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6.男1、女3の冒険者チーム

 イキリーニ冒険者ギルドは、表通りの一角にあった。

『ここ、けっこう女の人の匂いがするね』

 シャムシールの言う通りイキリーニ冒険者ギルドには清潔感があり、女性冒険者でも気楽に入れそうな雰囲気がある。こういうギルドは冒険者街にはそれほど多くなく貴重だ。

 そっとドアを開くと目の前には受付があり、奥はギルド員用の喫茶店になっていた。

「ようこそ、冒険者ギルドイキリーニへ!」


 受付嬢も愛想がよく、初対面のDランク冒険者の僕にも微笑みかけてくれたし、青毛のシャムシールを嫌がる様子もない。第一印象はかなり良い雰囲気だ。

 依頼状には馬も受付前に連れてくるようにと書かれていたので、使い物になりそうか受付がチェックするようだ。

「この依頼を受けに来ました」

 依頼状を出すと、受付嬢は相方のシャムシールを見て頷いた。

「スグヤール隊長をお呼びしますね」


 受付嬢は喫茶店に入ると、女性たちと食事をしている優男に話しかけた。

 会話の内容はよく聞き取れなかったが、要するに頼んでいた人員が来たと言っているのだろう。隊長は立ち会がると僕よりも一回り大きい。身長は175センチメートルほどだろうか。

「隊長のアレン・スグヤールだ。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします」

 握手をすると、隊長は手をつないでくれた。彼は優しく僕の手を包むように行ってくれたので安心できる。人によっては自分が優位であることをわからせるために強く握ることもある。


「紹介します。相方のシャムシールです」

 スグヤール隊長は、シャムシールに近づくとそっと頬を触った。シャムも触られていることを喜ぶように目を細めている。

「人慣れしているし良い子だ」

 隊長はシャムシールを気に入ってくれたようだが、部下と思しき少女たちの反応はあまり良いものではなかった。

 隊長の性格ならしょうがないかと諦めの様子の猫族の軽戦士。神よ人の好過ぎる隊長をお許し下さいと言いたそうに十字を切る修道士。気に入らなそうにシャムシールを睨むハンターなど、隊員間に温度差もある。


「早速だが、持って欲しい荷物を纏めている」

「シャム、行くよ!」

 ギルドの裏手には倉庫があり、そこに荷物はまとめられていた。武器のストックや食料、更には水や着替えなども揃っている。

『隊長。実はシャムシールは水魔法を使うことができます』


 シャムシールは僕の口を使って自分の意見を述べた。多分だけど、水まで背負って歩きたくなかったんだろうなぁ。

 その言葉を聞いたスグヤール隊長は、驚いた様子で僕を眺めていた。

「ほ、本当かい!?」

 シャムシールは目を細めると、僕の手を操作して両手でお椀を作り中を水で満たしてみせた。隊長は恐る恐るという感じに指を水の中に入れて舐めると、頷いた。


「す、すごい……Aランクチームや大手ギルドにだって有難がられるウマじゃないか」

 部下の少女たちも、シャムシールの凄さを一瞬で理解したようだ。

 ハンターの少女は驚愕した様子で両手で口を押えており、修道士は「愚かな自分をお許しください」と呟きながら十字を切り、猫族の軽戦士も何となく凄そうと上機嫌になっている。


「わかった。水は必要最小限にしておくよ」

 隊長の指示通りに僕たちは荷支度を整えると、隊列を組んで都外れを目指した。

 まず最前線を守るのが、隊長のスグヤールと猫族のマーチルだ。

 その背後に僕とシャムシール、修道士レイナが控え、最後尾を守るのがハンターのグレイスである。これは2-3-1という、馬がいるパーティーが組む標準的な陣形である。


『強さは隊長がB中位、修道士レイナB下位、軽戦士マーチルC上位、狩人グレイスC上位。ここまでは標準的なB級冒険者チームだね』

 恐らく、僕の存在がチームの平均レベルを下げていると言いたいのだろうけど、一応は聞いてみることにした。

「ちなみに、君と僕の強さは?」

『小生は普段はAランク下位……翼を実体化すると中位になる。君は……B中位だけど隊長よりは弱い』

「君はともかく僕は……」

 そう言いかけたら、シャムシールは笑った。

『当人が思っているよりも君の腕は確かなんだよ。ただ残念なのは名馬がいても、それを見抜ける人がいない……ということかな』


 確かにその意見には同意したい。

 シャムシールは本人の言う通り、他の冒険者を一蹴するほどの力を持っているが、今まで彼の実力を正確に見抜いた冒険者は誰一人としていない。

 まあ、実力を隠すのが巧妙だから見つからないともいえるが……



 ギルドを出て5分も歩くと城門につき、更にそこを通り抜けると、民家は1軒もなくなり森ばかりが広がる場所へと出た。

 ここからは野生動物と魔が支配する空間だ。どこにモンスターが控えているかわからないから一瞬たりとも気を抜けない。

 誰しもが気を張りながら10分ほど進んだとき、シャムシールは耳をピクリと動かした。


「どうしたの?」

 修道士がこちらを見ると、シャムシールは勝手に僕の口を使って喋った。

『あの藪にゴブリン小隊が潜んでいます』

 言われてみてハッとした。確かに120センチくらいのゴブリンたちがショートボウを手に、僕らが通りかかるのを待ち構えている。

 弓使いのグレイスが長弓でゴブリンを1体仕留めると、ゴブリンたちは倒れたゴブリンを放置してそそくさと逃げ出した。

「相変わらず、油断ならない連中だ」

「オマケに臭いも消してたし! ムカつく~」

 スグヤール隊長やマーチルが言うと、僕も同感だと思いながら頷いた。

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