第2話 練習と…初めての…
いざ!と、その前に…
「…今度!お願いしますっ」
どどどどうしよう!今度伺う時が”癒し”の本番!!!
勢いづいてミスった!?いや、僕も望んでいたことだったはず。
ベッドに飛び込んでわたわたと身悶えしていると、弟がひょっこりと顔を出す。
「ふふん♪兄さん良かったね♪」
「あ、ばかっ!べ、別に…うん…あの、その、有難う…」
最後の方は顔から煙を出しながら何言っているのか全く自分でもわからない感じ
だったので聞こえたかどうかとか最早そんな事を考えられない状態だった。
もじもじしながらチラッと弟に目をやり、そぉっと尋ねる。
「…うまく出来るかな、ボク。」
少しだけ悪戯っぽい輝きを目に宿しながらも優しい表情で弟は応える。
「じゃぁあ…ミカと練習する?」
「え、あ、うん…」
任務の向上の為良く二人で"練習"はしていた。
実はボクは…任務をしたことがない、"練習"ばかりで。
だって、みんななんか普通じゃないんだもの。
ボクは人格が無視されて事が行われていくのは堪らなく許せない。
たまには任務とはいえ大変だねって気持ちの方もいるケド…殆どの人は…
任務ならしっかりやれ!みたいな感じに不満もまとめてぶつけてくるので…
今まで丁重に断り続けていた。
でも…今回は…"任務"じゃない!
「そうそう、大事なのは気持ちだから本当は予行練習なんて必要ないんだよ♪」
そういいながらするすると袖から脇をすり抜けて彼の手が入ってくる。
瞬く間に記憶がなくなるような状態にされてしまい、
最後にミカが何か言っていた気がするが最早ボクにはわからなかった。
…シュゴッシュフォー…コーヒーの沸く…音…?
この…香りは…モカブレンド…ボクの好きな…
「…chu♪…兄さん、おはよ♪」
目を開けるとそこにはつぶらな瞳でまっすぐこちらを優しく見つめるミカがいた。
彼の…部屋の前。意を決してドアをノックし声をかける。
自分の拍動が周り中に響き渡っているんじゃないかと思うくらいに高鳴っている。
頬も上気しているのが自分でも感じ取れる。
「…入ります…」
いつもと違ってものすごくぎこちないけど、ヲモヒの強さを感じる様な振る舞いで
セントは入っていった。
「…どうぞ、よく来てくれたね…まずはゆっくり話そう…」
「あ、今コーヒーを入れてきましたのでければ一緒に飲みませんか?」
微笑みながら中尉は言葉を返す。
「それはうれしい。久しく飲んでいなかったからな。ありがたい、是非頂こう」
断熱になっているポットから先程のモカブレンドを注いでいく。
「…良い香りだ…とても心が安らぐ…これを入れたのは君かね?」
「あ、いえ、弟のミカが入れてくれました」
「ミカ…マイケルか。高貴な名前の方にふさわしい素晴らしいドリップだ」
ちょっと心の中でミカに嫉妬しながらも、弟が褒められたことは自分の事の様に
うれしく、少しはしゃいで言葉をつなげた。
「そ、そうなんです!僕と違って…ミカは何でもそつなく器用にこなすんです…
この…癒しも…」
「彼は抵抗なく…されているのだね?」
「あ、はい…。なんでも、それが彼らの救いになるならと…
実際ミカの癒しによって改心したり自供する受刑者も多く…
ボクらの存在はほとんどミカの評価の賜物なのです…」
「ふむ…では、セント、君はほとんど、実務をしていない、と?」
リンゴの様に紅潮させた顔をうつむかせてセントは言う。
「…きょ、今日が…あなたが…はじめて…です…」
「そうか…有難う…セント…その、ヲモヒだけでも私は救われる」
切なさと愛しさがこみ上げてきて、飲みかけのコーヒーを置き、
勢いよくクリードに抱きついた。
「ボクも…あなたとなら…幸せの中で出来る気がします…」
自然と二人の顔の距離は近づいていき、コーヒーのアロマの中、
互いの唇を重ねゆっくりとベッドに倒れていった。
(…そうか…こういうことだったんだ…)
頬を伝い暖かな雫が流れ落ちる。それは、悲しみではなく幸せの証。
胸にはとても暖かく満たされた何かが宿りその心地よさに身も心も委ねていた。
重なり合ってもたれかかって彼の腕の中で余韻に浸り、彼が眠りについたのを
確認してゆっくりと部屋を後にした。
暫しの間その心地よさを堪能した後、急に現実を思い出す。
そう…彼はもう僅かな未来にこの世を去る運命にある事を。
今度は胸郭内部に手を入れられて心臓を捻りあげられているかの如く
痛みと苦しみがセントを襲う。
「…この人は絶対に安易に人を殺めたりしない。絶対の確信を持って言える!」
強い意思を宿した目つきでそう思う。
「…そう、そうだ!冤罪なんじゃないか?過失致死なのでは?
もしくは誰か他に真犯人が…?」
きびすを返し彼の部屋の前に。
「あの…お休みの所すみません、セントです。ひとつだけ…
お聞きしたい事がありまして…よろしいでしょうか?」
中から合図が聞こえた。
ガチャリと鍵を開け、先ほどとは全く違う気持ちを携え入室する。
「はは…嬉しいが少し照れくさいものなのだな、契りの後すぐに会うのは。」
また胸の奥に暖かさが湧き上がる、が今回はそれと同時に冷たく苦しいものも
湧き上がってくる。
すぅっと吐息を吸い込み、ゆっくり吐いて優しく見つめて言葉を紡ぐ。
「クリード…あなたの罪状についてです…」
「教えて下さい、本当は冤罪なのではないのでしょうか?」
巡る気持ちが幾重にも重なっている表情を顕し、大きく溜息をつき、
重い口調ながら話し始める。
「…少佐が私といる時に亡くなったのは事実だ。
そして指令室内の出来事は誰も証明できる者はいない…」
「やはり!あなたが直接手を下してはいないのですね?」
「それを証明出来ない以上今ある現実がそのまま真実となる…
もともと直接手を下すつもりだったし、そのヲモヒを持っていたのだから…
同じこ…ムグッ」
彼の首に抱きついてその先の言葉を自分の唇でふさぐ。
暫しの間濃厚に堪能した後に名残惜しそうにでも強さを持ちながら…
離れて彼を見つめて伝える。
「それがわかったら、出来る!間に合わせて見せます!待っていて!」
走り去ろうと部屋の入り口に差し掛かった瞬間われに返り、ゆぅ~っくり振り向き
真っ赤に熟れた禁断の果実状態の表情で一礼し部屋を去る。
「いや…まさか、無理だろう、あの状況では…」
こちらは全年齢対応版ですのでほのめかす感じで省略していますm(__)m
ここで18禁で…書いて良いのかな?