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第95話 賢者の森13


「ゲハハハ、マサカコンナ所デ、コンナ大物ニ出会エルトハナ。昼間ノ雑魚ノ言ハ事実デアッタカ。」


統率者である大きなゴブリンはそう言ってこちらをじろじろと見る。一方でボク達にじっくりとそれを観察していた。


「ウホ(ねぇ、あれってさ。多分だけど、えらい立場にいるゴブリンだよね。もしかすると、もしかするかも?)」


「キーキー(ふむ、我の記憶が正しければ、アレはゴブリンジェネラルであろう。あの程度の小隊を率いる隊長としては不自然だな。)」


エリックはボクの推測を肯定したが、それを不自然という。確かに昼間、ボクのねぐらで同じ規模の群れと戦ったわけだけど、そちらのボスはこう言っては何だがもっと弱そうだった。


「ウホ(数時間前に戦った群れのボスはもっと弱そうだったよ?偉そうって点では似たようなものだけど。)」


「キーキー(ふむ、そちらはホブゴブリンかもしれん。通常はその程度が妥当だと思うのだがな・・・。今の発言はもしや、こちらの情報があちらに伝わっているのかもしれん。少なくとも貴様の情報が。)」


エリックは神妙な面持ちでそう言うが、こそこそと話していたのが気に障ったのか、仮称ゴブリンジェネラルが怒り出す。


「ナニヲコソコソト喋ッテイルノダ!馬鹿ニシテイルノカ!!」


どうやら気は短いようで、奴はこちらに向かって走り出す。それと同時に部下と思われる10匹のゴブリンが粗末な武器を手に迫る。

ゴブリンジェネラルはどうやら無手のようだけど、きっと格闘術くらいは使えるのかもしれない。


「キーキー(油断するなよ?進化した個体は魔力を扱うことが出来るようになることが多い。魔法に限らず身体強化などな。)」


「ウホ(もちろん。ボクは進化をしたことないからうらやましよ。)」


ボクは進化という過程を経ることがなかったせいで、魔力を放出して掴むという感覚を得るまでに相当に時間がかかった。なので、少しうらやましい。

まぁ、今となっては魔法も使えるので特に思うところはないけどさ。


「グラァアア、雑魚ドモ!蹂躙セヨ!」

グギャー

グギャギャ


ゴブリンジェネラルとは対話をして少しでも情報を抜き取りたかったのだけど、残念ながら難しそうだ。エリックもそう判断したらすぐに行動に移したようだ。さっきは手を出さないなんて言っていたのに、なんだかんだで手伝ってくれるみたい。


「キーキー(数が多いのでな。少し手伝ってやる。刮目せよ、我が魔法を!“図が高い”ぞ!)」


「ウホウホ(ありがとう!って、うわぁ。容赦ないなぁ。)」


エリックは言うが早いか、魔法を発動させる。下を指すように指を一本出して手を延ばし発動キーのような文言を口にすると、その指からバチバチと音を立てて電撃が放たれた。

ソレは向かって来たゴブリンに伝染するように広がっていき、やがてゴブリンジェネラルを残してすべてのゴブリンの生命活動を停止させる。


「キーキー(ふん、ゴブリン程度には過ぎた魔法よ。光栄に思うがよい。我は後は手を出さぬ故な。そやつは貴様が確保せよ。貴重な情報源であることを忘れるな。)」


「ウホ(了解。)」


ボクは首肯しつつゴブリンジェネラルに対峙した。ゴブリンジェネラルは部下が全滅したというのに動じることなくボクを目指して突進してくる。両腕を振り上げて突っ込んでくる様はその体躯が手伝って壁のようだ。


ボクはエリックがゴブリンジェネラルに手を出さなかったのはおそらく捕獲はできないからじゃないかと思う。さっきの魔法を見ても殺傷能力が高すぎて生け捕りに向かないことが推測できる。


つまり、ここからのボクの役目は、此奴の無力化、そして拘束した上での尋問だろう。どちらもエリックにはできないと判断してボクに託したのだろうから、ぜひとも全うしたい。エレーナへの土産にもなるしさ。


ゴブリンジェネラルの両手に合わせるようにボクも両腕を広げて迎え撃つ。ゴブリンジェネラルは上から、ボクは下から両手を組み合う形でドシンと衝撃が走る。

単純に重量のあるゴブリンジェネラルがボクに全体重をかけるように力を込めてくるのは、威力がある。


「ウホ(重たいなぁ。)」


愚痴を言いつつも余裕でそれを受け止めるボクに少しだけ表情が曇るゴブリンジェネラルだったけど、ボクの正体に気が付いているだろうに、その反応は舐め過ぎである。


「ウホウホ(残念ながら言葉は通じないから何を言ってもしょうがないけど、部下が全滅したのに動じないのは少し薄情じゃないかなぁ。)」


言葉の通じないことは分かっていても少しは言いたくなってしまう。もしかするとあのゴブリンの中にも戦いたくないゴブリンがいたのかもしれないしね。

敵対した時点で容赦する必要はないとはいえ、上司がこんなのじゃ不憫過ぎて言葉もないよ。


ゴブリンジェネラルは言葉こそ通じないにしても、視線でボクが部下ゴブリンを気遣ったことに気が付いたのか、先ほどの激高は何だったのかというくらい上機嫌に笑う。


「ゲハハハ、雑魚ハ雑魚。替エハイクラデモイル。ソノ程度デ歩ミヲ止メルコトナド、ナイ!!」


そしてより一層、力を込めてこちらを押しつぶしにかかる。どうやらゴブリンジェネラルはボクが嫌いなタイプの魔物らしい。仲間にしたならそれをすべて守ろうという気概くらいは持ってほしいものだ。エリックは従魔連合のみんなを導くために日々考えている。そう言う魔物に仲間が集まるんだ。


「ウホ(うん、君には負ける気がしないよ。仲間は大事にしなきゃだめだ。ボクらは従魔としての絆がある。そんなボクが君に負けるはずがない。フンッ)」


「グッフゥ、ナンダコノチカラハ・・・!」


ボクは下からゴブリンジェネラルを押し戻していく。それと同時にエリックを呼ぶ。小さいボクに押し戻されていることに狼狽えるが、どうしてだろう?ボクがゴールドバックであることは知っているはずなのに。


「ウホウホ(エリック!ボクの首輪を外してくれるかな?)」


「キーキー(承知した。ほれ。)」


エリックがボクの首輪を取ると、少しずつボクの体が大きくなっていく。すると先ほどまでと立場が入れ替わっていき、最終的には真逆の立場になった。


「ゲハァ、認メン!認メンゾ!王ニ認メラレタ我ガチカラガ!コンナ!コンナァアアアアアアア!」


「ウホ(知らないよ。君がなんだろうと、その程度ってことさ。よっこいしょぉっと!)」


なんだかわめいているけど、そんなの知らないボクはゴブリンジェネラルに押し勝ってそのまま地面で組み伏せる。さらに肩をゴブリンジェネラルの喉元に入れるようにして首を絞めていく。


「ゲハ・・・グッ・・・ゲハッ」


ゴブリンジェネラルは息が詰まって意識を手放した。どうやらこれで無力化できたようだ。エリックが近づいてきてボクの肩に乗ると首輪を指で回しながら拠点の方を指さす。


「キーキー(無事に無力化できたようだな♪これで少しは調査が進むぞ♫)」


嬉しそうに言いながら踊りだすエリック。いや、そこはボクの肩の上であって、ダンスする場所ではないんだけど。


「ウホウホ(よいっしょ。さぁ、成果は十分。帰ろうか。)」


ボクたちはゴブリンジェネラルを担いで拠点への帰路に就いた。















拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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