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第76話 長期休暇の準備

誤字報告ありがとうございます


秋が過ぎて冬になり春が来る。現在は冬も深まった長期休暇直前の授業中である。土の日の最後は魔物学なので、ボクはモンストル先生が講義をしている間、エリックと話をしている。


「キーキー(ゴリ松よ。貴様は主人と共に領地へと戻るのか?)」


「ウホ(うん。そのつもりだよ。そのために準備をしてきたしね。)」


時間というものは意外と早く過ぎ去るもので、ボクがエレーナの従魔になってからすでに3か月ほどが経過している。秋の終わりに知り合って、現在が冬も真っただ中だからね。


学園は春に始まってから冬までの10か月の間、開かれる。そして冬の二か月が長期休暇として学生に与えられるのだ。具体的には4月に新年度が始まり、1月まで週4日の授業が行われ、2月3月が長期の休暇となる。


エリックは、ボクの長期休暇の予定を聞いてくる。どうやら、従魔連合のみんなにアンケートを取っているようで、最後がボクみたいだ。


「キーキー(ふむ、約8割が領地に戻ってしまうようだな。残り1割9分も王都出身者か。これらも実家に帰るらしいし。学園に残るのは一分程度。従魔連合の活動も今年は休止が良かろうな。)」


最近、エリックはアンケートを取ることにハマっているようで、こうして僕らに質問して回っている。従魔連合の集まりは定期的に開催されているので機会は多いから、もう何度もアンケートに答えている。

質問の内容は様々で、「好きな食べ物は?」というものから、「魔法を使ってみたいか?Y/N」など多岐に渡る。しかし、今回のように何かの役に立つ質問は初めてかもしれない。このアンケートの結果によって従魔連合の活動休止が決まるのだからね。


「ウホ(エリックは学園に残るのかい?)」


「キーキー(ああ。基本的にはな。下僕に帰る家はないし、フィールドワークに行くつもりらしい。グラディスバルトの調査もその一環だな。)」


そう言えば、ボクとエレーナがすることにしたゴブリンの異常増殖の調査もしてくれる話になっていたね。

あれからモンストル先生に話をしたら、ずいぶんと興奮気味で了承してくれたっけ。エリックからの助言もあったのかもしれないけどね。


「ウホウホ(そっか。ウーン、じゃあ、エリックもいないんじゃ、そもそも従魔連合の活動は出来なかったんじゃないの?)」


「キーキー(そうだな。まぁ、そのうち戻ってきてから考えるべきだな。)」


エリックとしても結論は出たらしく、これ以上はその話はしなかった。次に話すべきは賢者の森についてだろうと考えて、そちらに話を振る。エリックも気になっていたようだしね。


ボクらの話は他の従魔には大して面白くもないのか、だれも話に入ってはこなかったけれど、それはそれで説明する必要がないから楽でいいや。


「キーキー(—————ふむ、やはり、直接見る必要があるな。いくつか推測できるが見てみないことには何とも言えぬ。)」


「ウホ(そうだね。)」


キーンコーン


僕たちの話が一旦終結したところで、終わりの合図が鳴りモンストル先生も授業を終了する。これが最後の授業となるので簡単な締めの言葉もくれた。


「はい、それじゃ今年は終わりだね。みんな無事に従魔を得ることが出来て進級できるみたいで安心したよ。例年一人二人は落第するんだけど。」


そう、エレーナも含めてみんな従魔を得ることが出来たようで、進級が確定した。エレーナの親しい友人たちの従魔はそのうち紹介することもあるだろうが、今はここにいないのでまたの機会だ。


「さて、授業は終わりだけど、グラディスバルト嬢、長期休暇の件で話したいことがあるから残ってくれるかい?」


「分かりました。」


きっと、ボクとエリックがした話みたいなことを話すんだろう。ボクとエリックはその話が終わるまで暇をつぶしながら待つことにする。



***



「ふぅ、何とか話がまとまってよかったよ。」


エレーナがそんな風に息を吐きながらボクに話しかける。どうやらモンストル先生との話は彼女にとってはなかなかに疲労がたまるみたいだ。

まぁ、学者肌の人との会話って疲れるよね。そう言えば、ボクも会社の新商品のことで学者先生と話したときに、普通より疲れた記憶を思い出したよ。


「ウホウホ(でも、先生もエリックも賢者の森の調査をしてくれることになったんでしょ?良かったじゃない。)」


「ああ、それだけで疲れた意味があったな。良し!寮に戻って準備したら、そのまま王都邸に行って、グランディスに戻る準備をしようか。」


「ウホ!(了解!)」


エレーナは気持ちを切り替えたみたいなのでこれ以上は言わずにボクも呼応する。エリックやモンストル先生は勝手にグランディスまで来るみたいなので、僕たちは領都で彼らが来るまで待っていればいい。


今日はその準備のために買い出しをしないとね。


****



「さて、それじゃ、まずはお土産からだな。ミーシャや父上、使用人たちに買って帰ろう。というか、それくらいしかすることはないんだが。」


基本的にエレーナはお嬢様なので、必要なものは簡単に手に入る。となると買い出しするのは心を込める物になる。つまりは土産だね。

父上やミーシャ、使用人たちには長期休暇の度に毎回何かしら買っているんだそうだ。


今日はお出かけということもあって、エレーナは制服じゃなくて私服だ。と言っても貴族令嬢らしいドレスではなくて、乗馬服や騎士服に近い格好をしている。剣でも戦うエレーナには似合いの格好だ。

かくいうボクも今日は少しおしゃれだよ?ほら、ずいぶん前に頼んだアレ、ついに初めて来てお出かけなんだよ。


ボクの格好はあのドガルの工房で注文した熊の服だ。出来上がってから着る機会がなくてやっと来た出番についに下ろしたんだよ。

着ようと思えばいつでもよかったんだけど、出来ればばっちりなタイミングで着たいじゃん?


熊の毛皮で作った皮の服はオーバーオールで、流石エルダードワーフの作だけあって、着心地は満点、機能性も満点の最高品質だ。フレアグリズリーとかいう火属性の魔物の毛皮なので火にも強いらしいが、そこは確かめる機会がないといいね。

実はこの服、かなり特殊で、ボクの本当の大きさに合わせて作ってある。それを首輪と同じ原理で小さくしてあるんだって。だから、ボクが元の大きさに戻っても服を着たままだし、敗れることもないんだってさ。


あ、余った素材はいくらかギルドに卸したよ。まぁ、約束だしね。頭や爪なんかは残してあるけど、これは討伐記念ってことで納得してくれたよ。

熊を売った金額は相当で、お父上にもいくらか渡せたみたいだよ。詳しくは知らないけどさ。


「今回はマツもいるし、意見を聞かせてくれ。」


「ウホ」


新品の服を着たボクは頷いて了承する。まぁ、彼らの好みは分からないけれど、エレーナが選択肢をくれたものから選べばいいよね。


さ、どんなものがあるのか楽しみだ。
















拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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