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人間とは滑稽なものである

「と、言うわけで魔女様叩くなら今ですよ。天使は弱体化。不滅の力も衰弱しています。今なら案外簡単に潰せるかもしれませんね。」

「………そう」

あまねは市場でリンゴを手に取り、吟味しながら興味なさげに返事をした。

朝早い市場は平民である貴族達で賑わい、皆惜しみなく買い物をしているようだ。あまねは別のリンゴを手に取り、匂いを嗅ぐと店主に代金を渡した。

ポケットからナイフを取りだし歩きながらシャリシャリと皮をむいていく。

「そうって、チャンスですよ?」

「チャンスって何が?」

「天使という弊害が収まっています。今なら不死の軍団を破ることもできましょう。」

剥かれた皮は地面に落ち、人々に踏まれていく。

土に塗れ、それを奴隷の子供が拾って行った。

人混みの中で人を避けながら器用にあまねはリンゴを切っていく。

「その後はどうするの。勝ったとしてその後約四割にもなる貴族や兵士達をどうするの。」

「……あとからどうにでもできましょう。とにかく天使の弊害がない今がチャンスなのですよ!」

あまねはくるりと振り返ってシオンにリンゴを手渡す。

うさぎにカットされたリンゴを見てシオンは驚いた。

一般的なうさぎではない。

彫刻のようなうさぎが手に乗っていた。

「………」

「?子供ってリンゴをうさぎにすると喜ぶんじゃないの?」


「これ、なんだよ。」

「?リンゴのうさぎだけど」

読んでいた本を閉じて彫刻のようなリンゴを受け取った。

(えぇ……思ってるうさぎと違う。これはあれか?何真面目に受け取ってんだよ!ってツッコまれるやつ!)

勢いよく顔を上げるとあまねはキョトンとした顔でリオンを見ていた。

(ガチのヤツだこれ。)

触れてはいけないとリオンは察した。

いっぺんに口に放り込むと数回咀嚼してゴクリと飲み込んだ。

窓辺に座って夜風に当たるあまねの髪は月明かりに透けていてとても魔女には見えない。

「何か用だったんじゃないの。」

「リンゴ渡しに来たんだけど。」

「は?」

「だってシオンにもあげたんだもん。」

私は平等主義なのよとあまねは胸を張った。

あまねのいう平等主義とは不平等の上になりたっている。どれも等しく殺すあまねはある意味平等と言えるだろうか。

リオンはページを開き、読み進める。

「今日はね、もう1人連れてきたのよ。」

「もう一人?」

窓の下に手をやり何やら大きなものを引きずり出した。

(え、ずっとそこにいたの?)

細身な体にシスターの衣装を纏っているが顔は男だ。確か奴隷たちの中にいた気がする。特徴的な見た目だったことから記憶に残っていた。

気まずそうな顔をして男もとい末々は自力で部屋の中へと入った。

「奴隷たちのリーダーに着任した末々よ。面倒見てあげてね。」

「あー、末々です。どうぞよろしく、リオンサマ」

「…………あー、よろしく?」

恭しく頭を下げる末々になんとも言えず気まずい空気が流れた。

あまねはニコニコとして末々をリオンの方へ押しやった。

(まずい、このままでは)

「じゃあ、あと「おい、本格的に動くにはあと何が必要だ。」」

丸投げされる前に引き止めなければ。

あまねはキョトンとして窓に片足を掛けて停止した。

それから上を向き、首を右へ左へと傾けながらんー、と考え込んだ。

「リオンは何が必要だと思う?」

「……武器、かな。」

「確かに手ぶらで能力者相手にするのは難しい。こちらにはシオンしかいないしね。2万の軍勢をどうするか……」

末々が控えめに手を挙げた。あまねとリオンの視線が集まり少々居心地が悪そうに末々は肩を竦めた。

「少しなら……200程度なら武器の蓄えがある。100分の1しかないけど……」

「…………剣?」

「あ、あぁ。この国の主な戦術は剣だ。あまり戦争とかなかったし平和ボケしてる軍員どもから安く買い漁ってたものがある。得意なやつに研磨を頼んでるから刃こぼれとか、錆とかはないって報告を受けている。」

「………そうだ、君でいいんだ。」

あまねは末々を見つめてぽつりと言った。

その瞬間、あまねに赤い華が咲いた。


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