第3話 冤罪の真相
ミカとセント、働きます!
向かうのはミカの所。
事情を彼らの自室で打ち明ける。
「ふっふ~ん、なぁるほぉど♪じゃぁ…僕らの本当のお仕事の時間…だね♪」
押収物管理室に向かう。警備の者が立っている。
一呼吸置いた後ゆっくりと倒れこむ。どうやら眠って?しまったようだ。
「ふふ…すこぉしいい夢見ていてね♪」
セントが目を閉じながら壁に手を這わす。
「…あった…ここ、ここが一番強い「匂い」がする」
「はぁっ!」
掛け声とともにミカが手刀で壁を貫く!
とたん廊下の照明が非常照明に切り替わる。
「…よし、入ろう。」
部屋に入った二人は事も無げに彼の押収物を手に取る。
「…ふっふ~ん、さすが直接堪能しただけにすぅぐ解るよね♪」
「もう…」
頬を薄紅色に染めながらも中身を確認していく。
彼愛用のナイフ、ドッグタグが2つ、時計、スマートフォン、それから…チョーカー?
「お兄ちゃん、それ怪しい!」
いきなりミカがそう言って来た。
何の変哲もないチョーカーに見えるけど…彼のなのかな…?にしては細すぎるなぁ…。
「してみて?」
言われるがままにつけてみると…普通なら逃してしまうようなかすかな機械音が聞こえた。
「??これ何か機械が仕掛けられている…?」
するとミカが何やらパヒュームの中の匂いをかいでいる。
先ほどとは明らかに雰囲気が、目つきが変わり、その状態でチョーカーを見ていく…。
「…これは…カメラだ!しかも3Dカメラ!こんなに小型のものなんて軍用以外考えられない」
360度写真や映像を大手検索会社が撮影するにあたって使用しているアレだ。
アレは車に搭載して回るサイズだが…これはチョーカーについているストーンのなかに納まるレベル!
今度はセントがパヒュームのようなものの匂いを嗅いでいる…?
「電波の発信元を追う!…、…、……!捕らえた!」
二人はセントを先頭に迷わず走り出した。
行き先は…大隊本部司令室!
二人を乗せたハーレーをカスタマイズしたトライクが爆走していく。
「もう…逝っちゃえ♪」
門を突き破り本部ビルのゲートを突き抜けそのまま司令室に駆け上がる。
ドゥンッドォゥルルル!心地よくも図太いエキゾーストノートを響かせひた走る。
車体を滑らせながら停車する。扉には「大隊本部司令室」。
難なく扉を開け侵入する二人。
司令官用の机に設置されたモニタ画面を見る。
このPCから検索してみると本部のサーバーの極秘フォルダから当時の映像が出てきた。
そして悲劇の原因となった経緯についても、指令室内に設置されたカメラの記録映像からすべてわかった。
兼ねてより彼に劣情を抱いていた少佐は司令官室に呼び寄せ言い寄ったがすでにクリードの想い人であった為、一夜限りでもいいからと執拗に迫るも頑なに拒まれ、退室していく映像であった。
死刑の理由について調べ、冤罪であることを突き止める
愛する人を囮に使われ陵辱の果てになぶり殺しにされた。
その指令をだしたのがこの上官。
「おかげでテロリストを一網打尽にできた。…あいつも快楽の果てに死ねたのだから満更でもないだろう、クククッ」
彼に劣情を抱き言い寄ったがすでにクリードの想い人であった為…執拗に迫るも頑なに拒まれた腹いせの行動だった。
「その美貌でアジトを聞き出せ。なぁにお前のかわいさならそう簡単に大事には至らないだろうて…クククッ」
「GPSのサインを元に部隊を向かわせるからな…クククッ」
GPSどころか居場所の状況をリアルタイムに傍受できる360度ムービーカメラ搭載のチョーカーをさせて任務に当たらせ、状況を逐一確認できたにもかかわらず、彼が陵辱されていく一部始終を司令室のモニターで存分に堪能しすぎたあまり部隊の突入を遅らせてしまい手遅れにさせてしまった。
彼は高容量の麻薬成分含有の媚薬を投与されていた為救出時にはすでに昏睡状態で中毒死してしまった。
セントにも似たショートカットの似合う小柄でとても可愛らしい兵士であった。
「…なぜ部隊の突入を遅らせた?」
落ち着いた口調ながらも有無を言わせぬ強い意思を秘め彼は上官に尋ねた。
緊張の走る張り詰めた空気の中、上官はこともなげにその醜く蠢く顔にある穴から言葉を漏らす。
「いやぁ、GPSのでんぱを受信してすぐ行かせたんだけども…残念だったね♪クククッ」
刹那凄まじい勢いで身体毎壁に叩き付けられてへばりつく。
「げぼぉ!!!」
「…では、これは何だ?」
手には遺品となってしまった、彼の首につけられたチョーカーがあった。
見る見る青ざめていく上官。もはや言い逃れは出来ない。
そのまま今度は地面に叩きつけられすぐさま右肩関節を伸展内旋させられ動きを封じられる。
首筋には彼愛用のアーミーナイフが。
「最後に何か言い残すことは?」
さっきから必死に左手でボタンを連打するも一向に反応がない。
そもそもこの司令室自体監視されているはずなのに?
醜く往生際悪くあがく上官を蔑む様に見据え、「入室前に照明以外の配線は切断してある。無論セキュリティも無効にしてある!」
ガタガタガタガタ!上下の歯をけたたましく揺らし全身を激しく小刻みに震わせ恐怖と絶望を露にし腋窩、手掌、足底部に尋常じゃない発汗をきたす。極度の興奮状態、交感神経優位の兆候だ。
乾ききった顔にある穴から声にならない声が漏れる。
「お前とあの子では行き先はまるで違うが、主の御前で罪を悔い贖罪に励め!」
ナイフを持つ手に力をこめていく。
「たたたたーっ、助け、ひぃぃぃ!!!」
ただでさえ醜い少佐のその狼狽する様を眺め、しばし後に中尉はすーっとナイフを首元から引いた。
「…わかっている、お前の命などであの子の人生が戻るわけなんてない…」
少佐には見えないが中尉の頬には一筋つたう雫が。
「…次は、ない。今ある生に感謝し我々の元まで降りてきて下さるイエスとともに贖罪に励め!」
きびすを返し一息大きく息をつき、ナイフを思い切り一振りして穢れを祓い胸元にすぅっと仕舞おうとした矢先、醜悪な物が刃先に映りこんでいる!
瞬間机の影に飛び込む!
ッパッーン!乾いた破裂音が炸裂した直後に鈍い金属音が重なり、さらに拍子遅れで呻き声が漏れる。
「…うぐぅ…はれぇ?なぁにごれぇ?ごぼぉ」
間一髪かわした中尉の上を通過した弾丸は防弾仕様の分厚い司令室の扉に直撃し跳弾となり少佐の口腔内に戻っていった。
打ち抜かれた少佐はその場にがっくりと崩れ落ち、その拍子に投げ出された腕から所持していた銃も放り出され床をすべり中尉の足元へ転がってきた。
「…今、主と神の子イエスはあなたとともにこの苦しみを受けて下さっている…安らかに御前へ」
ほぼ即死状態だった少佐に対し祈りとともに言葉を与え、深く息を吐き立ち尽くす。
緊急警戒センサーが発動したようだ。多数の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえる。
少佐が召された今、自分の無実を証明できるものは誰もいない。
仕方がない…このような結果を望んだヲモヒは自分にもあったのだから。
その場に静かに立ち扉が開くのを待ち、抵抗もせず、拘束され拘留され現在に至る…。
「…監視カメラを私が停止していたのだから証明しようが…、そうか、そちらではなく、あの問題の映像を…」
しかし、あの部屋へ侵入などそう容易いことではない。
しかもあのような華奢で線の細いしなやかで美しい…自分のヲモヒに羞恥心が沸き上がってしまった。
彼に迷惑はかけたくはない…しかし、彼とこれで今生の別れとなるのはさらに辛い苦しみである。
決意を固めていた自分に大きな揺らぎと迷いを植え付けられてしまった…。
あの子と…生きていきたい…君も…それを望んでくれるであろうか…?
少しだけ彼らの能力が見え隠れするお話でした。
そして中尉の、ミニィの真相の回でした。