表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐竜の召喚師  作者: 南雲一途
第一章 兎角亀毛
13/39

第13話 プレゼント

「それでは」


 そう言ってレドバドさんは馬に跨り町の警備へと向かった。

 ドルーを背中に乗せたウェニーの馬も後に続く。


 霊廟のある町ロンカ。

 走り回る子供の声が聞こえる平和な町。

 前に泊まっていた城から見えたキントの町の様子と少し違い、目立つような大きい建物は少ない。

 前の世界では普段見かけない石造りの家々がずらっと並び、異世界に来たことを改めて実感させられる。


 少し耳を凝らすと、ありとあらゆる生活音や話し声が聞こえてくる。

 こういう音や声は前の世界と変わらない。

 少し違うのは、みんな仲が良さそうなところだろうか。

 挨拶と笑顔に溢れている。


「では私は魔族の捜索に向かいます」


 ハッチさんはその場でクマバチを召喚し、魔族の捜索へ出た。

 相変わらずクマバチの飛ぶ音はうるさい。

 大きなクマバチの羽音が遠くなると、オーネスさんが口を開く。


「それじゃ、2人には王都に来てもらう」


「王都ですか?」


「魔族を退けたんだ、褒美が出る」


「いや、でも僕は何もしてないですから」


「戦ったのは事実だろう。違うか?」


 俺は黙った。


「今回の魔族襲撃事件による被害は霊廟の崩壊のみ。魔族の召喚師を最低限の被害で抑えて撃退したとしてレドバド、ハッチ、ヤブラ、そして君はそれ相応の待遇を受ける。実際のところどうなるかは魔術院で話さないと分からないが...」


「なるほど...」


「それに話を聞けば、今回の一件はあの魔族が前々から仕組んでいたことだったとか」


 そう言ってオーネスさんはヤブラの方を見た。


「魔族の綿密な襲撃計画を阻止したことを大々的に発表し、国民の士気を高める。出発は明日の朝。今夜はゆっくりするといい。宿は私が見つけておく。少し待っててくれ」


 そう言ってオーネスさんは歩いて行ってしまった。


「僕が召喚された時の騒ぎ。全部あの魔族になすりつけたの?」


「それがベストだったから。それでも疑念は完全に晴れたわけじゃない」


「そっか」


 本当にヤブラが味方で良かった。

 心強い。

 というより、怖いとすら思う。


「国民の士気を高めるってどういうこと?」


「今は魔族の国と戦争してる最中だから」


「戦争...」


「召喚魔法が発見されてから、魔力の量が多い魔族の侵攻が激しくなった。だからこそ、召喚師である魔族を撃退したって話は国民の士気を上げるのに..」


「持ってこいってことか」


「そう」


「でもあの魔族は死霊使いでしょ?」


「コウモリを出してたから召喚師でも間違いじゃない」


「あぁ、そっか」


 何か釈然としないが、間違ったことを言っているわけでもない。

 国民の士気のため、か。

 魔族はこの世界でも敵なんだな。



 ーーー



 マーロン王国王都リマウンクージュ。

 至る所にお店が並び、あちこちで商売人の声が聞こえる活気溢れる町。

 大きな石造りの建造物が無数に建ち並び、その町の中央には大きな城が聳え立つ。

 人の数もロンカの町とは比べ物にならない。


 初めて来た時にはその人の数に終始圧倒されていたが、3日も経った今ではもう慣れてしまった。

 今ではこの町の賑やかさを求めて町に散歩しに来るくらいだ。


「お!トーチ!やっと見つけたぁ」


「あ!リスキーさん!何してるんですか?」


 相変わらず明るいなこの人は。


「魔術院に寄ったついでにお前を探してたんだよ。ヤブラに聞いたら町に出掛けたって聞いたから」


「僕をですか?」


「そ、魔術院で話題の新生召喚師をね」


「その、魔術院ってたまに聞くんですけどなんなんですか?」


「王に助言する人達の集まりだよ。まぁ今となっちゃ国を動かす主導権は実質的に魔術院が握ってるけど」


「え、じゃあリスキーさんって」


「まぁまぁ偉いよ。いや、かなりかな」


 そうだったのか...。

 でも偉いとか自分で言っちゃうんだよなこの人は。

 らしいと言えばらしいか。


「まぁそれで、魔術院じゃ2人目の召喚師の誕生だって盛り上がってんだよね」


 なら1人目の召喚師はハッチさんだろうな。

 それにしても召喚師っていうのはそんなに少ないものなのか。

 バトリーさんも一応召喚魔法は使えるみたいだったけど...。

 本人が言うには宴会芸用みたいだし、戦いには向かないのかな。


「それで、今回の一件の褒美とか色々含めたトーチの式典を明々後日やることに決まった。かなり大々的にやるらしいぞ。かなり国も力を入れてる」


「え、それはちょっと...」


 なんかいきなり大変なことになってきた。

 式典なんて聞いてないぞ。


「光栄に思えよ。誰もがなれるわけじゃないんだから」


「は、はぁ」


 ちょっと嬉しい気持ちと、恥ずかしい気持ちが入り混じる。

 なんと言ってもいきなりすぎるんだよな。

 心の準備が...。


「それよりお前なら倒せたんじゃないのか?例の魔族」


 リスキーさんはニヤニヤしている。


「いや、骸骨を退けるので精一杯でしたよ」


「あの、お前を食おうとしたでっかい召喚獣でも駄目だったのか?」


「いや、あれは出さないですよ。殺しかねないですから」


「やられる前にやらなきゃ駄目だろ〜」


「いや、相手は逃げようとしてただけですから。こっちを殺そうとしてる感じはしなかったですし」


「あぁそう?まぁ無事だったから問題はないか...」


 そう言った後、リスキーさんは背中に背負っていた細長い物を手に取った。

 布に包まれている。


「これ、俺からのお祝いな」


「お祝い?」


「明後日には召喚師になるわけだし、俺も今の内に媚び売っとかないと」


 冗談を言いながらリスキーさんは、布を解くようにして中身を取り出した。

 その中身には見覚えがある。


「これって刀、ですか?」


 本物は見た事がなかったが、前の世界の記憶で知っているあの刀だ。


「よく知ってるなぁ。そう刀だよ。普通の剣とはちょっと違ってこれは両手で持つ」


 リスキーさんは鞘ごと刀を渡してきた。

 それを受け取った俺は刀を鞘から抜く。すると、銀色の刀身が鈍い光を放ちながら現れた。

 綺麗な銀色だ。

 カッコいい。


「ありがとうございます!」


「いやぁ喜んでくれて良かった。キントでの試合を見た時に思ったんだよ。接近戦になった時に武器が必要だろうなって。召喚魔法しか使えないんなら尚更な」


 なんだよ、リスキーさん滅茶苦茶良い人じゃないか。

 ただ、ふざけてばっかりってわけじゃないんだな。

 ちょっと反省しないと。


「用心のためにもちゃんと持っておけよ?」


「大事にします」


「ダークエルフはそれを腰にくっ付けるらしい。でもどうやるかは聞くなよ。俺は知らねぇから」


「腰に差すんですよ」


 俺はそう言ってベルトと腰の隙間に刀を差した。

 感動だ。

 まさか刀を持つ日が来るなんて。

 もう満足だ。

 うわぁ異世界やっぱり最高だぁ。


「やけに詳しいな。お前ダークエルフと知り合いか?」


「エルフなんて会ったことないですよ。本当にいるんですか?エルフ」


「いや、それはいるけど...。その刀もダークエルフの鍛治職人に作ってもらったし」


 エルフがいるんだ。

 それもダークエルフ。

 刀を使うのはちょっと意外だけど。


「わざわざありがとうございます」


「いやいや、そんなのいいって。それより式典はビシッと決めろよ。俺の一番弟子なんだから」


「えっ」


「冗談だよ。じゃあな」


「ありがとうございました!」


 その場から立ち去るリスキーさんの背中に向かったそう言うと、リスキーさんは手を振って返した。


 刀、ヤバいな。

 かなりテンションが上がる。


 もう一度刀を少しだけ抜いてみた。


 カッコいい。

 刀に詳しいわけではないが、この刀の切れ味は半端じゃないだろう。

 反り具合がなんとも言えない。

 刀に浮き出ている波模様も怪しく光っていてカッコいい。

 模様のことを地鉄って言うんだっけ。

 まぁよく分からないけど無茶苦茶カッコいい。

 いくらでも見ていられる。

 あぁカッコよ。


 でもここは人通りが多い。

 俺は刀を腰に戻し、腰に差した刀に手を乗せながら城へと戻る。


 城では客人としてもてなされ、リスキーさんからは刀を貰う。

 もうお腹がいっぱいだ。


 明後日に控えている式典がなんの式典だかよく分からないが、それだけが少しむず痒い。

 なんだかなぁ。

 実際レドバドさんがあの魔族を退けたわけだし、俺は助けてもらった身だからな。

 有名になりたいとかそういう願望はあるにはあるが、実際その機会を目の前にすると足がすくむ。

 俺はただの一般人だもんな。

 まぁなるようになるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ