42.王国軍の到着
それから3分ほどで、王国軍が到着した。
彼らは村の惨状に言葉を失っていたが、兵士の1人が倒れているマイルを見ると、すぐに声を上げた。
「隊長……こいつは!?」
「マイルとかいう裏切り者だな。すぐにしょっ引くぞ!」
「ははっ!」
兵士たちは、犯罪者の捕縛やけが人の手当を進めた。
「改造生物の死骸は20ほどありました」
「それは報告の通りだが、ユニコーンっぽい生き物の死骸が見当たらんな」
「まさか、1頭もやられなかった……なんてことはありませんよね?」
新米兵がいうと、ベテラン兵は「おいおい……」と言いながら新米兵を見た。
「ベースキャンプ地じゃ怪物を1体倒すだけで、B級以上の冒険者が20人以上犠牲になったという話だぞ! あり得んよ」
「生存者に話を聞いてみるか」
隊長は、怪我をしている村人に近づいて、話を聞きはじめた。
それから数日ほどで、シャムシールはレッドオリーブ同盟のことを事細かに調べ上げた。
どうやら、謎に包まれていたレッドオリーブ同盟を率いていたのはマイルのようだ。彼は自らもスパイとして騎士団に潜入し、内部協力者を増やしながら暗躍していたという。
同僚にホエズラーがいたこともマイルにとって追い風だったようだ。
ホエズラーは元々が冒険者だけあって粗暴で、一緒にいると目立たない行動をしているだけで生真面目な騎士に見えたというわけである。
彼にとっての誤算は、シャムシールが王都に現れたこと。僕がレッドオリーブ同盟のことを熟知していたこと。そして白馬が現れ、組織に対して敵対の意志を示したことだろう。
僕はそこまで知ると、シャムシールに言った。
「レッドオリーブ同盟が人材不足だったのは、やはり信者を改造獣の材料にしたからだろうね」
「そうだろうね。マイルの話では、組織に絶対的な忠誠心を持った者でないと、魔獣の力を与えた時点で好き勝手なことを始めるみたいだからね」
シャムはここで呆れた表情をした。
「といっても、いくら熱心な信者をベースに作ったところで、飢えや欲望に勝てる個体はごくごく一部で、大半は見境なく森の動物や人間……下手をしたらその辺の植物を破壊して歩いていたみたいだけど」
その言葉を聞いて、思わず安堵していた。
「全く、こんな危ない連中と直接対決せずに済んで良かったよ。そんなことをしたら仲間に何人犠牲者が出ていたかわかったもんじゃない」
シャムシールも、全くだと言いたそうに頷いた。
「そうなったときは、お父さんたちに援軍を求めるつもりだったけれど……重臣の何人かを失うことにもなりかねなかったな。それくらい今回の相手は危険だった」
そんな話をしていたら、エルフのオリヴィアがやってきた。
「リック、シャムシール、王女殿下が呼んでいます」
「わかった。早くいこう騎士様!」
そうシャムシールが言うと、僕は苦笑しながら答えた。
「僕が騎士になるのは来月になってからだよ!」
間もなく、城内に笑い声が響いた。
 




