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21.シャムの取り調べモード

 シャムシールはギルド裏に行くと、ボロボロになった渡り鳥を見下ろしていた。

『さて、そろそろ本当のことを話して欲しいな。誰の指示でニセ情報を小生に掴ませようとしたのかな?』

『お、お許しを……ほんの出来心だったんです!』


 その言葉を聞いたカラスたちは、口々に嘘つけと言いたそうに鳴き声を上げていた。これはもうどう見ても逃げ切れないだろう。何せ証人ならぬ証鳥が多すぎる。


 様子を眺めていた仲間のエルフオリヴィアは、説明を求める表情で僕を眺めていた。

「ああ、これはね……」

 事の顛末はこうだ。

 このボロボロになった鳥は、シャムシールに近づいてきてニセ情報を口にして去っていった。

 このくらいならよくある出来事なのだが、今回はこのボロ鳥は更に別の鳥に成りすまして再びシャムシールの前に近づいてきて、混乱させる情報を伝えたのである。


 いじわるなシャムは、あえて違う鳥として話を聞いたから味を占めたのだろう。更に後日になると、第3の鳥に成りすまして、シャムシールに別件のニセ情報を渡したというワケだ。

 そして泳がされた末に別の鳥に後を付けられ、独りでニヤついて悪巧みをしているところを見事に目撃されたというワケである。

『君、まだ飛べる?』

 そう聞かれたボロボロ鳥は、恐る恐るという様子で『はい……』と答えた。

『隣国の泉にカッツバルゲルという一角獣がいるから、どうか泉の水を飲ませてくださいと言ってきな。その傷……放っておくと大変なことになるよ』

『わ、わかりました』

 ボロボロ鳥が飛び立とうとしたとき、シャムは言った。

『哨戒中のトンビに捕まったら、シャムシールのお使いですと答えるといい』


 この様子だとボロボロ鳥は単独で犯行に及んだと思われる。後でシャムに聞いたところ、たまにこういうイタズラ鳥がいるらしい。



 取り調べを終えたシャムシールは、納屋へと戻ると何時もの穏やかな顔へと戻った。

「なあ、シャム?」

『どうしたの?』

「あの変な鳥、レッドオリーブ同盟と関係ないんだよな?」

 そう質問してみると、シャムシールは視線を上げた。

『多分だけど無関係だと思うよ。連中に使役されている鳥なら何度か叩き落としたことがあるけど、決まって琥珀の匂いがするからね』


 鼻がいい馬ならではの答えだと思いながら頷いていると、鳥が1羽飛んできてシャムシールを眺めた。何か情報を得たようだ。

 シャムは鳥と言葉を交わすと表情を変えた。

『なるほど……確かに、王国から見たら合理的な判断かもしれない』

「どうしたんだい?」

 シャムシールは僕を見ると、難しい顔をしたまま言った。

『どうやら王国は、レッドオリーブ同盟の関係者に多額の首賞金をかけたらしい』


 その言葉を聞いてぎょっとした。レッドオリーブの関係者と言うことは、昔かかわりのあった僕もその括りに含まれることになる。幸いにも過去を知る人間はほとんどいないが厄介なことになったものだ。

 ん、待てよ……レッドオリーブの関係者の大半は、樹海や魔境と呼ばれる場所に住んでいるはずだ。つまり、その賞金を狩るのは……

「つまり、王国はレッドオリーブ同盟の討伐を外部……つまり冒険者に丸投げするってことか?」

『そういうことだね』


 そこまで言うとシャムシールは険しい表情をした。

『確かに、王国の貴族や上位騎士が大勢亡くなったのはわかるけど、冒険者では逆に取り込まれてレッドオリーブ同盟の勢力を強める結果になるかもしれない』

 それは僕も思った。

 王国の冒険者の中には、ろくに訓練もしていなくて体が訛ったり、実入りのいい安全な仕事ばかりを選んだ末に弱くなった者がいくらでもいる。


 いや、元レッドオリーブ同盟の関係者だからこそ、違う考えにたどり着くことができた。

「シャル、もしかしたら……もっと厄介なことが起こるかもしれない」

『厄介なことというと?』

 僕はしっかりと頷いてから答えた。

「あの白馬が高めたのは改造生物を作る技術なんだ。連中は人を捕食すれば捕食しただけ強くなる」


 そこまで言うと、ふと思った。僕にはご都合主義という具合の良い特殊能力がある。

 このスキルが上手に仕事をしてくれれば、厄介な改造生物から順番に僕やシャムのいるパーティーに攻撃を仕掛けてくれるかもしれない。

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