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心当たりのない記憶

「どうなってる……」

 男は頭に浮かんでくる記憶に混乱していた。



 何の変哲もない人生だった。

 平々凡々な生活を続けてきた。

 子供の頃からそうで、友達と遊んで、学校に通って、そこそこの大学を出てそこそこの会社に就職して。

 そして、今にいたってる。



 特にこれといって優れた結果を出した事は無い。

 だが、問題となるようなことも起こしてない。

 友達同士の喧嘩すらないという、実に穏やかな人生だった。

 それを今に至るまで続けている。



 大きな出来事と言えば、世界を巻き込んだ混乱。

 世界的な戦争が起こり、各国が戦渦に巻き込まれた。

 どの国にも敵国の攻撃が届き、安全地帯は無い。

 そんな中で、比較的安全なところに民間人は避難。

 そこに町を作って暮らすようになった。



 男も例外では無い。

 避難先に出来上がった町にやってきた。

 敵が攻め込んできた時を考えて作られた高い壁。

 その中に住んでいる。



 戦争そのものはとっくに終わってる。

 しかし、一度住み始め、既になじんだ場所だ。

 外の復興もなかなか進んでないということから、外に出ていく者はいない。

 まれに様子を見に行くと言って出て行く者はいるのだが。

 それも程なく帰ってくるか、二度と帰ってこないかだ。



 帰ってきた者は、「やっぱり外は酷かったよ」と状況を伝えてくる。

 まだ町の方がマシだとも。



 そして、二度と帰ってこない者は、おそらく死んだのだろうと噂される。

 そこかしこに強盗が出回ってるのが町の外だ。

 みんな、生き残るために必死なのだろう。

 数好くない物資を奪い合っている。

 戻ってこなかった者達は、おそらくそういう者達に殺されたのだろうと考えられていた。



 こういった取り巻く状況が男にとっての大きな出来事だった。

 男と関係のないところで起こったことだ。

 どうしようもない大きな流れである。



 それでも男は、避難先のこの町で静かに暮らしていた。

 決して豊かではないが、生産作業に従事して日々の生活を支えている。

 周りにいる者達ともそれなりに仲良くやりながら。



 そのはずだった。



 なのに、男の頭にはその記憶とは別の情報が浮かび上がっている。

 雑多な町の中、周りのガキとつるんで歩く。

 別の町や敵対してる連中との殴り合い。

 それが頭をよぎる。



 いつも不機嫌な親。

 理由もなく罵られ、殴られるのが当たり前の日々。

 決して安心できない家の中、警戒しながら過ごす毎日。



 その流れでギャングに仲間入り。

 マフィアやシンジケートにそのまま直行。

 暴力と禁制品を仕事としていった。



 当然、危険を何度もかいくぐった。

 敵との殺し合いは当たり前。

 仲間との足の引っ張り合いも日常茶飯事。

 警察に追われる事も一度や二度では無い。



 その果てに警察に捕まり…………。

 そこからどうなったのかは分からない。

 何分にも、断片的な記憶だ。

 まとめればこのような筋が見えてくる。

 しかし、所々に抜け落ちてるものもある。

 詳細が分からないことも多い。



 何より、なんでこんな記憶があるのか?

 その方が疑問だ。

 ただの空想にしては、あまりにも現実味がありすぎる。

 まるで実体験してきたかのようだった。

 殴られた、ナイフで切りつけられた、銃で撃たれた痛みは鮮明だ。

 相手を殴り、切り裂き突き刺し、銃弾で撃ち抜いた高揚感も。



 そんな経験など無いはずだ。

 しかし、人生の記憶の中に紛れこんでくる。

 自分の実体験とはかけ離れた出来事が。



「なんなんだ…………」

 不可解極まりない思いに苛まれる。

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