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27.次に目指す場所

 森の中に身を隠すと、僕はシャムシールやオリヴィアと向き合った。

「こうなった以上は王国には戻れないな……2人ともすまない」

 謝罪すると、シャムシールもオリヴィアも気にするなと言いたそうに穏やかな表情をしてくれた。

「リックさんが、あの時に力を使ってくれなければ、私たちは負けていたと思います」

「うん、それに君の力は見方を変えれば、同じような怪物と遭遇した時に撃退する切り札でもある。そう気を落とす必要もないよ」


「これからどうする?」

 そう質問をすると、シャムシールは視線を上げてから答えた。

「お父さんに会ってみる?」

 その提案を聞いて驚いた。シャムシールの父親は森の王という異名を持つ一角獣カッツバルゲルである。隣で話を聞いていたオリヴィアも耳をピンと立てていた。

「お父さんとは……もしや!」

「カッツバルゲル。森の王に聞けばキメラのことだって何かわかるかもしれない」


 あの白馬を倒したという精霊獣だ。ぜひ会いたいと思った。

「行こう! 彼はどこにいるんだい!?」

「ここからはだいぶ距離があるね。とりあえずついてきて」


 シャムシールを先頭に歩くと、彼は時々立ち止まりながら巧みに獣道を進んでいった。

「シャムシールさん……凄いですね。これだけ歩いているのに肉食獣とすら遭遇しません」

「多分だけど、渡り鳥から情報を得たりしているんだよ」


 そう内緒話をしていると、シャムシールは視線をこちらに向けた。

「それだけじゃなくて、太陽や山の位置関係からどこが北かを判断したり、川の音を聞いて危ない場所を把握したりもしているよ」

 さすがにユニコーンだけあり、森の中での旅に慣れているようだ。



 3時間くらい歩みを進めると、小さな池が姿を見せた。

 周囲は森で囲まれているが、邪悪な気配はないので束の間の休息を取るには打ってつけかもしれない。シャムシールも柔らかそうな地面の上で腰を下ろすと満足そうに言った。

「休める場所もなかったから大変だったでしょう。とりあえず、ここで一休みしよう」

「そうだな」

 僕やオリヴィアもシャムの側で腰を落ち着けると、何か小さなものが飛んでいることに気が付いた。


 虫かと思って目を凝らしてみると、それは小指くらいのフェアリーだった。

「こ、これは妖精!?」

 オリヴィアは僕ほどは驚いてはいなかったが、やはり珍しいらしく目の前を飛んでいる妖精を眺めている。

 フェアリーの動きを観察していると、どう見てもシャムシールに向けてメッセージを送っているように見えるが、シャムは迷惑そうに目を細めて首を横に振った。

「悪いけど、小生には別にやることがあるんだ。そういう話は別のユニコーンに相談した方がいいよ」


 そう言われたフェアリーは、とても残念そうな顔をしていた。果たしてシャムは何をお願いされたのだろう?

「彼女、何て言ってきたんだ?」

「ここの守護聖獣になって欲しいってさ」

 その言葉を聞いたオリヴィアは、目を丸々と開いて言った。

「ユニコーンにとっては、とても名誉な話なのでは?」


 シャムシールはうんざりした様子で答えた。

「確かに一般的にはそう思うかもしれないけれど、小生のように放浪こそ生きがいって考えるユニコーンもいるんだよ」

 何となくシャムシールとは馬が合うと思っていたけれど、僕とシャムシールには似たところがあるからなのかもしれない。

「僕はシャムの意見を尊重するよ。君が旅をしたいのなら付き合うし、どこかで腰を落ち着けたくなったらアテもないから僕もしばらく厄介になる」

 そう答えると、オリヴィアも賛成の様子で頷いていた。

「ありがとう……2人とも」



 僕らがゆっくりと就寝しているとき、ベースキャンプ地では王国の騎士や兵士たちが、被害状況の確認や倒されたキメラの調査を行っていた。

 王国はどうやら人が足りないらしく、王女直属の部下であるホエズラーやマイルまで駆り出されていた。

 なぜ、そんなことがわかったのかと言えば、ちゃっかりしているシャムシールが渡り鳥を偵察に出していたからである。

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