくて質素に感じる。


 こっちに気がついたゼノが立ち上がり、声をかけてきた。


「服の大きさはどう?」


「丁度いいです」


「ならよかった」


「あの、サラマンダーさんは?」


「用があるんだってさ」


「なるほど」


 俺はゼノに着いて行き、城の外へ出た。

 城の外には全く見たことのない町並み。

 森ではないし、木を運ぶような重労働を強いられている人達もいない。

 行き交う人のほとんどは肌が薄紫色の魔族。

 マーロン王国では見慣れない光景だ。


「なんか気になることでもあった?気軽になんでも聞いてよ」


 俺が町の色んなところを見てたから気を遣ってくれたのかな。

 人のことをよく見てる。


「ここってパオットですか?」


「違うよ。ここはリプン」


「魔族の国ってパオット以外にもあるんですね」


「いや、ここは魔族の国ってわけじゃないよ。強い人が権力を持つっていう流れで自然と町には魔族が多いだけ。たまにダークエルフとか人間もいるでしょ」


「本当だ」


 多分たまに見かける白い髪に黒い肌の人達がダークエルフなのだろう。

 髪の毛で耳が隠れている人のは分からないが、髪に隠れていない人の耳を見てみると、耳の先が少し尖っている。

 でも先が少し尖ってるところ以外は、大きさとか形もほとんど変わらない。

 白い髪と黒い肌で見分けた方が断然分かりやすい。

 服装も俺が着ている服とほとんど変わらないし。

 まぁ俺の着ている服は少し装飾がされてて、ちょっとだけ高価そうだけど。


 森で見た時も思ったが、ダークエルフの人達は性別に関係なく、力強いというのが見て分かるくらいには体格が良い。

 森で見たダークエルフの人達も体は大きかったが、ここにいる人達の方が遥かに強そうな感じがする。

 この町のダークエルフ達はみんな腰に刀を差しているせいかもしれないが...。

 意外と刀ってどんな服装にも似合うんだな。

 そういえば、リスキーさんが刀をくれた時にダークエルフは刀を身につけてると言ってた気がする。

 俺の刀は今どこにあるんだか。


「この町の特徴は色んな種族がいるってことと、国とかそういうんじゃないから、規則や法がないってところかな。だから何でもできる」


 そう言ってゼノは通りすがりの店に売っていた果物を勝手に取り、齧り付いた。


 え...。

 あ、でもここじゃ何をやってもいいのか。


 それでも店主のダークエルフの女性はゼノの行動に一瞬驚き、すぐさまゼノを睨みつけた。

 そのまま腰に差してある刀に手を伸ばす。

 どう見ても敵意は剥き出し。

 そりゃそうなる。


 その瞬間、ゼノが大量の魔力を体から放出した。

 ゼノの皮膚は薄紫色に変化し、白目の部分が黒くなり瞳が黄色く光っている。

 それでもゼノに睨んでいる様子はない。

 遠くの人も分かるくらいの魔力を出しているのに、表情には敵意が全く感じられないのが逆に不気味すぎる。


 ゼノから出る圧倒的な魔力量を感じ取った瞬間、ダークエルフの女性は刀から手を離す。

 すると、すぐにゼノは魔力を抑え、体の色は元に戻った。


「これすごく美味しいっすね!良ければ明日の朝、メラカル城に持ってきてくれません?サラマンダーや五大召喚師達にも食べさせたいんです!」


 ゼノが明るい表情でそう言うと、お店の人は戸惑いながらもそれを了承した。

 ゼノはさっき手に取った果物を頬張りながら喋りかけてくる。


「ほらな、強さが全てだろ?店の物だって勝手に食べても大丈夫。強ければ、だけど。...ンッ。はぁ美味かったぁ」


 おいおい、芯とかヘタも残さず丸ごと全部食べちゃったよ。

 美味しかったんなら別にいいけど...。


「まぁ勝手に奪って食べはしたけど、明日の朝、城に持ってきてくれた時にはしっかりお金を払わなきゃだめなんだけどね。そうじゃなきゃ最悪殺されちゃうだろうし」


 物騒な言葉をさらっと言いながらゼノは笑ってる。


「そこで戦いとかはしないんですね」


「しないね〜」


 やっぱ法がないからといって好き勝手できるもんでもないんだろうな。


「法はなくても最低限の礼儀はあるんですね」


「礼儀かぁ。なるほど〜。深いなぁ」


「深い?」


「うん深いよ。今のは深かった」


 何がだよ。


「まぁ気を取り直してご飯食べようよ。ほら、ここのお店」


 言われるがまま、ゼノに紹介された小ぢんまりとしたお店に入った。

 何も分からない俺は、取り敢えずゼノに全て任せて注文をしてもらった。

 すると、目の前には煮込み料理が2皿と鳥の丸焼きが2皿並んだ。


「俺のおすすめ、カラスの丸焼き」


「え、カラス?」


「そ、カラス。美味いよ。カラスって言うと嫌がる人もいるけどね。カラスって知ったら味が半減したって言う人もいたし」


「それ...言っちゃうんですね」


「言っちゃったね。カラス大丈夫?」


「多分大丈夫です。別にカラスだからって聞いても嫌な気は全くしないですし。初めて食べるからちょっと楽しみです」


「なら良かった。あ、あとそんな畏まらないでよ、こっちも緊張しちゃうから。もう友達感覚で」


 難しいやつ来たよ。


「分かった。やってみる」


「すご!すんなり変われるじゃん!」


「いや、そうしろって...」


「俺はそんな自然に喋り方変えられないからなぁ。すっげぇ〜」


 笑ってるよ。


「え、それなのに俺に...」


「無茶振りしたよね」


 俺は苦々しく笑った。


 おい。

 って言いたいけど、まだちょっと言えないなぁ。

 多分言っても大丈夫なんだろうけど、俺がまだ言えない。


「この煮込み料理は?」


「野菜と鹿肉の煮込み料理。やっぱ野菜も食べないとね。ここじゃ野菜は珍しいから」


「へぇ。自然に囲まれてるのに?」


「土地的な理由で大きな畑が近くにないからね。もうこの町の野菜なんて全部怪しいもんだよ。野菜は匂いを嗅ぐ前に火を通すってのが常識だし」


「それもう駄目なんじゃ...」


「軽い冗談だよ。新鮮な野菜とか穀物が手に入りづらいのは本当だけど」


「なるほど」


「ちなみにここは料理が来た時に金払うんだよね。いくら持ってる?」


「...え?」


 やば、奢ってくれるとばかり思ってた。


 その時、ゼノが軽く笑い始めた。


「嘘だよ」


 なんだ嘘か。


「金払うのは食べ終わった後だから」


「いや、ちょっ、え...」


 そこが嘘なのかよ。

 まずいって。

 俺一文無しなんだけど


 またゼノが笑い始めた。


「ごめんごめん。反応が面白くてつい。もちろんお金は俺が出すよ。俺が誘ったし」


「いや、もう本当にありがとうございます」


 変な汗出たぁ。


「面白すぎ」


「いやもう、本当に焦った」


「じゃ、食べよ」


 そう言ってゼノは顔の前で両手を握るように合わせてから食事を食べ始めた。

 食べる前の挨拶がここにもあるのか。

 懐かしいな。

 俺もゼノの真似をしてから食べ始めた。


「え、何やってんの?」


「ゼノがやってたから...」


「え...」


 なんだ?まずかったか?


「俺のこと大好きじゃん」


「ちがっ!食事前のお祈りみたいなのしてたから」


「やっぱ好きじゃん」


「おい!違うって!」


 ゼノは笑っている。


「おもしろ。名前なんだっけ?」


「トーチ」


「家名は?」


「アザーレ」


「ってことは家族いるの?」


「い...あ、いや、家族とかは覚えてなくって」


「そっか。それも覚えてないのか...」


 焦ったぁ。

 いるって言いかけた。

 この世界にはいないけど、家族のことは鮮明に覚えてるから「いる」って言っちゃいそうだった。

 本当気が抜けないな。


 俺は一息つくため、目の前にある料理に手をつけた。

 カラスの肉は少し固いが美味しい。

 煮込み料理も鹿肉が柔らかくなるまで煮込まれていて絶品だ。

 ゼノも食べるのを始めながら会話を続ける。


「え、じゃあそのアザーレってのは...」


「魔術師になって運良く家名ももらえた感じかな」


「なるほどね」


「魔族って家名はあるの?あ、あるか」


 ハムサ・サンクエルがいたや。


「うん、あるね。ちなみに俺はゼノ・ジョグラール」


「え、家名あるの?」


「え、俺だけ仲間はずれ?」


「いや、その死霊使い(ネクロマンサー)は家名がないって」


「それマーロン王国の話でしょ?」


「そっか」


「まぁ死霊使いの定義が分からないから、俺が死霊使いなのかも分からないけど」


 それにしても法や決まりがないにしては店内も町も荒れてる感じがしないのが少し不思議だ。


「どうかした?」


「いや、なんでもやっていい自由な町なのに治安が良いなって。お店も綺麗だし」


「今強い人達が魔術師だからかなぁ」


「魔術師だと治安が良いの?」


「魔術師って魔法を扱えるくらいには勉強をしてるから、その過程で教養もそれなりにあったりするんだよね。そういう人達が粗野で野蛮な人とかを力でねじ伏せるから治安が良いのかも」


「へぇぁ〜。なるほどね。え、殺しとかって日常的に起きたりするの?」


「いや、そんな日常的には起きないよ。そこら辺は他の町と変わらないんじゃない?」


「え、ちょっと意外」


「いや、だってそりゃ人を簡単に殺すような奴が町にいたら嫌だろ?法がないから罪とかはないけど、独りよがりな行動をとれば周りはそれを疎む。自分に危害が及ぶって色んな人に思われたら、それこそこの町じゃ生きていけない」


「なるほどなぁ」


 守ってくれる法がないから、自分達の身は自分で守るってことか。


「あぁ〜。治安がそれなりに良い理由って、さっきの話よりこっちの方が正しいか」


「強い人に魔術師が多いからどうのって話?」


「そうそう。まぁさっき言ったことも多少はあるかもしれないけど、法がないからこそ、自分は害を与えないないってことを周りに分かってもらったり、他人から必要だと思われたりしないと生きていけないような町だからってのが一番正しい気がする」


「それでもこの町じゃ強さが1番大切なの?」


「そもそもこの町じゃ強くないと話にならないし」


「そうなの?結局敵を作らないような優しい人がこの町には合ってるって話だったでしょ?」


「いやまぁそれも滅茶苦茶大切だけど、それでもここじゃあ強い奴の意見が通るし、強い奴の方が権力と財を得られる」


「なんで?」


「対立すれば戦うことになるだろ?」


「話し合わないの?」


「話し合うより断然早いし、負けたから意見が通らなかったって方が納得しやすいからでしょ。多分だけど」


「もしもそれが完全に間違っていたとしても?」


「う〜〜〜〜〜〜ん。ん?間違い?間違いってその、善悪の話?何が正義で何が悪だ、とかそういうやつ?」


「やっぱ今のなしで」


「ちょっと!なんでよ!カッコいいじゃん正義の話」


「いや、俺も自分で言っててよく分かんなくなっちゃった」


「なるほどね」


 ゼノは笑顔でそう言った。


「まぁ間違いってのが理不尽な意見を通すってことだったら、それを理不尽だと思った他の人達が黙ってないよ。さっきの話に戻るけど結局一人だけが得をするってのは周りの人からしたら面白くないからね。善悪の話になってくると俺にはちょっとよく分からない...」


 でもそう聞くとやっぱり強さがそこまで関係ないように聞こえるんだよなぁ。


 俺は煮込み料理を平らげ、コップに入った水を一口飲んだ。


「あのさぁ」


「ん?」


 俺が話しかけると、目の前の料理を食べていたゼノが顔を上げた。


「俺はなんでここに連れてこられたのか知ってる?」


 ゼノは食べ物を飲み込み、水を飲んでから話し始める。


「俺もよく知らない。ただ、トーチが今生きてるのはミモザって人のおかげみたいだよ。あの人がいなかったらトーチは遅かれ早かれ殺されてただろうね」


「え...」


 事態が飲み込めない。


「ミモザさんは今どこに?」


「たぶん会議中。リプンの五大召喚師の1人だから」


「五大召喚師?」


「リプンの中でも特に腕が立つ召喚師達がそう呼ばれてる。マーロン王国で言う、栄誉魔術師ってのと同じくらいの実力かな」

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