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第96話 賢者の森14


拠点に走って戻るとちょうどエレーナたちが会議のようなものをしているところで全員が揃っていた。どうやらゴブリン兄弟の説得に成功したようである。ボクは担いでいたゴブリンジェネラルをみんなの目の前に降ろした。


「ウホウホ(ちょっと想定外の大物を捕まえてね。今は気絶しているけど、いつ目を覚ますかわからないから、鎖で縛ろうか。)」


エリックから受け取った首輪を再度装着して小さくなりながらエレーナにそう言うと動くよりも先に白ゴブリンがつぶやいた。


「グ、軍団長・・・!」


その言葉は自然と広まり驚愕の空気を伝染させる。兄弟ゴブリンは顎が外れそうなほどに口を開き目を丸くする。モンストル男爵はボクの肩から降りたエリックと一緒になって不思議な踊りをし始める。


唯一落ち着いていたエレーナは拘束するよりも先に場を落ち着ける必要があると考えたようだ。手を叩いて注目を集める。


「ほら、落ち着け。エリック殿とモンストル男爵も落ち着かんか。踊るな。まずは拘束をせねばならん。見たところ気絶しているだけのようだからな。」


「あ、うん。そうだったね。僕としたことが興奮しすぎて我を忘れていたよ。そうだね。まずは拘束からだ。」


「森ノ賢者、スゴイヤ。ボクタチニハコンナコトデキナイヨ。」


「バイスノ言ウ通リダ。オレタチニハ無理ダ。」


モンストル男爵がどこからか持ってきた縄をゴブリンジェネラルに巻き付けていく。絶対にソレでは斬られてしまう気がするんだけど、指摘したほうが良いよね。


「ウホ〔モンストル先生?それでは斬られてしまうと思うよ。〕」


「ははは。大丈夫さ。これはただの縄じゃない。ミスリルの繊維を編み込んである特注品さ。さらに魔道具にもなっていて、『吸魔の注連縄シメナワ』って言うんだよ。」


そう言って見せるそれはボクの知っている注連縄ではない。ただのロープに見えるが、そう言われると魔力が見える気がする。

まぁ、大丈夫ならいっか。それよりも気になることがあるんだよ。とりあえずそっちを聞いてみようかな?


「ウホウホ(ねぇ、エレーナ?教えてくれよ。『バイス』って何だい?)」


ボクが気になったのはおそらく白ゴブリンの名前であるだろう『バイス』という言葉だ。何気なく聞き逃しかけたが、これは重要なところだと思う。


「ああ、マツは知らないもんな。いい機会だし紹介しておこう。説得できたんだよ。バイス、シュバルツ。大丈夫か?」


エレーナは呆けていた二人の背中を叩いて気づかせるとボクの前に並べて自己紹介をさせる。


「アゥ・・・フゥ。コノ度、ゴ主人サマノ従魔トナリ、名ヲ与エラレマシタ『バイス』トモウシマス。若輩者デハゴザイマスガ、改メマシテヨロシクオネガイシマス。」


「フゥ、同ジク名ヲ与エラレタ、マシタ『シュバルツ』ダ、デス。ヨロシク、デス。」


二人とも片言ながらに流ちょうに自己紹介をしてくれたが、バイスはともかくシュバルツは敬語が苦手そうだ。

ボクとしても今後は仲良くしていきたいのだから敬語は不要だと告げる。でもボクの言葉は通じないんだよなぁ。エレーナに伝えてもらおうか。


「ウホウホ(ボクに敬語は要らないよ。って伝えてよ。)」


「ソウデスカ。ボクハコレガ楽ナノデコノママデスガ、兄ハソノ方ガイイデショウ。ヨカッタネ。ニイチャン。」


「アア!アリガトウナ、ゴリ松サマ!」


良かった。喜んでくれて。ふぅ。とりあえずこれで、新入りとの顔合わせは終わりかな。それじゃあ、作業に戻ろう、っって、あれぇ?!言葉が通じてる?


「おい!なんでマツの言葉が分かるんだ?!」


エレーナもボクと同様に驚いているあたり心当たりはなさそうだ。そのあたりは二人は分かるかな?


「イヤ、ボクタチニモワカリマセン。」


「ウン、オレモワカラナイ。」


二人が分からないならお手上げだ。と思っていたら、モンストル先生が近寄ってきて答えを教えてくれる。さすがは魔物学の先生だね。


「きっと、それはグラディスバルト嬢という主人を共通するが故の現象だね。グラディスバルト嬢が中継点となって言葉を交わすことが出来るようになったんだよ。」


「なるほど。確かに、従魔同士では言葉が通じないと不便でしょうしね。」


「「「ヘェ~」」」


納得したところで今度こそ、本当に作業に戻る。かなり強く締めたからまだまだ目を覚ますことはないだろうけど、念のためにもさっさと拘束を強めておきたい。


ボクはエリックやバイス、シュバルツらと協力して縄をぐるぐると回して拘束を強めていく。腕や足を動かせないようにして土魔法で地面に建てた杭に括り付けた。モンストル先生が持ってきた縄も結構長いのでまだまだ余裕だ。


「これは切れないから長さの調節もできないし、不便なんだよね。使いどころがありそうだから持ってきたけど、役に立ってよかった。」


確かに魔物の力で切断できないのなら、ハサミや刃物でも難しいだろう。試しにボクが力を込めて引っ張ってみる。


「ウホ(これくらいで十分だけど、切れないと不便だなぁ。フンっと、やっぱり切れ・・・ちゃった。)」


なんと、少し力を入れたら切れちゃった。どうやらゴールドバックの腕力には耐えられなかったみたい。


「おぉ!さすがはゴリ松くんだ!これを千切ってしまうなんて。いやぁ、これを作った魔道具師にゴールドバックの腕力には耐えられなかったって教えておくよ。悔しがるだろうなぁ。」


モンストル先生が満足そうに言う。と、まぁ、これでゴブリンジェネラルの拘束も完了した。まだまだ起きる気配もないし、ボクがいなかった間に決まったことを聞いておこうかな。


「ウホウホ(拘束もできたし、ボクがいない間のことを聞いてもいいかな?)」


「ああ。もちろんだ。しかし、夕飯を食べながらでいいか?さすがにそろそろ腹ペコだ。」


「ウホ(そうだね。そうしよう。)」


エレーナの提案に従って食事をしながら話を聞くことになった。


そして、時間が経ち、翌日、日が昇ったと同じ頃、ゴブリンジェネラルが目を覚ました。奴の口には猿轡をかませているため大きな声は出せないが、どたどたと暴れる音で目が覚めてしまったよ。

朝食を済ませてからゴブリンジェネラルの方に近づく。奴は食事の匂いで空腹が刺激されてより苛立っていることだろう。


「ウホ(さて、尋問しようか。)」


「うむ。そうだな。」


「ニイチャン、軍団長ッテ王ノ側近ダヨネ。」


「アァ。キット情報ヲモッテルハズダ。」


「キーキー(さて、どんな新事実が聞けるのであろうな。)」


「僕はサンプルとしていくつか採取させてもらおうかなぁ♪きっと良いモノが採れそうだなぁ。王の近しい部下ってことは、健康状態も良好だろうしさぁ。」


各々が各々の期待を胸に尋問が開始した。























拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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