第7話 捜索
お読みいただきありがとうございます。
ブックマークありがとうございます。
今日も今日とてポイント探し。もちろん、熊とは戦ったけど今日も決着はつかない。
ああ、エレーナとミーシャちゃんに会ってから今日で6日。約束通りであれば明日はエレーナ達が来る日だ。
人と交流できる少ない機会は楽しみであるが、少し焦ってもいる。なぜなら、折角頼ってくれたのに、まだ指輪は見つかっていないからだ。
本当に見つからない。正直、戦うのは気が引けたけど、ゴブリンと戦っていて落としたって言ってたから、ゴブリンの拠点をいくつか潰して探してみたけど、なかったしさ。
そんな感じで今はずいぶん数を増やしたポイントを巡ってそれっぽい物をいくつか手に入れたけど、どれも指輪?て感じで違う気がする。
さあ、今日も張り切って探そう。どれだけ回る場所が多くてもへっちゃらだ。ゴリラになって、良かったと思えるのは、この無尽蔵とも言える体力と剛力だ。これがあれば多くを回れるし、障害物も退かせる。ゴブリンの拠点なんて隠してあるちょっと綺麗な石だって見つけたよ。
それじゃあ、まずは一か所目。ここははずれ。今日の一か所目はゴブリンの拠点で僕じゃなくてオークが荒らした場所からだ。
さて、何もないし次にいこう。
2から10か所目。これらもはずれ。ずいぶん前に倒したオークやゴブリン、襲い掛かってきた狼の死体がいつの間にか骨になっていたよ。
僕は肉は食べていないし、他の野生動物やモンスターが食い漁って骨だけ残していったんだろうね。
11から30か所目。ここにも目ぼしいものはない。途中現れたオークが珍しくも金属製の剣を持っていて危うく刺さるかと思ったけど、なんてことなく逆に剣のほうが折れちゃったよ。古い物だったのかもな。剣を持って気が大きくなったのかな。最近はもう僕を攻撃なんてしなかったのに。
まあ、その剣も折れた刃ごと回収しておいたよ。
31から50か所目。ここには少し惜しいものがあった。たぶんペンダントだと思うんだけど、緑色の宝石、エメラルドかな?それがくっついた物だよ。
きっとエレーナ達には関係ないのだろうけど、キレイだから持って帰ってキレイな物入れに入れておこう。
51から80か所目。ここには熊の縄張りもあって、僕もあまり入るべきではない場所だ。でも、ここは熊がいるだけあって争いが絶えず、僕が漁っている間にもそこかしこで喧嘩というか殺し合いをしているのが見えたよ。
さっさと終わらせてしまいたかったけど、ここでは僕にも喧嘩を押し売りするやつがいるから、仕方が無く対処していたら時間がかかっちゃった。
収穫は主に素材。人型のやつは貰ってもエレーナ達も困るだろうけど、獣の毛皮だったら、人の技術で加工すれば仕えるだろうさ。
僕が皮のなめし技術でもあれば、そこまでやって渡せたけど、現代社会でそんなこと知っている一般男性35歳はいないだろうなぁ。
81から100か所目。ここは主に僕の寝床からはずいぶん遠くの森の境界辺りだ。ここを過ぎれば平原へとつながる場所で、エレーナ達と会ってから開拓して見つけた、人からしたら森の入口で、僕らからしたら森の出口だ。
ここら辺の森の浅いところには、人も来るようで、何やらオークが持っていた武器とは明らかに質が違う切れ味鋭そうな剣を持った人が何人もいたよ。アレは定番の冒険者ってやつかな?中には魔力を纏う武器を持った人もいて、怖いったらないよ。
もちろん、もはや元が付くけれど、人間として彼らを襲うことはしないし、出来るだけ合わないように避けたよ。
森を出ようとすると彼らに見つかって攻撃されてしまうだろうし、あんな危ない剣で攻撃されたらさすがのゴリラボディもズタズタになるだろうからね。
エレーナが僕の存在をうっすらと知っていたのは、きっとこういう人たちが森の奥に来て僕を見かけたんだろうな。
森の王者って言われるのはいいのだけど、どうしてそう思ったんだろうか。
ここでは主にこの人たちが落としたようなものをこっそり回収するのが目的なんだ。大体、戦闘するなら広い場所を使うので、そこら辺を見て回るんだ。
まあ、今日は大したものはなかったけどね。しいて言えば壊れかけのランタンみたいな物かな。魔力を感じるから、ファンタジーでよくある魔道具?なんだろうけど、使い方は分からない。持って帰るだけはしてみよう。
そんな感じで、約100か所が僕の日々の見回りポイントになっている。僕は今のところ森を出るチャンスは無いけれど、いつかは出たいと思っているんだ。
間違いなく地球では僕は死んだけど、この世界に来れたのは、あの声の主のおかげだから。いつかあってお礼を言いたいよ。
両親もいないし親戚も一人もいなかった。天涯孤独とも言っていい僕には地球に未練はなかったからさ。欲を言えばバナナが食べたいけど、贅沢かなぁ。
さあ、明日はエレーナ達が来る日だ。今日は寝床に帰って今日の収穫物を仕舞ったり飾ったりしよう。空もどうやらご機嫌斜めのようだし、早めに切り上げた方が良いだろう。
***
ポツポツと降り出した雨の中、寝床の洞窟に戻った僕は、まずはエメラルドのペンダントと獣の毛皮を歩きまわるついでにとってきた果物と一緒に魔法鞄に仕舞っておく。この中に入れておけば外にあるより劣化が遅いと気づいたので一石二鳥だ。
一応これまで集めたきれいなものを明日持っていこう。指輪は無くても他に何かあるかもしれないから。
後は折れた剣と壊れたランタンだ。これらはすでに劣化どころじゃないからそのまま洞窟の中に飾る。雨に濡れないように、集めた木を洞窟の入口に立てかけてドアみたいにしてあるから安心だ。
そんなこと言っていると、外でザーと音がし始め、雨が本格的に振りだしたみたいだ。どうも雨の音を聞くと、死の間際の雨を思い出す。
あの時は雨の音に交じってトラックのクラクションが聞こえたが、あの後はどうなったかなぁ。あの子供は?分からないけど、無事だといいなぁ。
拙作を読んでいただきありがとうございます.
「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」
と思っていただけたら、ブックマーク,評価、感想をいただけると励みになります.誤字報告もありがたいです。