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23.シャムに盛り上がる人々

 僕らはすぐに運んできた食料や武器を倉庫へと移動させることにした。

 ミカッケ隊のメンバーやスグヤール隊のメンバーも手慣れているおかげか、作業はスムーズに進んでいき、1時間ほどで全ての積み荷を倉庫へと収めるとことができた。

「終わりました」

「ありがとう」

 返事1つ見ても、やはりミカッケからは威厳を感じる。

「今日は、このキャンプに泊まり明朝にギルドに戻るぞ」

 その言葉を聞いてスグヤールや僕は「はい!」と返事をした。こうしてみると本当に上官と部下の関係に見える。


 シャムシールを連れてベースキャンプ地の納屋へと向かうと、ちょうど隅の納屋の隣に空きスペースがあった。

「今夜はここで休もうかな」

「いい考えだと思うよ。小生が青毛だから不審に思っている冒険者も多いみたいだからね。見張り役くらいいないと自分の馬が無事か心配になるでしょ」

 確かに、このベースキャンプ地に入ったときから、冒険者たちの半分くらいが嫌な目をしながらシャムシールを睨んできた。


 シャムも僕も、何かと周りの目を気にしないといけないから大変だと思っていると、早速、馬の持ち主と思われる戦士がやってきて自分の馬を確認して行った。

「今の人、気配を消すの上手いな」

 そうシャムに話しかけると、彼も頷いた。

「そうだね。小生のことを明らかに嫌がっているのに、その素振りも見せなかった」


 おもしろいことに、この後も次々と冒険者が自分の馬を見にやってきた。

 安い馬でも農民の年収の半分くらい、高くなると上位騎士の年収に匹敵するような名馬もいるわけだから、自分の馬がシャムシールと一緒にいると不安になるものなのだろう。

 様子を見に来た戦士の大半はシャムシールを睨み、僕が付き添っていることで幾分か安心した様子で目の前を通り過ぎていく。

「本当に、清々しいくらいに小生って嫌われているね」

「黒毛差別ってヤツだね」


 そして遂に、ミカッケ隊のメンバーも……いや、ミカッケ自身も姿を見せた。その姿を見ただけで一般の馬は納屋へと引っ込み、彼の部隊に所属している馬も緊張した様子で納屋の前で気を付けの状態になっている。


 それにしてもミカッケ自身が何の用だろう?

 スグヤール隊長のメンツもあったから平静を装っていたが、やはり彼も青毛馬は嫌いだった。というケースだろうかと身構えると、ミカッケ隊長は僕の前に立った。

「な、何かご用でしょうか?」

「少し伺いたいことがある」

 思わず生唾を呑んでしまうほど、ミカッケが真顔になると迫力がある。


「シャムシール君だったか。単刀直入に聞くがユニコーンではないか?」

 そっと視線をシャムに向けると、ああ、やはり気づかれていたかと言わんばかりに笑っていた。そして、自らの口で言った。

「小生の正体に気が付くなんて……さすがだね」


 その言葉を聞いたミカッケはにっこりと笑った。

「既に気付いているかもしれないが、俺は見掛け倒しの張りぼて戦士だ。能力名はテラーファイター。かみ砕いて言うと周りの奴らをビビらせる……ただそれだけの能力さ」

 そんなこと言われても、謙遜しているようにしか見えないのが凄い。

「どこで気づいたんだい?」


 ミカッケはゆっくりと納屋の前に腰を下ろすと言った。

「会った瞬間にわかったさ。普通の馬なら近づいただけでも怯えて逃げ出すし、度胸のある個体でも絶対にすぐ目を逸らす」

 そう言いながら彼が視線を動かすと、彼の所有する馬以外は怯えて納屋の中に引っ込んでいた。

「だが、奴さんは違った。まるで全てを見透かしたように俺を見つめていた。これが俺が君がユニコーンであると感じた根拠さ」


 その言葉を聞いたシャムシールは青緑色の角を出し、背中には翼を実体化させた。

「……おおっ!?」

「ご名答! ガワダケギルドのミカッケ・ダーオシ。君のことはしっかりと覚えさせてもらう」

「その姿……もしかして、隣国の神馬カッツバルゲルの関係者か?」

「うん。小生はカッツバルゲルの第一子。母は栗毛の一角獣エストック」

「ほほうっ!」


 ミカッケは嬉しそうに笑うと、誰かを手招きした。

 やってきたのはスグヤール隊長だ。

「まいりましたね。まさかお馬の皇太子さまだったなんて……」

「こりゃ、先が楽しみだ。これからもお前たちには、どんどん指名付きの依頼を出そう!」


 どうやらアレン・スグヤール隊長もユニコーンだとは思っていたようだが、彼はシャムシールをカッツバルゲルの年の離れた弟だと思っていたようだ。

「わかりました! どんどんこき使ってください」

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