第21話 始まりに予兆なし
城の外をミザさんと歩きながら、さっきまでのことを思い出す。
ミザさんの両親と会ったのは覚えてる。
でも、話した内容は全く覚えてない。
うん、覚えてない。
俺はちゃんと会話ができてたか不安でならない。
そりゃいきなりじゃ緊張もする。
なんか結婚話みたいだったし。
「ごめん!急にこんなことになっちゃって」
「いやミザさんが謝ることじゃ...。それにもう記憶がないです」
「あぁまた記憶喪失?」
ミザさんは悪戯な笑みを浮かべている。
「いや違いますって。緊張したんですよ」
まさかいきなりミザさんの両親と話をすることになるとは。
まだ俺はミザさんと初めて会ってから10日も経ってないのに。
ここじゃそれが普通なのか?
「いや本当ごめんね。トーチ君にはヤブラちゃんがいるのに」
完全に予想外の言葉に俺は咽せた。
「そこを気にしてくれてたんですか?」
「そりゃあね。私だって別に邪魔をしたいわけじゃないし。それよりヤブラちゃんのどこが好きなの?聞かせてよ」
どこが...。
え、どこが?
「いつも冷静で、頼りになるところですかね」
「ふ〜ん。なんかつまんないね」
聞いといてそれは酷くないか?
「出会いは?」
...出会い。
あれ、なんだっけ。
えっと...。
あっ。
「記憶喪失で自分も分からなくなった時に助けてくれて」
「そうだったんだ。じゃあ結構最近?」
「ですかね」
切り抜けたぁ。
「なるほどねぇ。結婚はいつするの?」
俺はまた咽せた。
結婚!?
結婚はどうなんだ?
するのか、俺?
なんかよかく分からなくなってきた。
いやそれよりこれなんて答えればいいんだ?
正解が全く分からない。
いや、正解とかどうでもいい。
今の俺の状況はどうなってんだ?
どうする?返答までの時間は空けられないぞ、俺。
考えろ、考えろ、考えろ...。
いや、無理。
お願い、誰か助けて...。
「あ、ヤブラ」
俺は息を深く吸った。
助けて!!!ヤブラ!!!
って、できることなら叫びたい。
「え?あ、本当だ!初めまして。トーチ様の侍女のミモザです」
「初めまして。ヤブラです」
ヤブラはいつもと変わらない調子でそう答えた。
あ、俺ヤブラのことが好きだ。
その証拠に、ヤブラのことを好きな理由が思いつかない。
ーーー
リボシンキ付近の村が襲撃された事件を機に戦争に向けて動き出した魔術院は、事件が起きたリボシンキに大勢の魔術師を大々的に集めた。
そしてその裏で、リボシンキから離れた場所に位置する町ニワーカーブから、魔族の国パオットに奇襲攻撃を仕掛ける作戦だ。
作戦の目的は敵国パオットの2番目に大きな町キヤの制圧。
これを実現させるためには、パオットがリボシンキを警戒している間に、ニワーカーブへ戦力を急速に集中させることが最重要。
魔術院が戦争のために動き出して丁度一ヶ月が経った日、王都で急遽集められた大勢の魔術師達が王都を発ち、今作戦の攻撃の拠点ニワーカーブへと向かった。現地に着き次第パオットへの進軍を開始する。
しかし、作戦は行軍5日目にして失敗に終わってしまう。
「...は?」
ニワーカーブへと向かう魔術師達の先頭集団にいたリスキーは馬を止め、思わずそう声に出した。
土砂崩れにより目の前の道が塞がれていたのである。
最近の天気は良好、土砂崩れの報告もされてはいなかった。
リスキーが驚くのも無理はない。
この土砂崩れによりニワーカーブに向かっていた大勢の魔術師達が足止めを食らった。
次の日の夜、魔術院では緊急の会議が開かれる。
土砂崩れが起きた付近に町はなく、状況は最悪。
新たな作戦の立案を余儀なくされた。
そして3日後、魔術院にさらなる悪報が届く。
ニワーカーブが魔族の襲撃を受け、半壊した。
魔術院はニワーカーブ奪還のためニワーカーブに戦力を集結させることに決めるが、土砂崩れの影響で王都から大軍を向かわせることができない。
さ土砂崩れの影響がない町はどこも敵国パオットに近く、そこから人員を動かすことも現実的ではなかった。
そのため、魔術院は力のある魔術師5名にニワーカーブへ向かうよう要請。
バトリー・ダックラー以外の4名が要請に応じ、ニワーカーブへ向かう。




