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第73話 魔物学の課外授業⑬


気楽におじいちゃんと呼べと宣う、学園の最高責任者は「ほっほっほ」と朗らかに笑うとボクだけではなく騒めいている学生たちに向けて「冗談じゃ、学園長先生とか単に先生で良い。」と言ってエレーナに向き直る。


「すまんかったのぅ、エレーナちゃん。アルセイヌは儂の後輩でな。周りが見えなくなることがある癖はあるが、兄貴肌の良い奴なんじゃ。儂の顔に免じて一つよろしくのぅ。」


既にエレーナにとっては終わった話なので畏まってそう言われると逆に困るのか、彼女は目を丸くしてあからさまに困惑すると、学園長に小さく頷いて返す。


「ええ。承知しました。」


「うむ、ありがとう。では、本題に入るかのぅ。」


エレーナが承知したことで学園長先生はこの話題を終わりにすると次の話に移る。どうやらこの場に出てきた本題とやらがあるらしい。


学園長の言葉を少し期待しつつ待っていると、それよりも先にモンストル先生が前に出て学園長に割り込んだ。


「学園長先生。その前にボクから話しますね。きっと彼らに伝えても分からないことばかりだと思うので。」


「おお、そうじゃな。それでは少し控えているとしよう。」


「ありがとうございます。それじゃ、君たちはこの授業で疑問に思ったことはないかい?不自然なことがあっただろう?」


学園長が杖を突いて下がると、モンストル先生が学生たちに今日の課外授業について何か疑問に思ったことがないか尋ねた。

ボクはその質問の意味を考えたのだけど、前世の学生の課外授業とは内容が違い過ぎてすべてがおかしく思えてしまい、どれが意図した疑問なのかわからない。


一応、周囲の学生は何かに思い至っているのかと見渡すとみんな考え込んでおり、明確に答えが出ている学生は一握りみたいだ。疲れ果てていた学生たちも学園長が来たからかすでに立ち上がって考えている。


「うん、分かっている人もいるみたいだし、答えてもらおうかな?時間も迫ってきているしさ。」


モンストル先生が言う様にこの魔物学は普段の講義の時間を使っているので、学園に帰った後も学生たちにはまだ授業が残っている。それを前の授業でつぶしてしまうのは避けたいのだろうね。


「まずはジャック君。君は分かっているみたいだし、とりあえず一つだけ答えてみようか。疲れ切っているところ悪いけど。」


「わ、分かりました。」


モンストル先生が指名したのは、実は牧場での作業で何をやらされたのか、非常に疲れ切っていたジャック=クラウド公爵子息であった。

彼はいつものパリッとした制服とは違って、牧場作業に適した作業着を着ており、それがずいぶんと汚れていた。泥まみれでところどころに藁くずみたいなのがくっついている。傍らにはフレイが寄り添っており、支えられて何とか立っている状態だ。


「はぁ、はぁ、はぁ。えっと、一つということなので、わかりやすいものを。僕が疑問に思ったのは、牧場までの道中に置かれた巨大な岩です。あんなの普通はあそこにあるわけがない。」


ジャック君の話にほとんどの学生が思い出したようで、ボクが破壊した巨大な岩があったことに疑問を抱いた。

そう言われてボクもそう言えばと思い出した。だってあそこって崖と森に挟まれた場所なんだけど、崖の上には似たような大きさの岩はなかったし、どこから持ってきたのか、だれが持ってきたのか不明だったもんね。


ジャック君の疑問にモンストル先生は満足したようでみんなに見えるように出した手を握って、一本だけ指を立てると次の学生を指名する。


「うん、良いね。次は~、オルトレイク嬢。君はどうだい?」


モンストル先生が今度は先ほど学園長から距離を取ったシルヴィアを当てる。どうやら彼女も分かっている側みたいだ。


「そうですわね。わたくしが承知しているのはジャック様がおっしゃっていた点ともう一つですわ。道中の魔物との遭遇率が嫌に高かった気がしますわね。」


「うん、そうだね。」


モンストル先生はシルヴィアの答えに満足したみたいだ。ボクとしては街道を歩くことなんて初めてだったし、疑問に思うことなんて何もなかったけど、あんなに魔物と遭遇することって普通はないことなんだね。知らなかったや。

エレーナもボクの隣で頷いているから、しっかりと把握していたんだね。先ほど、何かを理解した風だったから。


「それじゃ、三つ目。最後はグラディスバルト嬢。君に応えてもらおう。」


モンストル先生は彼女が頷いていたからか、それとも単純にランダムなのか、エレーナを指名する。


「はい。私が感じた疑問は、この牧場ですね。一昨年の先輩に課外授業のことについて聞いたところ、その授業内容は調教された魔物の世話をする程度の難易度の低いものだったと言われました。

なので、安心していたのですが、結果はこのような状態です。私たちの班は幸運にも疲労がたまる程度で済みましたが、他の班は酷く疲労し服装も汚れています。

去年も同様のことをやっているとは思いますが、こうも変更された理由が分かりません。」


エレーナの説明により、他の学生の中にも前の授業について知っている者がいたのか、そうだそうだと頷いている。どうやら、ここまで危険なことはなかったらしいね。


エレーナの回答にも満足したモンストル先生は何度も大きく頷いて手を叩く。パチパチと拍手が響くと、一言だけ口にして学園長と変わった。


「詳しくは学園長先生が教えてくれるよ。では、お願いします。」


「うむ。今年の学生は優秀じゃな。」


そして再び出てきた学園長がほっほっほと髭を撫でながら笑った。



















拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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