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過去に戻れたら  作者: 佐々蔵翔人
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第1章 過去に遡る

整理整頓、決め手となるもの

まず蒼唯が取り組んだのは絵日記を時系列順に並べることだった。それは小学生から高校生、中学生、大学生とバラバラに読んでは内容が入って来ないどころか再び読み返す手間が発生する。


時間のない中、より効率的に振り返ることを念頭に置いていた。コストパフォーマンスをコスパと言うように最近ではタイムパフォーマンスタイパをすることにした。


絵日記を書くことを目的で読み返そうとしたことなど過去にない。それが大人になって読み返す機会が来るとは思いもしなかった。改めて色々なことがあったと感じる。


そして地元の掛川東小学校の入学式から綴られていた。

この日は雨が降っていて地面がぬかるんでいてお気に入りの長靴がよごれるだけでなく、真新しい赤いランドセルが濡れて学校で泣いて友達作りではなかった。


それだけでなく家に帰ってもずっと泣いていて明日から学校に行きたくないと言いつつ嫌々学校に行っていたと綴られていた。だが当の本人は全く覚えていない。


まだ1ページ目だが覚えていない自分を振り返る、楽しい思い出に浸るという意味で楽しくなってきた。だがあくまでもこの絵日記で自分の分岐点を探す意味で読み返すことを忘れないようにと心がけていた。


その後は自分から声をかけたり、席替えで近くになった子達と仲良くなりして授業後に外で縄跳びをしたり雲梯をして遊んだりしていた。その中で何人かは家にお互いの家に行く関係性にもなっていた。


しばらくページを進めていくと梅雨に入る前に行われていた運動会。何をやったかのか成績など全く覚えていない。

しかしこの絵日記には個人種目の成績、クラス順位、などこと細かく書いてある。


ポイント制を敷いていた学校でそれぞれの種目で全員が1位を目指していて蒼唯は出場した玉入れ、大玉転がし、リレーに置いて全て1位に貢献していた。


その時は貢献という言葉などつゆ知らず、全員で掴み取った優勝に嬉しかったと何となく振り返ったいた。晴れの日も雨の日もその時に合わせて時間を過ごしている様子。


再びページを進めていくと今度は学芸会の練習が始まる。奇数学年は全クラスで発表、偶数学年はそれぞれのクラスの発表と分かれていた。


どちらも練習から精力的に取り組み、出来ないクラスメイトに励まして鼓舞をしていた。仲のいい子が出来ない時は公園や家に行って何度も練習を繰り返して出来るようにしてハッピーエンドで終わったと客観的によかったなと胸を撫で下ろしていた。


学校以外での出来事

1年生、2年生の絵日記には主に学校についての出来事が書かれていた。それも大事な事だが休みの日に友達とどこか出かけたとことを書いていないか探している。


まだ小さいためか家族同伴にはなるものの電車や自転車に乗って隣街に行って見た事のない景色を見てとても興奮をしてワクワクが止まらない。


大人になった今では隣街に行くのはそれ程時間を要しないと思うが当時の自分は果てしなく遠く、今よりも早く歩くことが出来なかったからよりそう感じたと思っていた。


新しいところに行くのは迷子にならないか不安になるし、行きよりも帰りの方が断然時間が過ぎるのが早く感じるな、この気持ちは大事にした方がいいと胸に刻む。


ある日のページに目に止まった。

それは今では食べられるようになったが当時食べられなかったピーマンを克服したと記されている。


ママが作ったピーマンの肉詰めを中だけ食べて後は残していた。苦くてどうしても食べられずにいた。ここからママと蒼唯によるピーマンの仁義なき戦いが始まった。


ピーマンを細かく刻み、大好きなハンバーグの中に忍ばせて食卓に出すが蒼唯も臭いや食感で食べるのを止めてしまう。ご飯と他のおかずだけ食べて部屋に籠る。


翌日はピーマンは緑色という固定概念がある。ならば色違いのパプリカなら食べられるのではないかと考えた。だが蒼唯は子供騙しには引っかからずこれはパプリカ、ピーマンの友達だと言い放って食べずにいた。


家だと部屋に逃げることが出来るが問題なのは学校での給食にピーマンが出た時。担任の先生が残さず食べよう主義のため、何が何でも食べなくてはならない。この時は口にふくみ、牛乳で流す戦法で難を逃れていた。


料理が好きなママ、意地でも蒼唯に苦手なピーマンを克服してもらいたいという一心から予想だにしない発想で立ち向かってきた。


それはおやつに蒼唯のよく食べているシュークリームの中に忍ばせる作戦に出た。生地、クリームを初めから作って刻まれたピーマンを入れて温めた。目的はピーマンの克服であってシュークリームの味など次に考えていた。


流石にピーマンが入っていると知らない蒼唯は何食わぬ顔でシュークリームを食べて完食をし、中にピーマンがあることを告げられた。騙したなという気持ちよりも騙された自分が悔しかった。


夜に回鍋肉ほいこーろーが食卓に並び、自らピーマンを挑戦をする。苦くて食べるのに時間はかかったがこの時に克服した瞬間であった。


その思い出に浸っていたら久しぶりに刻まれたピーマン入りのシュークリームを食べたいなと感じていた。

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